• fluct

  • 東日本大震災から10年に寄せて/【連載】3.11から10年「本を届ける人々」の道のりと思い

    2021年03月11日
    もっと見る
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
    Pocket

    2011年3月11日の東日本大震災から10年。未曾有の災害は多くの命を奪い、さまざまな傷跡を残しました。

    そんななかでも本を届け続けてきた人々は、いまどんな思いを抱いているのか。震災を乗り越え、被災地域のために尽力されてきた書店の皆さまのこれまでの道のりについて、ご寄稿をいただきました。

    今回お届けするのは、MEDIA PARK MIDORI桑野店 主任 岡田州平氏による寄稿「東日本大震災から10年に寄せて」です。

     

    東日本大震災から10年に寄せて

    東日本大震災の日、私は新規オープンを迎える福島南店の開店に向け、棚詰めの作業をしていました。日販様やCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)様も応援に来てくださって、順調に棚が商品で埋まっていく中、これからオープンする新しい店に思いをはせて、期待と希望が膨らんでいました。

    そんな中、大震災が起きました。地震はなかなかおさまらず、さらに激しい揺れが起こったためスタッフ全員が駐車場に避難しましたが、地面が波打つほどの地震はこれまで経験したことのないものでした。なんとか地震がおさまり店内に戻ってみると、これまで棚詰めした商品のほとんどが落ちています。その店内の光景を見た瞬間、期待と希望が絶望と脱力感に取って代わりました。

    ▲地震直後のMEDIA PARK MIDORI福島南店のようす(オープン準備中)

    それでも気を取り直して開店準備の作業に戻ろうとすると、今度は道路寸断、想定外の大津波と信じられないニュースが次々と飛び込んできます。応援に来てくださった日販の方も自宅に帰れず、やむなく布団もない店内で一夜を過ごしていただくことになりました。

    津波の被害はなかった福島市でしたが、ガソリン・食料の不足、水道などのライフラインは止まったままでした。そして、その後の原発事故という日本人の生活スタイルを一変させるような大惨事の中、1か月遅れでなんとか福島南店のオープンを迎えました。

    日本全体が悲しみと不安にくれる中、本当にお客様は来てくださるのかと不安を抱えたオープンでしたが、多くの方にご来店いただき、そこには書店としての日常の光景がありました。

    ▲オープン後の福島南店

    とりわけ福島県では放射能の影響が大きく、いろいろなニュース、うわさ、デマが氾濫していました。それでも書店で働いていると、自分の目で「見て」「調べて」「確かめて」これからを生きていこうとする人々の力強さを感じることができたのです。

    また、地震、津波、放射能の取材をしに、出版社、作家、新聞社などさまざまな方々がお店に来てくださり、お会いすることができました。未曾有の大惨事において、困難な状況を事実として書きとめ、ノンフィクションとして出版・報道してくださった出版社はじめマスコミのみなさん、ともすれば被害地域のみの出来事になりがちな内容を、普遍的な内容に置き換えてより多くの人々に伝わるよう創作してくださった作家さん。

    出版業界に携わる多くの方が、震災の事実をどう受け止めて復興につなげていくのか、そして教訓としてどう後世に伝えていくのかを真剣に考えて、人々に共感し、そして励まし、応援してくださったことに、マスコミの矜持を感じました。

    我々書店も、一冊一冊の本と、一人ひとりのお客様に向き合うことで、地域の人々のお役に立てればと思い営業してきたように思います。

    その後も豪雨災害や豪雪災害、コロナ禍による困難な状況が続いていますが、震災当時の記憶をたどることで今後の困難な状況にも対応していき、お客様の書店であり続けたいと改めて思った震災10年目でした。

     

    追記

    この原稿を書き終えたちょうど1週間後の2021年2月13日に、桑野店は再び震度6という福島県沖地震の災害に遭いました。当店は東日本大震災の時も天井が落ち、スプリンクラーが発動してしまうという甚大な被害に遭いましたが、今回もまた、棚の商品の6割強が落下したうえ、天井についている防炎ガラスが破損するという大きな損害を受けました。

    ▲福島県沖地震被災後の店内のようす

    しかしながら、営業時間内にもかかわらず、お客様、スタッフ共に負傷者はありませんでした。無事、避難誘導してくれたスタッフには本当に感謝しております。

    また翌日からは日販様、CCC様がお忙しい中、応援に来てくださり、復旧作業に当たってくれています。早番のスタッフだけでなく、普段は夕方から勤務の遅番スタッフも朝から出勤して復旧作業を行っています。

    桑野店は2月19日、いまも休業を余儀なくされていますが、常連のお客様からの励ましのお言葉もいただいております。10年前、多くの方のご支援、ご尽力のもと、桑野店は復興させていただきました。10年前の震災からの復興を経験したスタッフも多数在籍しています。多くの方のお力添えに感謝し、復興の先にお客様の笑顔があることを信じて、私たちは安全、安心を目指し、今日もまた復旧作業に取り組んでおります。

    (2021年2月18日)

    (「日販通信」2021年3月号【特別企画:東日本大震災10年に寄せて】より転載)

    ▼連載内容
    1.東日本大震災の影響と、出版業界の動き
    2.特別寄稿:東日本大震災10年に寄せて(「日販通信」2021年3月号より)
    ・日本出版販売 元・東北支店長(現・首都圏支社長)萬羽励一氏感謝と使命を再確認する日
    ・みなとや書店ブックボーイ大船渡店 代表取締役 佐藤勝也氏人と人との繋がりに支えられて10年
    ・MEDIA PARK MIDORI白河店 店長 鈴木郁夫氏震災から10年を振り返る
    ・MEDIA PARK MIDORI桑野店 主任 岡田州平氏東日本大震災から10年に寄せて
    3.東北で起きたこと、いまできること 思いを寄せる一冊




    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る