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2018年は、とにかく災害の多い年でした。出版業界にとっても、店舗の被災、輸配送網の乱れなどさまざまな影響があり、まだ完全に復活したとは言いがたい状態が続いています。
しかしその一方で、今年も多くの話題の本が刊行され、書店店頭を賑わせました。
年末が近づき、これから各種アワード・ベストセラーの発表が増えますが、今回は「2018年度の上半期(4月~10月)で最も本・雑誌が売れた日はいつだったのか。また最も売れなかったのはどんな日だったのか?」という観点で振り返ってみましょう。
上のグラフは、日本出版販売の日別POS売上データ(※オープンネットワークWIN対象店)から、期間内の平均値を出し、それぞれの日の平均値との開きを表したものです。
4月・8月は平均値より売れた日がほかの月に比べて多く、一方で5月は全般的に苦戦した日が多かったことなどが見てとれます。
下の表は「平均値を超えた日数」「超えなかった日数」を数え、月ごとにまとめたもの。夏休み期間も悪くないのですが、それ以上に4月の圧倒的な好調ぶりが目立ちます。
先ほどのデータを「曜日別」でまとめると、上の表のようになりました。
今年は月曜日が祝日になることも多かったのですが、月曜日は苦戦し、土曜日が圧勝。週の頭は苦戦し、週末にかけて盛り上がっていくという傾向がよく現れています。
それでは「売上のよかった日」トップ10と、その日に何が売れていたのかを見ていきましょう。
年間のデータをとると12月・1月が上位を占めるので目立ちませんが、半期では4月・6月・9月の土曜日が上位に並びました。
それぞれの発売日とあわせて見てみると、最も売れた作品=その週の後半に発売された大物タイトル となっているのがわかります。
・『よつばと!』第14巻 … 4月28日(土)発売 *
・『ダンジョン飯』第6巻 … 4月13日(金)発売 *
・「GLOW」… 6月28日(水)発売
・『ワンパンマン』第16巻 … 4月4日(水)発売 *
・「週刊少年ジャンプ」… 9月22日(土)発売
・『転生したらスライムだった件』第9巻 … 9月28日(金)発売 *
・『聖☆おにいさん』第15巻 … 6月22日(金)発売 *
・『転生したらスライムだった件』第8巻 … 6月8日(金)発売 *
・『空也十番勝負 青春篇 異郷のぞみし』… 6月14日(木)発売
・「コロコロコミック」… 4月13日(金)発売*印はコミック。
過半数をコミックが占めるなかで第3位となった「GLOW」6月28日発売号は、DEAN & DELUCAの保冷グッズ4点セットが付録になり、売り切れ続出で話題になった号。
第5位の「週刊少年ジャンプ」9月22日発売号は、祝日のため発売日が繰り上がりましたが、富樫義博さんの連載『HUNTER×HUNTER』が再開されるということで発売前から注目を集めていました。
第10位の「コロコロコミック」4月13日発売号も、人気カードゲーム「デュエル・マスターズ」のデッキ実物が付録になった注目号です。
このように、掲載内容や付録など目玉のある号は、それを事前にアピールしておくことで、来店客数を増やすことにつながっています。
また、売上のよかった日のうち、先ほど「平均より売れた月」と紹介した4月が4日入っている一方で、平均以下のほうが多かった6月も同じく4日ランクインしているのも面白いところです。
さらに7月・8月に関しては、「最も売れた日」には1日も入っていません。「平均より売れた日がどれだけあったか」という点では高い水準にあり、売上自体もよかったのですが、最初のグラフからもわかるように売上が突出した日はありませんでした。
では、本が売れなかった日はいつだったのか、そしてその日に何があったのかを見てみましょう。
大きな事件や事故があったとき、心理的な影響からか、直接的には関係のない地域でもPOSの数字が落ちることはままあります。
しかし地震・水害・台風と、大きな災害が続いた年だったわりには、そのような特定の日が上位となることはありませんでした。むしろ、連休明けや荒天、猛暑が、人の足を鈍らせる要因となっているようです。
月曜日の祝日が多いこともあって、火曜日の売上の落ち込みも目立ちました。
人の購入意欲が天候に大きく左右されることがわかりましたが、これはあくまで全国的な数字です。
天候が悪ければ悪いほど、ネット書店の売上は上がるでしょうし、最寄りの書店で買い物をする率は高くなるでしょう。それぞれの店舗が、曜日・時間帯・天候の影響を見ながら、店の運営を考えていく必要があるとあらためて感じました。
一方で、読者を呼び込む仕掛けについてももう少し工夫が必要です。
たとえば5月。大型連休で賑わった売場をそのままの状態にするのではなく、業界を挙げて、ここに売上の山を作りにいく必要性があるのではないでしょうか。「ジャンルアワードの発表月をずらす」「大型の読者還元企画を行なう」など、まだまだできることはあるはずです。
書店店頭は回復傾向にあります。この動きを加速させるため、工夫を凝らし、世の中を巻き込めるような企画を打ち出していきたいと考えています。
(文化通信BB 2018年11月26日増刊より転載 ※一部編集)
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