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都議選の声が聞こえ始めた6月上旬、我々のもとに「ものすごい隠し球があるらしい」という噂が飛び込んできました。
出版業界というのは隠し球が好き。発売して内容が明らかになってからよりも、内容がわからないうちのほうが盛り上がるくらいのものです。
で、その隠し球。「どこぞの政治家がものすごい爆弾発言をしているのでは?」「タレントの離婚か?」(郷ひろみの『ダディ』以後、隠し球ネタの定番)などさまざまな噂が錯綜する中、姿を現したのが『小池百合子写真集』でした。
その時の反応や騒ぎ、感想などの諸々はすべて割愛し、いつものデータにうつりましょう。
まず、売れ方を見てみます。下記は日販 オープンネットワークWIN調べのPOS売上データ(日別)です。
▼6月10日~7月10日の売上推移
面白いもので、都議選の公示日(6月23日)から選挙当日(7月2日)は、運動が活発だったにもかかわらず数字は落ち込む傾向にあります。この期間中は、全国紙への広告出稿やテレビでの取り上げがなかったことが最大の理由でしょう。
それ以降はさまざまなテレビで取り上げられ、また動きが出てきています。「選挙が始まれば本の動きが良くなる」と思いがちでしたが、本人の露出があっても、商品紹介がなければ本はなかなか動かないようです。そういったことが見える面白い事例となりました。
続いて、読者層を見ていきましょう。
▼『小池百合子写真集』購入者クラスタ(日販 WIN+調べ)
残念ながらサンプルデータが少なかったものの、明らかに購買層のピークは70代、次いで60代という結果に。写真集として見ると、異例の購買層グラフを描いています。
参考までに、小池知事の“座右の書”として売れに売れた『失敗の本質』という本がありますが、最も話題となった昨年10月の1か月間にこれを購入したのは、こういった購買層でした。
▼『失敗の本質』2016年10月の購入者クラスタ(日販 WIN+調べ)
それでは続いて、『小池百合子写真集』読者の併読本を見てみましょう。上位3位はこちらです。
・【第1位】『知らないうちに』(渡辺麻友/講談社)
・【第2位】『天才』(石原慎太郎/幻冬舎)
・【第3位】『東京大改革小池百合子の戦い』(宝島社)
なんと第1位は、“まゆゆ”の写真集! ……となると、写真集好きにも受け容れられているということでしょうか。
これに続いて国谷裕子さんの『キャスターという仕事』が読まれていたり、壇蜜さんの本が入っていたり。「書店さん、どの売場に並べるか悩んだろうな」と苦労が偲ばれる併読本ラインアップとなっていました。
さて、それでは注目の併読商品を紹介していきます。
スポーツノンフィクションの代名詞として、このタイトルをあげる人も多いでしょう。「山際淳司」という作家を世に出した一冊とも言えます。
「野球は9回裏からが勝負」とよく言われますが、これはまさにそれを体現している作品。すでに世に出ている野球ノンフィクション12編を再収録した作品集で、解説が河野通和さんというところも一つの読みどころです。
今年の10月でウルトラセブンは放送開始50年を迎えるのだそうです。
今でもさまざまな機会に再放送され、新たなファンを増やし続けている名作。アンヌファンは広い世代にわたっています。アンヌ隊員自らによる「ウルトラセブン解説」もあるので、セブン好きにもぜひ手にとっていただきたい作品。
小池百合子知事との対談が掲載されていることが、併読率の高い理由でしょう。
都バスの各系統始発から終点までを乗車することで見えてきたことから、東京に隠された秘密を読み解くという本書。社会学者ならではの視点から、なかなか我々では気づかない事実をあぶりだしています。
新渡戸稲造は『武士道』も過去ベストセラーになったことがありましたが、この夏は『修養』が注目を集めそうです。当時からグローバルな視野を持っていた著者は、未来の日本を担う青年たちに向けてこの本を記したと言われています。
過去、さまざまなバージョンが発売されてきていますが、ここに新版が登場しじわじわと広がりを見せています。孫子の兵法や学問のすすめなど子ども向けの解説本も大ブーム。これに続く流れになるでしょうか?
今回の併読本リストは、上品、品格といったキーワードがあちらこちらに見られました。皇室関連の本も良く読まれていた印象もあります。品格のあるステキな年の重ね方や生き方を求める方たちにとっては、小池百合子という人はひとつのロールモデルなのかもしれません。
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『小池百合子写真集』、そしてその併読本はどことなく昭和の香りのラインアップとなりました。選挙の盛り上がりがこれとイコールではありませんが、政治関連作品を見てもなかなか若年層に本は届いていません。
ネットを通じてアクセスできる情報以上の深い情報が本にはたくさんあります。今回見たさまざまなデータからは若者の政治参加の難しさやハードルを感じました。確かな情報を見極めお薦めしていくのも私たちの仕事なのだと改めて考えています。
・小池百合子写真集がTOP10入り!今売れているアイドル・タレント写真集ランキングTOP10(2017年6月)
(「HONZ」で2017年7月20日に公開された記事に、一部編集を加えています)