• fluct

  • “ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは

    2019年01月22日
    もっと見る
    文化通信社 専務取締役 星野渉
    Pocket

    低い返品率

    書籍の取引条件は、仕入れ量などによって変動するが、書店マージンは、出版社からの直接仕入れで40%、取次からの仕入れで35%程度だといわれる。この場合、出版社は書店には正味60%で卸し、取次には正味50%で卸している。そして書籍の価格は日本に比べると1.5倍から2倍ぐらいの感覚だ。やはり書籍だけで取次や書店が食べていくためには、これぐらいの価格とマージン率が必要だということだろうか。

    また、こうしたマージン率を見ると、書店が買取で仕入れていると誤解されるかもしれないが、ドイツでは書籍価格拘束法によって日本より厳しく定価販売が義務づけられているため、書店は売れ残った在庫を安く売ることはできず、すべて返品している。

    しかし返品率は、今回ヒアリングしたオジアンダーで10%程度、タリアで15%程度、ヒューゲンドゥーベルで10%程度、大手取次のリブリでは書店の返品率が5~6%と話していた。

    返品は可能だが、日本のような新刊配本がなく、仕入れる書籍と冊数をすべて書店が決めており、基本的に売り切る前提で仕入れていることが大きい。さらに、取次の迅速配送によって在庫を多く持つ必要がないことも、このような低返品率(日本に比べれば)を実現していると思われる。

     

    「即納」を売り物にするドイツの取次

    大手書籍取次は、リブリ、KNV(クヌッフ)、ウンブライトの3社。この中で市場シェア40%の最大手リブリでも、従業員は本社に約200人、流通センターに600~700人(季節によって変動)と、日販やトーハンに比べると規模は小さい。先に述べたように書籍しか扱っていないのと、直接取引が多いためだ。

    これら取次は書籍のみを扱う。日本のような新刊見計らい配本はなく、書店からの発注に基づいて書籍を配送している。

    また、書店に向けた物流代行や在庫保管などのサービスも行っている。特にリブリは、書店のウェブ受注の支援、小規模書店向けの電子書籍販売サービスなど、デジタルに関わる多様なサービスも提供している。

    書籍の配送では、いずれの取次も18時までに書店から受注すると翌朝6時までに届ける「即納サービス」を実施している。

    ドイツではアマゾンによる即日配送がないため、書店が「即納サービス」を利用すればアマゾンよりも早く顧客に届けることができるという。このため、大手書店でも客注やインターネット受注など顧客からの注文は、すべて取次に発注していると話していた。

    出版社と書店の直接取引が多い中で、取次は「即納サービス」や物流代行、デジタルサービスなどで書店を引きつけるという競争原理が働いているのだ。

    このように、ドイツの出版流通の形は日本と全く違うし、必ずしも問題がないわけではない。それでも、流通の起点に書店の仕入れがある点や、それに対応した流通体制は、今後の出版流通を考える上で参考になるかもしれない。

    むしろ、ここまで大胆に変えなければ「書籍で食える」出版業界を実現できないと考えれば、書店をはじめとした出版業界の人々がこれから経験する変化は相当大きなものになる。それを覚悟しておく必要があるということだろう。



    1 2 3 4
    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る