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文庫本の売上低迷に歯止めがかかりませんが、苦戦が続くなかで注目を集めているのが「キャラクター文庫」(以下、キャラ文庫)です。今回は、このジャンルについて見ていきたいと思います。
そもそも「キャラ文庫」とは何を指すのでしょうか?
各社定義は色々ありますが、日本出版販売では「内容を想像しやすいイラスト表紙があるもの」で、「ライトノベルのように挿絵はないもの」をキャラ文庫と定義し管理しています。
※主なレーベル
【KADOKAWA】メディアワークス文庫、富士見L文庫
【スターツ出版】スターツ出版文庫
【マイナビ出版】マイナビ出版ファン文庫
【講談社】講談社タイガ
【三交社】SKYHIGH文庫
【集英社】集英社オレンジ文庫
【新潮社】新潮文庫nex
【文芸社】文芸社文庫NEO
挿絵はありませんが、このジャンルではイラスト表紙が重要な要素となっています。
これまで小説は〈著者買い〉〈内容買い〉が購入の主な理由となっていましたが、ライトノベルと同じく、いわゆる“ジャケ買い”をするお客様が非常に多いのが特徴です。この要素に注目し、「過去に出版された商品を装幀変えして発売し直す」という動きも出ています。
またライトノベルに比べて、読者の年齢層が広いのも特徴です。大ベストセラーとなった『ビブリア古書堂の事件手帖』など、ジャンルの枠を越えて多くの読者に読まれているタイトルも多数あります。
▼『ビブリア古書堂の事件手帖』第7巻の読者クラスタ(※日販 WIN+調べ)
上のグラフは、過去1年間の文庫ジャンルの店頭売上前年比です。全体で100%を超えた月はなく、特に既刊(発売から2か月以上が経過した商品)の低迷が目立ちます。
既刊の売上はこれまで映像化に引っ張られてきましたが、前年比にまで影響を与えるものはほとんどなくなりました。 そんななか映画化によって『君の膵臓をたべたい』が大きな売上を記録し、2017年7月・8月の2か月のみ、売上前年比が100%を超えました。
こういった状況のなかで、勢いを見せているのがキャラ文庫です。刊行点数は5年前に比べ4倍に増加、2017年の文庫の売上構成比は4.5%(前年比0.8ポイントアップ)。主力ジャンルになりつつあることがわかります。
▼2017年の文庫ジャンル売上構成比
このジャンルをさらに伸ばし、文庫の売上復活につなげていくためにはどうしたら良いのでしょうか?
キャラ文庫が抱える最大の課題は、「読者への訴求力の弱さ」です。
各社のレーベルの認知度はそれほど高くなく、一般文庫と同じレーベルで管理されているケースも多くあります。この結果、商品は売り場に点在することになり、読者にとっては非常に探しづらい状態になっています。
出版社によってさまざまな営業・販売戦略があるとは思いますが、まずは ①著者、②内容(たとえばミステリなのか、ファンタジーなのか、恋愛ものなのか)、③イラストレーターまで出版社を横断して網羅した一覧などを準備し、選びやすく売りやすい工夫をしていくことが必要です。
現時点でのキャラ文庫の売上は、売上上位200点が既刊売上シェアの約90%を構成しているという状況です。また特に、キャラ文庫を1か所に集めて面陳で訴求している店舗の売上は、未実施の店舗に比べて非常に高くなっています。
売れる商品をきっちり売りつつ、次のベストセラー、ロングセラーを丁寧に作っていくことが、このジャンル、ひいては文庫全体の売上を引き上げることに繋がっていくのではないでしょうか。
(文化通信BB 2018年5月28日増刊より転載 ※一部編集)
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