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  • “ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは

    2019年01月22日
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    文化通信社 専務取締役 星野渉
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    ドイツの出版流通モデル

    ドイツの出版産業は、書籍と雑誌で流通・販売が別々になっている。一般的な書店の多くは雑貨や玩具なども扱っているが、主に書籍を販売。雑誌は郵送などによる定期購読が主流で、雑誌スタンドや駅の雑誌販売店などが販売拠点である。流通も、いわゆる取次は書籍だけを運んでいる。

    そして書籍の取引は、書店と出版社の直接取引と、取次を利用した取引が併存している。

    一般的に、書店は出版社から直接仕入れたほうが大きなマージンを得られ、仕入れの量によってマージン率が変動するため、仕入れ量が確保できる大手書店は出版社からの直接仕入れの比率が高い。

    視察先で聞いた直接仕入れと取次仕入れの比率は、300店舗を展開する最大手書店のタリアが直接仕入れ92%に対して取次仕入れ8%、2位のヒューゲンドゥーベルは直接仕入れ70%、取次仕入れ30%、南ドイツで54店舗を展開する創業400年以上の独立系書店大手のオジアンダーは直接仕入れ85%、取次仕入れ15%だった。

    一方、2015年に調査で訪れた小規模書店(ストーリーズ=ハンブルク、モーリッツプラッツ=ベルリン)は、すべての書籍を取次から仕入れているということだった。

    いちいち多くの出版社に発注し、それぞれ荷物が届き、請求が来るのは煩雑であり、しかも仕入れる場合は最低発注金額(ロット)が設定され、少量ではマージンも小さくなるため、小規模書店にとって直接取引は不利なのだ。多対多取引で、取次機能が必要なことに変わりはない。

     

    少数のバイヤーが発注

    書店の仕入れは年に2回(春・秋)、出版社が翌シーズンの新刊書籍を「シーズナルカタログ」やバウンドプルーフ(見本本)などで案内し、書店の仕入れ担当者(バイヤー)が発注する。

    バイヤーは専門職で、大手書店でも少数のバイヤーが全店舗の新刊を発注している。前出のオジアンダーも54店舗分の新刊を仕入本部の6人のバイヤーがすべて注文する。ただ、店舗によって客層やニーズが違うため、補充注文は各店舗で発注しているという。

    オジアンダーのオーナー家出身で経営を担っているクリスチャン・リュートミュラー氏に、出版社の営業がどのぐらいの頻度で店に来るのかを尋ねたところ、次のような答えが返ってきて驚かされた。

    出版社の営業担当は年に2回仕入部に来るが、スタッフの邪魔になるので店舗には行ってほしくない。スタッフは本の販売に集中しなければならないからだ。我々は出版社が売りたい本ではなくて、お客さんが欲しい本を置かなければならない。出版社に薦めてもらわなくても、売れるかどうかは仕入れスタッフが判断できる。

    まさに「マーケットイン」の姿勢だ。

    ▼創業1596年というオジアンダーの創業の地チュービンゲンのメイン通りに並ぶ本店(右)と児童書専門店(左)。いずれも2017年に開店した

    ▼1920年にオジアンダーを買収したリュートミュラー家4代目のクリスチャン氏

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