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今年も年末年始は書籍の売上げが好調! 幸先良いスタートを切ることができました。2014年~2015年の年末年始はピケティの『21世紀の資本』が大ブレイク(記事はこちら)、それを読んでいた人が2015年~2016年の年末年始で読んだのは『ギリシア人の物語I』(記事はこちら)……と、年末年始は重厚な本の読書が進む季節です。
それでは、昨年の年末年始に『ギリシア人の物語』を読んでいた方は、この年末年始に何を読んでいたのでしょうか?
2015年12月20日~2016年1月4日に『ギリシア人の物語[I]』を購入した方が、一年後の2016年12月20日~2017年1月4日の期間に購入したものがこちら。
順位 | 分類 | 書名 | 著者 | 出版社 |
1 | 月刊Hanada | 飛鳥新社 | ||
2 | 文庫 | 機は熟せり[上/下] | ジェフリー・アーチャー | 新潮社 |
3 | 文庫 | 炎路を行く者 | 上橋菜穂子 | 新潮社 |
3 | 新書 | 応仁の乱 | 呉座勇一 | 中央公論新社 |
4 | 100分de名著[2017年1月] | 日本放送協会 | NHK出版 | |
5 | 総合 | マンスリーWiLL | ワック |
書籍の第1位はジェフリー・アーチャー。その下の順位にあたってもバラツキが多く、「この人たちはこれを読んだ」という明確な一冊のない年末年始休暇となったようです。
年末年始の重厚な読書に最適な一冊は、このあと大きな動きを見せました。HONZでも発売時から注目している『サピエンス全史』がNHKの特集を受けて大ブレイク。
またたく間に、ベストセラーとなりました。
この『サピエンス全史』の売上、さらには1月末には『ギリシア人の物語Ⅱ』の発売も控えていることから、昨年からは1か月遅れでの「重厚な読書」時間の盛り上がりが来そうな予感です。
これからさらに話題になるであろう『サピエンス全史』の読者を見ていきましょう。上巻のこれまでの読者層がこちら。
男性読者が80%。50代・60代と、年輩読者が多めのクラスタになりました。
この読者がこの2年間で読んだものの、ベスト10がこちらです。
順位 | 分類 | 書名 | 著者 | 出版社 |
1 | サピエンス全史[下] | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 | |
2 | 新書 | 言ってはいけない | 橘玲 | 新潮社 |
3 | 日本人はどこから来たのか? | 海部陽介 | 文藝春秋 | |
4 | 新書 | シャルリとは誰か? | エマニュエル・トッド | 文藝春秋 |
4 | ギリシア人の物語 | 塩野七生 | 新潮社 | |
6 | 天才 | 石原慎太郎 | 幻冬舎 | |
7 | 住友銀行秘史 | 國重惇史 | 講談社 | |
8 | 新書 | 科学の発見 | スティーヴン・ワインバーグ | 文藝春秋 |
8 | 新書 | 京都ぎらい | 井上章一 | 朝日新聞出版 |
10 | げんきな日本論 | 橋爪大三郎 | 講談社 | |
10 | 戦争まで | 加藤陽子 | 朝日出版 |
もっとも併読されているのは、もちろん『サピエンス全史』の下巻。ポイントカード提示がキーとなっているこのデータでも、65%があわせて購入しています。第3位に『日本人はどこから来たのか?』が入っており、文化人類学への興味の高さを伺うことができます。ジャンル的には世界史、政治といったタイトルが目立ちました。
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これからまだまだ話題になるであろう『サピエンス全史』。読者の併読本から、次に注目すべき一冊を探っていきたいと思います。
「一子相伝の史料を本邦初公開!」という内容紹介に、一子相伝のものを世の中に見せちゃって良いのか、それは掟に書いてないのか?など衝撃と疑問が隠せませんが、注目を集めている一冊。著者は甲賀忍之伝を継承する甲賀伴党21代宗師家であり、「秘蔵の史料が公開されている!」と、忍者好きならずとも心のざわざわを隠せません。今年は『忍びの国』の映画化もあり、出版業界的には忍者から目が離せない1年になりそうです。
『家康、江戸を建てる』が直木賞候補にもなった著者、門井慶喜による小説。明治末期にキリスト教布教のために来日した建築家、メレル・ヴォーリズの生涯を描いた作品です。実在の人物を扱った小説のため、小説好きだけでなくノンフィクション好きの方々にも多くの支持を受けています。メンソレータムを売ったのもこの方なのだと聞いて、急激に身近に感じています。
こちらは2012年に『不滅の書』として単行本で発売され、2014年に改題のうえ発売されました。それが昨年の後半からじわじわと注目され始め、売上を伸ばしつつある作品です。インドで消息を絶った兄が残した書物。これに導かれ旅をすることになる弟。連作短編という体裁をとった哲学書です。謎の書を軸に交差する昔の文明と、そこに生きる人々たちには、哲学好き・小説好きどちらも惹きつけられているようです。
著者のマーク・カーランスキーは、これまでにも『塩の世界史』などのベストセラーを持ちます。今回、彼が世界を読み解くテーマに選んだのは「紙」。人類が発明し、記録をするものとして使い続けている「紙」がどうつくられて、どう運ばれて、どう進化したのかを読み解きます。
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新年早々の大物銘柄のヒットに期待が高まりますが、まだまだ今年も面白い本の出版計画は目白押し。今年一年、皆様が充実した読書生活をお送りになることを祈念しております。
(「HONZ」で2016年1月11日に公開された記事に、一部編集を加えています)