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昨年「新刊発売日の見直しは、売上アップの鍵となるか?」というタイトルで“出版業界における輸配送の問題”を取り上げ、新刊搬入のタイミングが偏在していること、さらに搬入日と返品状況の相関を分析し、非常に大きな反響をいただきました。また、その反響のなかに「そもそも搬入日の集中があったということを知らなかった」という声が多かったことも印象的でした。
さて日本出版取次協会(取協)では、今年初めから一部出版社で事前申告をもとにした「全取次同一銘柄・同一搬入日」の試みをスタートし、新刊業量平準化へ向けた取り組みが本格化されています。
それでは、いま新刊業量はどうなっているのか? 日別の搬入点数や、冊数・重量の動向を見てみましょう。
上のグラフは、6月の搬入点数(日別)です。1日あたりの平均点数は219点。多くの出版社様に搬入日の変更・調整にご協力いただいたことで、平均的な範囲とされる190点~250点におさまる日が増加しつつあります。
ただ、搬入点数が最少だった6月4日(106点)、最大となった20日(283点)では依然として3倍近い開きが残っており、「月初は少なく下旬はオーバーする」という傾向を変えるまでには至っていません。
続いて、冊数や重量の動向を見てみます。毎日の搬入冊数・重量が、それぞれ月の平均と比べてどのような値になっているのかについて、4月~6月の月次推移をグラフにまとめました。
取次の新刊整品作業においては、この冊数や重量も重大な要素。しかしグラフからは、点数に比べて平準化にはほど遠い実態が見えてきます。
グラフから、いくつか“山”があることがわかります。それぞれの意味を見ていきましょう。
まずは、4月10日・6月12日の冊数ピーク。これは15日発売の文庫レーベルが集中したことによるものです。定期広告などの関係もあると思いますが、この日が毎月発生する最大の集中ポイントであることは間違いなく、何らかの手立てが必要です。
続いて4月25日のピークは、大型連休直前の集中によるもの。このほかにも、お盆の休配期間や年末年始には必ず同様の山が発生します。この期間に発売する必然性がない商品は、この山にかからないように搬入を設定することが必要です。
その一方で、5月29日・6月27日の山は『SLAM DUNK 新装再編版』の発売によるもの。4か月連続での刊行が予定されているので、7月・8月にもこの山ができる見込みです。
業量の平準化により、取次の作業現場や輸配送の現場には大きな成果が期待されています。搬入トラックの待機時間や時間通りの進行など、すでに成果が見え始めた部分もあるようです。
また今後、日本出版インフラセンターが提供する「出版情報登録センター(JPRO)」の事前登録情報をもとにした搬入日・業量の調整が拡大していきます。従来窓口で受け付けていたような急な発売は、どんどん難しくなっています。
新刊搬入日の設定に、もはや既得権はありません。早期に、これまで以上の細やかな発売計画を立てていくことがますます重要になっています。
業界全体で、書籍搬入日についての意識改革を行なっていくことが必要です。
(文化通信BB 2018年7月30日増刊より転載 ※一部編集)