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  • 震災から10年を振り返る/【連載】3.11から10年「本を届ける人々」の道のりと思い

    2021年03月11日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    2011年3月11日の東日本大震災から10年。未曾有の災害は多くの命を奪い、さまざまな傷跡を残しました。

    そんななかでも本を届け続けてきた人々は、いまどんな思いを抱いているのか。震災を乗り越え、被災地域のために尽力されてきた書店の皆さまのこれまでの道のりについて、ご寄稿をいただきました。

    今回お届けするのは、MEDIA PARK MIDORI白河店 店長 鈴木郁夫氏による寄稿「震災から10年を振り返る」です。

     

    震災から10年を振り返る

    2011年3月11日。その日僕は、在籍していた桑野店のスタッフ3名と、福島南店へオープン準備のため向かいました。作業も順調に進み、「ああ、もう少しで休憩だなあ」と思っていた頃、店舗内にいたスタッフのあちらこちらから、緊急地震速報のけたたましい音が鳴り響いたのです。

    まさにその時(午後2時46分)、轟音とともに大きな揺れがあり、今陳列した商品のほとんどが棚から落ちてしまいました。今まで感じたことのない激しい揺れを感じ、どこからともなく聞こえた「全員外に出ろ」の声で駐車場に出た瞬間、猛吹雪と地面が波打つ光景に、「もう終わった」と思いました。

    しばらく強い余震が続きましたが、商品の落下以外はほとんど被害が確認されなかったため、社長の「手伝いのスタッフは、とりあえず自分の店舗に戻れ」の言葉で福島南店をあとにしました。帰路となる国道4号線は、大きな土砂崩れにより通行止め、それ以外の道路も大渋滞、携帯電話もつながらない中、何とか桑野店に到着しました。

    しかし直感で、何かが違うと感じたのです。店舗は閉まっていましたが、ガラス全部が湿気により曇っていて中が見えません。外観は何も変わっていないように見えたのですが、店舗内に入った瞬間、火災報知器が鳴り響きました。商品は当然落ちていましたが、什器が倒れ、天井も落ち、すべてが水浸しに。地震の影響で、スプリンクラーの本管が破裂して大量の水が降ってきたのでした。

    ▲震災時の桑野店は天井が落ち、什器が倒れるなど大きな被害を受けた

    幸いけが人もなく全員無事ということで安心しましたが、その時は桑野店の復興は無理かもしれないという思いが心をよぎりました。

    気を取り直して、翌日から「よ~し、復旧作業だ」と考えたものの、ガソリンがなく電気、水道、ガスも一部止まっている中での作業は無理と判断し、2週間ほど自宅待機としました。

    2週間後、新・桑野店のオープンに向け準備をスタートしたものの、商品の搬出、什器・がれきを撤去する日々が続きます。本当にオープンできるのだろうかと不安を抱えつつも作業は順調に進み、オープン日が決定。当日は、「いよいよ始まるぞ」と張り切る一方、本当にお客様は来てくれるのかなという不安もありました。

    ところがいざオープンすると、30分後には、駐車場が満車状態になったのです。お客様からも「やっとオープンしたね」「待っていたよ」との言葉をいただき、心が熱くなったことが、昨日のように思い出されます。

    ▲東日本大震災後、桑野店の再オープンを告知するポスター

    震災後の10年で、会社も店舗も世の中も、大きく変わりました。社名は、(株)中央図書から(株)MIDORIに変更になり、桑野店は再オープン時にネットカフェを閉店し、リサイクル、買い取り販売の「エコブックス」を導入。時代の流れで、文具・雑貨は全店で大きく展開しています。

    白河店では、増築して店舗内にファミリーマートを併設。また新規事業として、イオンタウン郡山店と桑野店には、別棟で「石窯ベーカリー いずみがもり」を出店するなど新たな試みも行っています。

    現在の僕は、白河店に転勤になり2年半が過ぎようとしています。この間に、ゾーニング変更や文具・雑貨の拡大を行い、売上も順調に推移してきました。これからも地域の皆様に愛される店づくりを心がけていきたいと思います。

    今一番心配なのは、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないことです。店舗でもマスク着用や消毒液、加湿器、空気清浄機の設置など対策はとっていますが、目に見えないウイルスは非常に怖いです。一日も早く、以前のように旅行に行ったり会食したり、自由に外出できるようになることを願っています。

    最後になりましたが、日販、CCC様をはじめ、取引業者皆様のご支援・ご協力のおかげで、新店の福島南店が震災1か月後の2011年4月に、そして新・桑野店が同年6月に無事オープンできましたことに、改めて感謝申し上げます。

    (「日販通信」2021年3月号【特別企画:東日本大震災10年に寄せて】より転載)

    ▼連載内容
    1.東日本大震災の影響と、出版業界の動き
    2.特別寄稿:東日本大震災10年に寄せて(「日販通信」2021年3月号より)
    ・日本出版販売 元・東北支店長(現・首都圏支社長)萬羽励一氏感謝と使命を再確認する日
    ・みなとや書店ブックボーイ大船渡店 代表取締役 佐藤勝也氏人と人との繋がりに支えられて10年
    ・MEDIA PARK MIDORI白河店 店長 鈴木郁夫氏震災から10年を振り返る
    ・MEDIA PARK MIDORI桑野店 主任 岡田州平氏東日本大震災から10年に寄せて
    3.東北で起きたこと、いまできること 思いを寄せる一冊




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