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2018年の店頭POS月別売上前年比がまとまりました。
全体では前年比96.4%と苦戦が続いていますが、コミックジャンルは100%を突破。2019年1月期の実績でも前年超えの結果となっています。
2018年の出版業界を振り返る時、「コミック復調」は大きなテーマになりそうです。
さて、そんな好調の裏には何があるのでしょうか?
今回はコミック売り場での取り組みと、そこから見えてきた成果について考えていきたいと思います。
コミックの復調には、いくつかの要因が考えられています。上半期は『SLAM DUNK 新装再編版』に牽引されたということもあります。加えて新作・注目タイトルが育ってきたことにより、新たな売上が作られ始めているのも好調の理由です。
一方で、コミック雑誌は相変わらず低迷傾向にあります。「雑誌で連載を読んで、その後単行本を購入する」という流れを作るには、厳しい状況が続いています。
そんななか、漫画アプリや電子コミックサイトが実施している「第1巻の無料化」や「試し読み」などの取り組みを、書店店頭に応用する動きが出ています。認知度を上げるための取り組みです。
一つはコミックのシュリンクフィルムパック外し。コミックはフィルム包装して売られているのが通例ですが、あえてフィルム包装なしの単行本を1冊つくり、立ち読みを促進する店舗も増えてきているようです。
そのほか、書店店頭での試し読みを積極的に促し、その効果をはかる検証実験も行なわれました。その内容は次のようなものです。
10巻以内、かつ本誌での連載が継続されている(=続巻が予定されている)タイトルを選出(計34点)。
試し読み用のコミックにフィルムカバーと見本シールをつけ、書店店頭で展開する(計142店舗)。
下の表は、検証前後の実績を比較したものです。対象タイトルそれぞれについて「第1巻~第3巻の1日あたりの平均売上冊数」を算出し、「日販POS店全体の1日あたり平均売上冊数」とのギャップを出してみました。
※実施期間:2018年11月3日~2019年1月15日(74日間)
※比較期間:2018年10月3日~11月2日(31日間)
表を見るとわかるように、「試し読みによってすべてのタイトルが売上を伸ばした」という結果にはなっていません。
試し読み以外の要素もさまざまありますが、今回の検証期間中に売上が伸びたのは全体の68%(検証可能な32タイトルのうち22タイトル)。全国平均と比較して伸び幅の大きかったタイトルは、32点のうち21点(66%)という結果になりました。
また「もともとどれくらい売れていた作品だったのか」、検証前の売れ行き別に見てみると、以下のような結果になります。
伸び率が最も大きかったのは検証前の売上が2~10冊のタイトルでしたが、全国との差を見ると、2冊未満のタイトルが突出しています。すなわち、もともとあまり売れていなかった商品群で大きな実績が出ているということです。
このことから試し読みは、作品の認知度を上げて新規読者を増やし、それを続巻の売上につなげることに一定の効果があるといえそうです。
また、同じことが店舗別の実績からも見えてきました。
下のグラフは、店舗ごとの検証前の平均売上冊数と、平均伸張率を分布図にしたものです。横軸に検証前の対象タイトルの平均売上(1日あたり)、縦軸に伸張率をプロットしました。
試し読み実施店のうち、86%が検証前より売上を伸ばしています。また、もともとの売上が大きくない店舗ほど、より伸張率が高いということも読み取れます。
・試し読みができると告知をしたこと。
・もともとコミックの売上が大きくなかったなかで、売り場を変えたことによって読者がついたこと。
・欠品の補充をきちんと行なったこと。
すべてを試し読みの成果というには時期早尚ですが、兆しは見えているように思います。
コミックの好調が長く続いていますが、それまで下がり続けていた売上を取り戻すには道半ばです。さらに1年経てば、前年の売上実績との戦いが始まります。
このような状況下で、コミックジャンルには、さまざまなトライアルを重ねて成功法則を見つけ、大きなムーブメントを作っていかなければならないでしょう。
試し読みについても、いろいろな方法でのチャレンジがありえます。展開方法、展開場所など、まだすべてが手探りの状態です。
コミック売り場に人が溢れる状態を目指し、業界をあげて取り組んでいく時がきています。
(文化通信BB 2019年2月25日増刊より転載 ※一部編集)
※転載元「文化通信BB」2019年2月25日増刊の本文に「コミックの復調には、いくつかの要因が考えられています。上半期は『SLAM DUNK完全版』に牽引されたということもあります」と記載していましたが、正しくは『SLAM DUNK 新装再編版』となります。転載にあたり、該当箇所を修正のうえ掲載しています。
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