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  • 万引きは“若者の犯罪”ではない!?書店が頭を抱える「万引きの深刻化・複雑化」と対策のいま

    2018年12月26日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    業界ぐるみで万引き根絶を目指す

    ――そうした歩みを経て、昨年秋、万引防止出版対策本部が設立されたわけですね。改めて、この組織の設立目的を教えてください。

    これまで述べてきたような状況から、もうこれ以上万引き被害を看過できないと出版業界が立ち上がり、2017年9月27日、万引防止出版対策本部が設立されました。

    日本書店商業組合連合会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本出版インフラセンター、日本医書出版協会、日本図書普及の6団体1企業が、もはや1書店、1チェーンによる万引き防止には限界があるとの共通認識に立ち、万防機構の提案によって組織したものです。スローガンは「これ以上書店を減らさない」。万引き犯罪根絶に向け、業界を挙げて対策を構築し、実行していくことを目的としています。

    ――今後、どんな活動に取り組んでいかれますか。

    主に次の6つの活動を推進していきます。

    ① 書店における万引き被害の実態把握
    ② 二次処分市場(新古書店、ネットオークション、ネットフリマなど)との連携
    ③ ICタグの普及
    ④ 地域書店間の連携
    ⑤ 万引き被害に対する損害賠償請求制度の普及
    ⑥ 書店による共同防犯プロジェクトの確立

    ――「② 二次処分市場との連携」については、最近大きな動きがあったそうですね。

    今年6月、ヤフーとメルカリが万防機構の加盟企業となりました。万防機構は2社との連携・協力によって、ネットオークション・フリマアプリ「ヤフオク!」、フリマアプリ「メルカリ」の盗品流通対策を強化し、盗品売買の根絶を目指していきます。

    ――「③ ICタグの普及」はどんな状況にありますか。

    2008年に経済産業省の委託事業としてJPOが検討や研究を実施し、出版社・取次倉庫部会、装着・古紙化部会、書店部会、図書館部会でICタグを研究したという実績があります。しかし2011年の実証実験以降、ICタグそのものの値段やタグ貼付のコスト、リーダーライターの設置費用といった導入阻害要因により、動きは沈静化していました。

    そんな中、昨年11月7日の東北日販会総会の席上で藤原直会長(仙台・金港堂書店社長)から、万引き問題など出版業界の諸問題の解決策としてICタグ導入の必要性が訴えられ、現在はJPO内のICタグ研究委員会で引き続き検討されているところです。

    経済産業省の「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を受けて、我々も年初に「スマート・ブックストア構想―小売業の書店からサービス業の書店へ―」を経産省に提起しました。不特定多数の顧客を常連の顧客に変え、より地域密着型の書店として存在することを目指し、ICタグを活用して生産性向上(ロス削減)と売上アップを同時に実現しようとするものです。

    JPOの設立目的やこれまでの経緯から考えて、今後ともJPOに期待するところは大きいと言えます。

    ――「⑤万引き被害に対する損害賠償請求制度の普及」についてはどうでしょうか。

    万防機構がこのほど「始めよう!万引犯への損害賠償請求」というパンフレットを作成しました。万引き犯を捕捉したときは警察の調書作成に店長が長時間対応を余儀なくされたりしますが、そういった人件費を中心に、明確な根拠のある経費を犯人に請求しようというのがこの制度です。

    万防機構創設以来の理事である三洋堂書店様(本社・名古屋市)は、2005年から損害賠償請求実施に取り組んでいます。同社はさまざまなロス対策によって不明ロス率を1.5%から0.08%まで激減させてきた実績があり、パンフレットにはそのノウハウや、実際に使われている書式なども掲載されています。

    我々の調査では、この取り組みを既に実施している書店様は13法人、導入を検討している書店様も19法人あります。万防機構は今後、このパンフレットの活用を図り、万引き犯に対して経費を損害賠償請求することが当たり前の世の中にしていきたいと考えています。

    ――東京・渋谷では昨年夏頃から、地域ぐるみで万引き防止のための取り組みを行っていると聞きました。

    2017年7月に発足した「渋谷署管内万引き防止連絡会」のことですね。渋谷署、書店、商店街、有力小売店が連携して、自店だけでは対応できない万引き犯罪の防止対策を進めています。こういった地域防犯の必要性は、これからさらに大きくなると思います。

    ――最後に、書店や出版業界全体へのメッセージをお願いします。

    出版物の売上状況が厳しい中、経営面から言えば、今こそ万引き被害の根絶によってロス率を改善し、より大きな利益の確保を目指すことの重要性が増しています。万防機構が2017年度(2018年1月)に実施した「第12回 全国小売業不明ロス・店舗セキュリティ実態調査」では、回答書店数が153社と前回の1.5倍に増加しました。これは、当本部の発足で書店における万引き問題への関心が高まっていることの表れではないかと思います。

    万引防止出版対策本部は、これからも出版業界の健全な発展と存続に寄与する、地道で継続的な活動に取り組んでいきます。みなさまのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

    (「日販通信」2018年11月号 特集「万引きロスを防ぐ!」より転載)


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