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4月期は新元号「令和」の発表、新紙幣発行の発表、そして本屋大賞発表と、さまざまな“発表”が続く一方で、大型連休に向けた準備もあり、書店・出版社・取次とも慌ただしい月となりました。
これらのニュースを受けて書店店頭も活性化し、書店売上前年比は100%超えを達成。3か月連続での前年クリアというここ10年では初の記録を打ち立て、令和元年にふさわしく、出版業界にも明るい兆しが見えています。
新年度がスタートし、教科書・辞書などが販売ピークを迎えることもあって、4月期はそもそも売上指数が高い時期の一つです。
今回フォーカスするのは、その中でも突出した売れ行きを見せる「資格試験書」。
・今売れているのは、どんな資格の本か?
・資格別の売上シェアは?
・資格ごとの売れ行きの傾向は?
・販売のポイントは?
・資格試験書について押さえておきたい市場動向は?
上記のポイントを押さえながら、実際のデータをもとにくわしく調査します。
まずは、直近1年間の資格書ジャンル全体の売れ行きを見てみましょう。全体の平均売上を基準に、月ごとの売上指数を算出しました。
グラフからわかるように、4月期の売上が突出しています。
※期間:2018年4月~2019年3月(日販 オープンネットワークWIN調べ)
その中で、書店店頭でどんな資格の本が売れているのかというと……
売れ行きに関しては、「人気度」「難易度」のほかに「刊行点数」なども数字を左右する要素となるので、受験者数と単純な比例関係になっていないのが特徴的です。
認知度の高い資格が上位に並んでいますが、刊行点数が多いこともあり「簿記」がダントツ。「宅建」が第2位、そして「FP」「ケアマネージャー」「危険物/ボイラー」と続いています。
受験者数では「ケアマネージャー」よりも「危険物/ボイラー」のほうが多いのですが、売れ行きは「ケアマネ―ジャー」のほうが上位となっています。
ジャンル全体では4月に売上が集中しますが、実は資格試験書では、それぞれの資格で販売ピークが異なります。
さきほどの「売上シェアランキング」でトップ15に入っていた資格の動向がこちら。
大まかな傾向としては、どの資格も販売ピークが大きく3回あります。
① 新刊発売時 ② 試験の申込開始時期 ③ 試験直前
特に「② 試験の申込開始時期」には、最も大きな売上の山がきます。1年間に試験が複数回実施される場合、試験回数に応じた山ができているのがわかります。
書店においては、それぞれの資格の特性やスケジュールを把握し、「山」を逃がさない売り場を作る必要があります。特にその山が大きい場合、販売ピークを見据えて在庫を増やしておくことも大切です。
人気の高い資格のうち、「簿記」「宅建」「FP」「ケアマネージャー」の試験スケジュールと売れ行きは下記の通り。
もう一つ、売り場づくりの際に注意したいのが、読者の混乱にもつながる「旧版の混在」です。
ほとんどの資格では年度ごとに改訂が行なわれており、新版が「新刊」として発売されます。しかし売り手側は、どの商品が改訂されたのか、すべて把握することができません。このため「新版が発売されているにもかかわらず、旧版が返品されずそのまま店頭に並んでいる」という間の抜けたことが起きてしまいます。
日販の調査では、1店舗あたり平均12冊の旧版在庫があることがわかっています。出版社側においても、細かな情報提供を行なうことが必要でしょう。
販売ピーク前に点検することで、より鮮度の高い売り場ができていくはずです。
矢野経済研究所の昨秋の発表によれば、教育産業市場は拡大傾向といわれています。「生涯学習」に対する熱の高まりもあって、40代以上の資格関連書購入者も増えているようです。
書店が見なければならない「マーケット」は、出版市場にとどまりません。資格取得自体への意識の高まりや、受験希望者の増減につながる社会の動きなどを把握し、拡大が予想される市場に対しては、売り場や在庫点数の見直しを適宜図っていく必要があります。
消費者のニーズに応えられる売り場になるために、まずは現在の売れ方・ポイントをきちんと把握し、売り場のメンテナンスを行なっていくことが必要です。