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  • “ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは

    2019年01月22日
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    文化通信社 専務取締役 星野渉
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    減る書店と増える書店

    ドイツの出版業界も決して理想ではないと書いたが、ドイツでは2009年から2016年までに書店が14%減ったという。日本に比べれば相当“マシ”ではあるものの、今でも出版業界団体の書店会員は毎年150軒ほど減っているという。

    その理由として挙げられたのは、アマゾンをはじめとした電子商取引(EC)の拡大だ。ドイツでも小売業の最大手はアマゾンであり、ECへの対応と対抗こそが小売業としての書店の将来を考える上で最大のテーマだと、訪問したすべての書店が話していた。

    そのために、小規模書店でも取次のサービスを利用するなどして、ウェブサイトでの書籍販売や電子書籍サービスを導入している。そして、品揃えを絞り込んで在庫量を減らし、商品知識豊富な従業員が接客をするなど、ネットにはないサービスを強化しようと心がけていた。

    ▼書店店頭の電子書籍サービス「Tolino」コーナー(タリア)

    同時に、従来型の書店が減る一方で、カフェを備えて贅沢な空間を提供するような新業態書店は増えているという。そして、日本でも小規模な個人書店が近年増えているが、こうした傾向はドイツだけでなく世界中で広がっているようだ。

    中国では、従来型の書店は大規模な国営書店をのぞいてほぼ壊滅したが、新業態書店は2017年だけで1,000店舗も開店したという。日本以上に書店の経営環境が厳しい韓国では、ここ数年で個人が開く小規模書店が300軒に達しているそうだ。アメリカでも大型書店が店舗を減らす中で、10年間にわたって独立系の小規模書店が増えている。

    ▼2018年、北京中心部に開店した新業態店PAGE ONE

    これらの事象から見えてくるのは、書店は今でも人々にとって魅力的な場所であるということだ。ただ、これからはECやデジタルコンテンツなどの存在を前提にして、書店が今までとは違ったサービスを行わなければならないということでもある。

    流通の大きな変化とともに、消費者の嗜好や環境の変化に対応する書店にも、改めて「マーケットイン」が問われているということだろう。


    星野渉 Wataru Hoshino
    文化通信社専務取締役。1964年東京都生まれ。國學院大學文学部卒。1989年、文化通信社に入社。主に出版業界を取材。NPO法人本の学校理事長、日本出版学会副会長、東洋大学(「雑誌出版論」2008年~)と早稲田大学(「書店文化論」2017年~)で非常勤講師。著書に『出版産業の変貌を追う』、共著に『本屋がなくなったら、困るじゃないか』などがある。


    (「日販通信」2019年1月号 特集「2018-2019 出版業界 総括と展望」より転載)



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