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年の終わりを待たずに、一足早く2018年の年間ベストセラーが発表されました。
大人向けノンフィクションは、上位にランクインするものが少なく苦戦の年となりましたが、そんななか勢いを見せているのが、ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』です。
デビュー作『サピエンス全史』が2016年~2017年初めに大きな話題となり、歴史・人類学ジャンルの本としては異例のヒットを記録しました。その後勢いは衰えることなく、2017年末にも売上が爆発。今年9月に第2弾の発売を迎えました。
まずはどんな売れ方をしたのか、『サピエンス全史』『ホモ・デウス』2作の週別売上推移を見てみましょう(※日販 オープンネットワークWIN調べ)。
売上が大きく跳ねているのが、著者が来日し、テレビ出演などの露出があったタイミングです。特に2017年のお正月のテレビ出演による影響が大きく、出版業界では大きな話題となりました。
それ以降その勢いを超えるイメージがあまり持てないでいたのですが、続編『ホモ・デウス』発売以降、点数が増えたこともあり、シリーズ全体としてはもっとも売れている期間が続いています。
こういった重厚なタイトルは年末年始にかけてよく売れ、よく読まれます。この年末年始も再びのユヴァル・ノア・ハラリブームが期待できそうです。
では、『ホモ・デウス』を読んでいるのはどんな人たちなのでしょうか? 上巻の購入者層を見てみましょう(※日販 WIN+調べ)。
手に取っている人がもっとも多い世代は、50代・60代。7対3で男性読者のほうが多いようです。ノンフィクションジャンル全体の傾向と比べると、30代以下の若い世代に支持されているのが一つの特徴となっています。
続いて、『ホモ・デウス』が発売された2018年9月以降に、彼らが購入したものを見てみましょう。併読上位作品は下記のとおりです。
1 | ホモ・デウス(下) (ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社) |
3 | サピエンス全史(下) (ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社) |
3 | サピエンス全史(上) (ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社) |
4 | 「死」とは何か (シェリー・ケーガン/文響社) |
5 | 日本が売られる (堤未果/幻冬舎) |
6 | 日本国紀 (百田尚樹/幻冬舎) |
7 | 日本史の論点 (中公新書編集部/中央公論新社) |
7 | 昭和の怪物 七つの謎 (保阪正康/講談社) |
9 | ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち (三上延/KADOKAWA) |
9 | 新版 動的平衡(2) (福岡伸一/小学館) |
9 | the four GAFA (スコット・ギャロウェイ/東洋経済新報社) |
話題の新書やノンフィクション本がずらりと顔を揃えています。
さすがに『ホモ・デウス』下巻の併読率は高く、60%以上が購入済み。ほぼ同タイミングで購入した方も多いようです。
またこのタイミングで『サピエンス全史』を購入した人も多いようで、『ホモ・デウス』の発売がきっかけになっていることもよくわかります。
それでは、併読本のなかから注目タイトルを見ていきましょう。
今回の併読本にはビジネス系・理系雑誌が目立ちました。特に「日経サイエンス」「ニュートン」などと一緒に読んでいる方が多いようです。AI系の特集を選んで購入している方も。
この「週刊東洋経済」はデータ階層社会を特集した号で、ユヴァル・ノア・ハラリさんのインタビューや、『ホモ・デウス』の解説も掲載されました。一緒に読むことで理解が深められそうです。
「宇宙には、解明されていない多くの謎が残っていて……」というのは、宇宙関連書籍では常套の売り文句。「そもそもどのくらい謎が残っているのよ……」といつも思っていたのですが、この本の帯を見る限り、わかっている部分はほんの1割程度のようです(しかも目に見えている部分のみ)。
そのためこの本には、宇宙の謎についての解説ではなく、宇宙についてわからないことと、わからない理由が書いてあります。親子で一緒に読んでワクワクするのにおすすめの一冊です。
近年の「歴史ブーム」はまだまだ収束の気配を見せませんが、今年の大きな特徴は「“新常識”に注目が集まった」ということでしょうか。
常識が覆された例としてよく知られているのは「鎌倉幕府の成立年度」ですが、ほかにも日本史の〈常識〉には、近年見直されたものがたくさんあります。
本書は、それを一挙総ざらいできる注目新書。子どもの宿題や暗記に付き合うためにも、このあたりの知識は入れ替えておかなければなりませんね。
性的な魅力と、その進化の秘密に切り込んだ本。
動物行動学の観点から考察した内容ですが、人間だって動物。実は「性的な魅力」というのは非常に移ろいやすいもので、これまた偶然の産物として生じたものなのだそうです。
これを知ってから動物園に行くと、動物を見る目が変わるかも。
タイトルから内容が想像しづらいですが、難病との闘いを描いた一冊です。この難病というのがすさまじく、「食事をするたびに腸に小さな穴が開き、その穴が皮膚表面まで通じてそこから便が漏れるという奇病を患っている」とあります。
2歳の男の子が患った病気ですが、どんな状態なのか理解することすらできません。しかも「このままでは10歳までもたない、と考えられた」というあたりには、絶望よりも、現在の医療のすごさを感じました。
この難病と対峙した医師たちの苦闘と、パーソナルゲノム医療を実現するまでの動きを追った医療ドキュメンタリー。この病気がどうなったのか、結末が気になります。
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『ホモ・デウス』が最も売れたのは、「おはよう日本」(NHK総合)で取り上げられた日でした。
「人類学」という、普段なかなか一般の方に手に取られることのない本がこれだけ売れたのは、テレビ番組でわかりやすく解説されたことが理由です。
周辺にはまだまだ興味深い本がたくさん! 今年の年末年始は、これらに触れながら、私たちの行く末を考える機会にしてみてはいかがでしょう?
※「HONZ」で2018年12月2日に公開された記事に、一部編集を加えています。