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最近、ビジネス書売り場が元気です。
『メモの魔力』と『FACTFULNESS』が連日ランキング首位争いを繰り広げている一方で、『嫌われる勇気』や『入社1年目の教科書』『人を動かす』といった新入社員向け・新人管理職向けの本もよく売れています。
そして、「ビジネス書」という概念も変わりつつあります。
今注目が集まっているのは、ビジネスパーソン向けのライフスタイル本。『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』のように、従来では実用書に分類されそうな本も「ビジネス書」として売れています。人生100年時代に向け、頭と心だけでなく、カラダのことも気にかけるビジネスパーソンが増えてきているということなのかもしれません。
そんなビジネス書売り場に、新たな注目の一冊が登場しました。『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』です。
『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の発売日は、3月8日(金)。
まだ日が浅いにもかかわらず着々と売上を伸ばしており、ランキング順位も上昇中。ベストセラーの仲間入りももうすぐでは……という勢いです。
大きなパブリシティがまだそれほど確認できないなか、SNSやブログ、そして書店店頭のビジネス書担当者におすすめされることで大きな売上を作り出しており、22日(金)頃に重版分が店頭に並び始めたことで、さらに大きく売上が伸びています。
▼『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』日別売上(日販 オープンネットワークWIN調べ)
とはいえ、部数はまだまだなので、読者層がくっきり見えるまでには至っていません。発売からの読者クラスタはこちら(日販 WIN+調べ)。
『父が娘に~』というタイトルが示すとおり、父親世代(特に40代)の読者が最多となっていますが、10代・20代も手に取っているようです。今後は経済の入門書として、新入社員や就活中の学生といった層にも読者が拡大しそう。
現時点での読者の併読書は、次のようになっています(上位作品10タイトル/日販 WIN+調べ)。
そもそも今売れているタイトルだということもあり、『FACTFULNESS』がぶっちぎりで第1位。経済学入門系の本がその下に続いています。
また『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』に佐藤優さんの大きな推薦オビがついていることもあって、佐藤優さんの著書も多く見られました。
一方で、“今売れているビジネス書”という点で『メモの魔力』が上位に入っていないのが意外です。
それでは最後に、併読本の中から気になるものをいくつか紹介しましょう。
佐藤優さんが大絶賛しているということで、あわせて購入されているのかもしれません。
もとは朝日新聞の連載で、2015年に『プーチンの実像 証言で暴く「皇帝」の素顔』のタイトルで単行本化。それがこのたび文庫化されました。
「彼を知る人へのインタビュー」という形で、その姿を読み解いていく内容。単行本刊行時にも話題になりましたが、より手に取りやすくなりました。
どうでもいい話ですが、最近売れているビジネス書は「とにかく表紙に文字が多い」と思いませんか?
この『西洋の自死』も、世界的なベストセラー。日本社会はさまざまな問題を抱えていますが、ヨーロッパ大陸もこれを超えるような問題を抱え、社会が閉塞感に満ちていると本書は提起しています。
難民・移民問題を語ることが、なぜタブー視されるようになったのか。人々は何をどう感じ、考え、行動しているのかを取材・分析した意欲的な一冊です。
ファストファッションブームはいつの間にか終焉を迎えていました。本書によれば、われわれのクローゼットはITの進化によって変わり、今後も大きく変化していく見込みだそう。
「アパレル」というタイトルがついていますが、消費者行動を読み解くという視点で、小売業界全体において話題になっています。
PDCAサイクルという考え方は、もう古いものになっています。
そんななかで今広がりを見せているのが、この「OODA LOOP(ウーダ・ループ)」という考え方。アメリカ海兵隊の行動基本原則で、【観察 → 情勢判断 → 意思決定 → 行動】の4フェーズをループさせて意思決定をしていくシステムです。
達成すべき組織目標に対して、どんな仕組み・組織にすればそれが回るようになるのか。
関連書も続々出版されており、現代のリーダー必読の一冊といえるでしょう。
そこそこ長く会社員をやっていると「唯一生き残るのは、変化できる者である」という進化論っぽい言葉を使ったプレゼンを何度か聞く羽目になるわけなのですが、だからこそ、この本の帯の「逃げろ」という言葉に心をつかまれました。
実は長い生命史を見たとき、「残っているのは敗者のほうで、滅び去ったのは強者のほう」なのだそう。そして現在のわれわれは「敗者が進化した末路ということになるのだ」と本書は説いています。
じゃあなぜ敗者だったのに生き残れたのか? そのサバイバル方法に、興味を持たずにはいられません。
昔ある人に言われた、「ベストセラーは、次のベストセラーを連れてくる」という言葉をふと思い出しました。まさしく今の書店店頭は、そんな状態になっているのかもしれません。新刊リストを見ても、ベストセラーランキングを見ても、紹介したい本が目白押し状態です。
この『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、どんでもなくわかりやすい経済の話。』はどこまで売れるのか。そして、“文字がいっぱいの表紙”の傾向はいつまで続くのか。この2点にもぜひご注目を!
※「HONZ」で2019年3月22日に公開された記事に、一部編集を加えています。