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世間は又吉直樹『火花』の芥川賞受賞熱が冷めやらぬ様子ですが、今回は一風変わった文学賞を紹介します。その名も「大学読書人大賞」。全国の大学の文芸部に所属する「読書人」が、純文学、ノンフィクション、評論などジャンルの壁を越えて「この一年最も輝いていた本」を選び、贈る賞です。
過去の大賞受賞作品を見てみても、伊坂幸太郎『マリアビートル』、野尻抱介『南極点のピアピア動画』、アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』など、実にさまざまな作品が選ばれています。(公式HPより 昨年度の大賞贈与式の様子 受賞作品は伊坂幸太郎『マリアビートル』)
今年で8周年を迎える「大学読書人大賞」。今年度大賞を受賞したのは、河野裕『いなくなれ、群青』(新潮社)でした。本作「新潮NEX」から発行された作品。「新潮NEX」は、昨年100周年を迎えた新潮文庫が「今」いちばんおもしろい小説を追求するために、新しく創設した次世代ラインナップです。
ぼく。彼女。島。謎。心を穿つ青春ミステリ。11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。
本作を大賞に導いた九州大学文藝部の松浦優斗さんは、推薦文に「ミステリーと銘打ってあるが、ファンタジーとも言える。あるいはロマンスだと感じる読者もいるかもしれない」「この小説では、『青春』と呼ばれるつかみどころのない『何か』こそが、最大の謎となっている」「これは、青春という謎を解く物語である」と書いています。
また、作者の河野裕さんも贈賞式の際、「純文学もライトノベルもSFもあらゆるジャンルの作品を公平に扱っているという点が大学読書人大賞の素晴らしいところ」とおっしゃっていました。
「ジャンルにとらわれない面白さ」という観点でも『いなくなれ、群青』は大賞に最もふさわしい作品だったといえるでしょう。
その他の最終候補作品はこちら
大賞は、参加した学生による、推薦文や討論の内容をもとに行われる投票によって決まります。参加資格を持つのは全国の大学の文芸部・文芸サークルに所属する学生。全国の筋金入りの読書好きたちが、それぞれに選んだ本の魅力を全力で語り合いしのぎを削るさまは、まさに「読書人たちの総選挙」といっても過言ではないほどの白熱ぶりです。
ちなみにこの文学賞は、フランスの「高校生ゴンクール賞」から着想を得ているそうです。
「高校生ゴンクール賞」とは、フランスで最も権威のある文学賞の一つである「ゴンクール賞」の選定にあわせ、全国の高校生が候補作品から「自分たちが最も面白いと思う作品」を投票して選ぶもの。驚くべきことに、「高校生ゴンクール賞」の受賞作品が本家「ゴンクール賞」の受賞作品より売れることも珍しくないのだそうです。
最近面白い本が見つからないとお悩みのあなた、若き読書人たちの熱い声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか?そこには、あなたがまだ知らない名作との思いがけない出会いが待っているかもしれません。
大学読書人大賞公式HP http://www.jpic.or.jp/dokushojin/