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今回は暦の関係で年末年始に休暇が長く、休み明けの現実復帰が難しかった……という方も多いのではないでしょうか。
出版市場の1月はちょっと停滞気味ですが、ビジネス書売り場は活気に満ちているようです。
(ということは、多くの人がやる気に満ちてるということか…… やる気が出てないのは私だけ?)
そしてこのたび、新刊・ロングセラーがしのぎを削るビジネス書ジャンルに、注目の新刊が登場しました。
それが『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』。発売と同時にメディアで取り上げられ、SNSでも紹介する人が多く、すでに大ブレイクの兆しを見せています。
『FACTFULNESS』とは、簡単に説明すると「データや事実(ファクト)に基づいて、世界を読み解く習慣」のこと。世の中を正しく見るために身につけておくべき、習慣、スキルをつけましょう!という本です。
ビル・ゲイツやオバマ元大統領も大絶賛したこの本が、統計不正で揺れる日本で今ベストセラーになろうとしていることには、何かの縁を感じずにはいられません。
くわしい内容については、すでにHONZでもレビューされ話題となっているのでそちらに譲ります(記事はこちら)。
『FACTFULNESS』の発売日は、2019年1月11日。発売から1か月に満たないピカピカの新刊は、どんな売れ行きを見せているのでしょうか?
※日販 オープンネットワークWIN調べ(日別売上推移)
『FACTFULNESS』の発売日は、2019年1月11日。22日頃にはあまりの人気に品切れ店が続出。ようやく重版が店頭に到着し始めています。
全国紙の広告掲載や「Newsモーニングサテライト」(テレビ東京系、1月15日放送)での取り上げはあったものの、新聞・テレビといったメディアでの扱いはまだそれほど大きくありません。一方で、Twitterをはじめネット上では「#FACTFULNESS」のハッシュタグつきで感想や気付きが共有されるなど、大きな盛り上がりを見せています。
ちなみに、前述の「HONZ」レビュー掲載日は1月19日。このタイミングでも大きな山ができており、反響のほどがうかがえます。
※初出記事以降、データに動きがありました。
2月2日に「王様のブランチ」(TBS系)で取り上げられ、過去最高売上を更新。今のところ読者層にそれほど大きな変化はありませんが、今後広がりを見せそうです。
続いて読者層です(日販 WIN+調べ)。データのサンプル数はまだまだですが、各世代にまんべんなく売れているのが特徴です。
なかでも20代男性の割合がこれだけ高いのは、このジャンルの本としては珍しい例。SNSがブレイクのきっかけとなったことで、このようなクラスタが生まれたのかもしれません。
続いて、『FACTFULNESS』と併読されている本の上位はこちら(日販 WIN+調べ)。
ここ最近のビジネス書ベストセラーランキングがそのまま出てきた感じではありますが、「これらを読んできたビジネスパーソンがいち早く飛びついている」ということでもありますし、これらの本と同じように、『FACTFULNESS』がより広く、多くの人に読まれる可能性をもっているともいえます。
最後に、この読者が併読している本から注目本をいくつか見ていきましょう。
『応仁の乱』以降、ニッチなテーマ争いの様相を呈している日本史関連本。なかでもこの「縄文時代」は、ここのところ新刊が続々発売され注目度が急上昇しています!
歴史の教科書なら数ページで記述されてしまう縄文時代。実は1万年以上続いたとされていて、このことは世界史の視点から見ても特異な例なのだそう。
われわれ現代人にも多くのものが受け継がれているという縄文人は、どんな生活をし、どんな事を考えていたのでしょうか?
「ニッチなテーマ争いの様相を……」と書いたそばからなんですが、歴史ものではこういった全体像をつかむための本も人気です。
というのも、今年は「大人の学びなおし」が大きなブームになりそう。学校に通う大人も増えてきているようですが、もっとも身近な生涯学習はなんといっても「読書」。歴史・英語・数学の3つは特に人気のジャンルです。
この本は、ある意味『FACTFULNESS』の実践版といえるかもしれません。
デービッド・アトキンソンがさまざまな論文やデータから導き出した、「人口減少×高齢化×資本主義時代の生き抜き方」がじわじわと売れています。
映画「ロッキー」の由来にもなったといわれるヘビー級王者の評伝が発売されました。どうやってこの地位に上り詰めたのか、興行に縁の深いマフィアとどういった関係があったのか。これまで出てこなかった事実が浮かび上がってきます。
政治関係の本との併読率が高いのが、不思議な点です。
名前くらいは耳にしたことがあるだろう、ヘンリー・キッシンジャー。東西冷戦下にさまざまな外交交渉をまとめた手腕を認められ、今でも世界の指導者から相談を求められる立場にいるのだそうです。
キッシンジャーについては、回顧録から会話録、自伝などなど関連本がすでに多数出版されていますが、この本はそのなかでも、彼の「交渉術」をくわしく分析したもの。専門家が徹底分析したキッシンジャーの交渉術を学べば、明日から仕事の結果も変わる……かも。
『FACTFULNESS』はこれからまだまだ売れていくはずです。読者が一定のボリュームに達し、ファクトに満ちた世の中で思考に踏み出したとき、世界の何かが変わるのかもしれません。
今回のさまざまなデータとSNSでの波及を見て、「本の力と、読書の力を信じてみたい」そんな気持ちになっています。
※「HONZ」で2019年1月28日に公開された記事から、売上・購買者データを更新。また、テキストの内容にも一部編集を加えています。