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「センテンス・スプリング」や「文春砲」など、今年の流行語大賞にノミネートされそうな用語がどんどん飛び出している昨今の週刊文春ブーム。この快進撃は、低迷している雑誌業界にどんな影響を与えているのでしょうか?
「週刊文春」が次々とスクープと完売号を出し始めたのは今年の初めのこと。そこで、昨年の11月12日号を基準として売上比を出してみました(日販 WIN+調べ)。
12月下旬発売の合併号は通常でも部数の大きい“売れる号”ですが、年明け以降1月・2月の発売号の読者が増加していることがはっきりと分かります。
もともと「週刊文春」は定期的に毎週購入している方が多い雑誌で、書店店頭での購入者の40%程度は毎週継続的に購入しています。では、話題になった号を新たに購入した読者はどんな人たちなのでしょうか。そこで、2015年11月12日号の読者と、2016年1月28日号の読者を比較し、1月28日号を新たに購入した方の読者層を比較してみました。
▼「週刊文春」2015年11月12日号を買った人の内訳
▼「週刊文春」2016年1月28日号を新規で買った人の内訳(増分のみ)
男性読者よりも女性読者、そして40代の伸びが顕著です。こうやって新規読者を獲得し続けていることで、読者平均年令の若返りが見えてきました。
さらに、この新規読者が購入した他の銘柄を見てみましょう。
RANK | 書名 | 出版社 |
1 | 「週刊新潮」 | 新潮社 |
2 | 「女性セブン」 | 小学館 |
3 | 「女性自身」 | 光文社 |
4 | 「週刊現代」 | 講談社 |
5 | 「週刊女性」 | 主婦と生活社 |
6 | 「週刊ポスト」 | 小学館 |
7 | 「きょうの料理」 | NHK出版 |
8 | 「女性自身」 | 光文社 |
9 | 「きょうの健康」 | NHK出版 |
10 | 「週刊現代」 | 講談社 |
見事なまでに定期雑誌が上位を占めました。WIN+のデータは書店でポイントカードを利用している読者の動向のため、そもそも定期的な書店来店があるようです。こういった方々はその時々で気になる週刊誌を選んで購入しているのかもしれません。
最も併読率が高かったのは「週刊新潮」ですが、「週刊文春」と「週刊新潮」は同じ曜日に発売されるということもあり、これまでも併読率が高い雑誌でした。30~40%程度の読者は両方の雑誌を購入しています。であれば、この「週刊文春」の快進撃は「週刊新潮」にも何らかの影響を与えているのでは……と考え、先ほどの「週刊文春」のグラフに、「週刊新潮」の動向を追加してみました。
▼赤が「週刊新潮」の売上推移。2015年11月12日号の売上を基準値としたもの
このように非常に似た動きを示していることが分かります。読者の併読本からも見えるとおり、「週刊文春」の好調は他誌にも大きな影響を及ぼしていそうです。
それでは、「週刊文春」読者が注目する最近の書籍をいくつか紹介しましょう。
日本の歴史がどれだけエッチな話しで溢れているのかをマジメに解き明かしていく1冊。日本史を学び直してみようというブームで「日本史を読み直す」というテーマの本が売れていますが、こちらは日本史好き以外にも注目され、売れています。ちなみに97%は男性読者でした。
老人ものの出版が相次いでいます。貧困・暴力・破産などなど暗くなるキーワードが並ぶ中で出てきたのがこの「シニア左翼」という言葉。SEALDsに始まり若い世代の政治参画意識に目が向きがちでしたが、反安保法制集会の参加者には60代・70代の姿が目立っていたのだそうです。彼らが今なぜ闘うのかを追った作品です。
発売されて間もないタイトルですが、売れ行き好調です。NHKスペシャル「シリーズ老人漂流社会」の書籍化。老後破産が引き起こす親子共倒れの悪夢を克明に描いたルポです。これからさらに話題になりそう。
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「週刊文春」などの週刊誌は知的好奇心の高い層に愛されてきました。書店に定期的に来店するきっかけにもなっており、この快進撃は書店の売上にも大きな影響を与えることになりそうです。まだまだ週刊誌全体の売上が前年比をクリアする結果までは見えてきませんが、若い層にもじわじわ読者を広げている姿が見えてきました。この勢いでさらに売上を伸ばしていってくれることを楽しみにしています。頑張れ週刊文春! 頑張れ週刊誌!
(「HONZ」で2016年4月12日に公開された記事に、一部編集を加えています)