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韓国発の縦読みデジタルコミック「ウェブトゥーン」。コミックアプリの普及とともに、片手で読める手軽さから人気を集めています。Netflix製作の「梨泰院クラス」「Sweet Home ―俺と世界の絶望―」など、話題となったドラマの原作としても注目を集めました。
▼「梨泰院クラス」の原作Web漫画の日本版は、舞台を六本木に移し、オールフルカラーでコミック化。日本でも竹内涼真さん主演のドラマ「六本木クラス」が7月より放送されています。
ウェブトゥーンとは、縦スクロール型(ページの概念がなく、一枚の巻き物のような形式)で、スマートフォンでの閲覧に適したデジタルコミックのこと。
ウェブトゥーンの特徴としては、スマホの縦画面いっぱいに漫画が表示され、縦に連続していくコマを読み込んでいくことで没入感が高いこと、それによりどこまでも読んでしまう中毒性があること、フルカラーやBGM付きなど、従来の紙媒体とは違う楽しみ方があることが挙げられます。
日本でのウェブトゥーンプラットフォームには「LINEマンガ」「comico」「ピッコマ」などがあり、いずれもネイバーやカカオといった韓国IT大手が立ち上げに関わっています。
ピッコマは、2021年におけるApp Store(ブックカテゴリ)、Google Play(コミックカテゴリ)の合計売上が日本および世界で第1位となりました。2021年9月には「ピッコマヨーロッパ」を設立して事業を拡大し、アプリ版「ピッコマ」の2022年2月時点での累計ダウンロード数は3,200万件を突破しています。
LINEマンガは、韓国および米国市場で「WEBTOON」を展開するNAVER WEBTOONの関連会社であるLINE Digital Frontierが運営。NAVER WEBTOONは、2022年上半期にはフランスに欧州総括法人を設立。欧米進出が進むだけでなく、中国や台湾や東南アジアでもウェブトゥーンの人気は高まっており、勢力争いは激化しています。
2021年時点で4,400億円だったグローバル市場規模は、2028年には3兆円規模にまで成長すると予測されており、まさに急成長の分野といえるでしょう。
韓国作品の翻訳が主だったウェブトゥーンですが、日本発の作品を生み出そうという動きが拡大しています。
近年は、ウェブトゥーン専門の制作スタジオの設立が相次いでいます。ソラジマやLOCKER ROOMといったスタートアップ企業が続々と参入。LOCKER ROOMは、ピクシブとのウェブトゥーン作品の共同制作プロジェクト開始も発表しました。
また、小学館や集英社といった大手出版社もウェブトゥーンの専門部署を設立。KADOKAWAは2021年8月に「タテスクコミック」レーベルを始動し、人気タイトルがカラーコミックとして読めるようになるほか、新たな才能を発掘すべく「タテスクコミック大賞」を開催しています。
小学館は2021年12月より、玩具メーカーのバンダイ、その関連会社のBANDAI SPIRITSと共同でウェブトゥーンコンテスト「TOON GATE」を実施。2022年5月にはTBSがNAVERグループなどとの合弁で新会社を設立し、ウェブトゥーン市場への参入をスタートさせました。
拡大するウェブトゥーンは、作家(制作者)側にも変化をもたらしています。
もともとウェブトゥーンは、20年ほど前に韓国の漫画家たちが自作をウェブサイトで掲載するようになったのが始まりです。当初は紙媒体と同じく、1ページまたは1見開き単位で読む形でしたが、ブラウザに搭載された”プリロード機能(ブラウザの先読み)”により、15年ほど前から縦にスクロールして読む現在の形式が主流となりました。
そして2010年代以降は、スマートフォンの普及により、アプリを主軸とした片手で読める「縦読みスタイル」が定着しています。
ウェブトゥーンの制作は専業のスタジオが設立されていることからもわかる通り、原作やキャラクターデザイン、作画、色調整などの分業体制が敷かれていることが多く、その体制が作品の量産化を可能にしています。
ウェブトゥーンは物理的な形(紙)ではなく、デジタルならではの縦長のデータとして流通しますが、人気作品をコマ割によって紙の本のレイアウトに最適化して書籍化する、というパターンも現れています。
デジタル出版社・ファンギルドからも、昨年『ニューノーマル』(相原瑛人著)が初の紙コミックとして出版され、話題となりました。書店店頭でも大きく取り上げられ、「電子→紙」というコンテンツ流通が、「紙→電子」のケース同様に収益源となることを示しました。
▼『ニューノーマル』は最新3巻が7月19日(火)発売!
(写真は第1巻発売時の書店店頭の様子。写真協力:オリオン書房ノルテ店)
500年前に現在の形を得た「本」というメディア。「少年ジャンプ+」といったアプリからは、『SPY×FAMILY』『怪獣8号』といった紙のコミック市場をけん引する作品が生まれていますし、絶版本をデジタルで復刊するといったケースもあります。デバイスや発信方法が多様化しているいまは、コンテンツや表現方法がより豊かになっていく過渡期といえるのではないでしょうか。
・【試し読み】マスクの下の素顔は……お互いの顔を知らない“マスク時代”の物語『ニューノーマル』
・『ニューノーマル』という新鮮で普遍的な漫画について 著者・相原瑛人×書店員・池本美和