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「雑誌が売れない」と慣用句のように語られていますが、そんな市況の中でも売上が伸びている雑誌があります。例えば、パズル雑誌。POSの売上を見ると、4年連続で100%超えが続く超優良ジャンルとなっています。不況ムードに隠れがちですが、いい話は色々あるのです。
そんな中、9月の売上ランキングを見ていて、目にとまった雑誌がありました。下記は9月期の定期雑誌売上ランキング(日販POS調べ)です。
冊数のランキングは週刊誌が上位を占有する傾向にありますが、売上金額ベースで見ると、面白いランキングが見えてきます。
第1位の「コロコロコミック」は想像できた結果にしても、第2位に「会社四季報」が入ったのは意外な結果でした。発売日とデータ取得期間の関係などもありますが、こうしてみるとこの存在が光ります。
実は順位や売上自体も大幅に伸びていて、ほぼ同時期に発売された昨年の秋号と比較すると、150%程度の売上伸張率となっています。雑誌不況を吹き飛ばすいい話、今回はこの「会社四季報」について見てみたいと思います。
そもそも、株関連書籍・雑誌の売上と株価には相関性があると言われています。そこで「会社四季報」の売上グラフに、日経平均(各月の高値)を重ねてみました(売上は日販POS調べ)。
軸は違いますが、動きは綺麗なまでに一致。あまりに綺麗すぎるので不安になり、月刊の某マネー誌で同じグラフを作ってみました。
傾向は似た感じです。相場、恐るべし。出版業界人は株価も鑑みた制作・仕入をしなくてはいけませんね。
さて、話を「四季報」に戻します。「会社四季報」の読者はどういった方々なのでしょうか? 読者層はこちらです(日販 WIN+調べ)。
70%以上が男性読者。そして核となるのが60代以上という状況でした。ちなみに、ほぼ同時期に発売されている「会社四季報別冊 プロ厳選の500銘柄」の方になると、男女比はほぼ変わらないものの平均年齢が若干下がっていました。
続いて、「会社四季報」購入者が10月に購入したものを見てみます(日販 WIN+調べ)。
上位にはビジネス誌やマネー誌が並んでいます。
それでは、書籍ではどんな本が読まれているのでしょうか? 「会社四季報」読者が注目する作品を紹介していきます。
マンガーとは、バフェットのパートナー。それも「唯一無二」とまで言われた方です。
バフェットに比べると知名度は今ひとつですが、実のところバフェットの理念はマンガーのアイデアに基づいたものも多いとのこと。タイトルだけ見ると“投資のテクニック集“に見えますが、深い含蓄、理念、視点が語られた一冊。マンガーを知りたい人におすすめです。
相変わらずの地政学人気が続いています。著者は、NATO軍最高司令官を務めた米海軍提督。肩書きだけでもインパクト大ですが、まさに七つの海を股にかけてきた軍人だからこそ、説得力が違います。
歴史を紐解きつつ、アメリカの今後の海洋戦略までを語るという、気になる一冊。
最近では何か事件を起こすと、瞬く間に過去が調べ上げられ、子どもの頃はどうだったとかなんとか、隠し事も隠しておけない世の中になりました。
その中でよく聞かれるのは「昔は神童と言われて……」という言葉。あの名門校の卒業生は、首席で卒業した人はどうなったんだろう?という、よくある疑問を解き明かした一冊です。シビアな現実なのか、もっともな内容なのか、いろいろ考えたくなります。
AIやIoTが浸透した未来はどうなっているのか、私たちの仕事はどうなっているのか? これらは、この問題を考えるときに必ずといって出てくる問いです。
ロボットによって代替されてきた単純作業だけでなく、今後はいわゆる専門家分野にもこの影響は及んでくるはず。たとえば教育、たとえばコンサル。こういった仕事がどう変化していくのかを分析したのがこちら。投資すべきジャンルが見えてくるかもしれません。
新刊案内を見て「こんなにニッチな世界史の本が出るのか!」と驚愕したのですが、これがまたじわじわと注目されて売れています。最近の中公新書は渋さを競い合っているのでしょうか……。
トラクターは、穀物大量生産を可能にしたことで世界を変えたのだそうです。確かに、こういう機械を購入する必要がなければJAも成立しなかったかもしれません。ナチスドイツに注目されていた話など、世界史がぐっと身近になります。
これもすごいと思っていたら、次いで『戦争と農業』という新書が発売されていました。これもあわせて読みたい作品です。
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今年は企業ノンフィクションの当たり年、もう少しそういった本が併読本として出てくるかとも思っていたのですが、メインは株のハウツー本、それ以外には歴史物が多めでした。
投資という未来予測のためには、過去を知ることも重要ということなのかもしれません。株価好調の今、投資術だけにとどまらず、企業や技術の未来について考えてみるのも良いのではないでしょうか。
(「HONZ」で2017年10月19日に公開された記事に、一部編集を加えています)