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先日、恒例の上半期ベストセラーが発表されました(ランキングはこちら)。『鬼滅の刃』の勢いに目がいきがちですが、ビジネス書では『FACTFULNESS』が昨年1月の刊行ながらビジネス単行本部門の首位を獲得し、その人気を見せつけました。
『FACTFULNESS』は2019年1月発売の作品なので、「まだ売れているのか!」という感想を持った方も多いのではないでしょうか。売れ方を見たところ、面白いことが見えてきました。
下のグラフは、発売以降の日別売上です(日販 オープンネットワークWIN調べ)。
驚くべきことに、あれだけ売れている印象があったものの、日別の売上を見るとピークはなんとつい先日、5月22日(金)に到来しています。この日の売上は「あさイチ」(NHK総合)で大きな特集を組まれたことによるものでした。この勢いを見る限り、まだまだ売れることは間違いありません。
読者の男女比は6:4といったところ。50代のシェアが高くなっています(日販 WIN+調べ)。
なお、『FACTFULNESS』の読者分析は、実はこれが2回目です。発売直後から勢いよく売れていたので、発売1か月に満たない段階でデータを見ています。
そのときから読者層も大きく変わってきているので、ぜひ比べてみてください。
記事はこちら
〉発売20日で20万部突破!話題のビジネス書『ファクトフルネス』はどんな人が買っている?(2019.2.4)
読者が広がったことによって、併読本も、雑誌やコミックが上位にくるようになってきています。
それでは、『FACTFULNESS』を発売後すぐに購入した読者は、今どんな本を読んでいるのでしょうか? 『FACTFULNESS』を発売1か月以内に購入した読者が、2020年1月以降に購入したものを抽出してみました。
第1位『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(山本康正/講談社)
第2位『新実存主義』(マルクス・ガブリエル/岩波書店)
〃 『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』(日経コンピュータ/日経BP)
第4位『知的再武装60のヒント』(池上彰、佐藤優/文藝春秋)
〃 『世界哲学史(1)』(伊藤邦武/筑摩書房)
〃 『世界哲学史(2)』(伊藤邦武/筑摩書房)
第7位『ペスト』(アルベール・カミュ/新潮社)
〃 『21 Lessons』(ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社)
〃 『世界標準の経営理論』(入山章栄/ダイヤモンド社)
〃 『世界哲学史(3)』(伊藤邦武/筑摩書房)
〃 『Think Smart』(ロルフ・ドベリ/サンマーク出版)
ランキング上位には、新書が多く並びました。そのなかでも『新実存主義』や『世界哲学史』など、重厚なタイトルが多くランクインしてきています。ビジネスや思想、経済の分野に対して感度の高い読者の像が見えてきました。
また、4月以降に購入したものからは直近発売の新刊が減っており、古典や既刊本の購入履歴が増えているのも特徴的に思いました。コロナ禍において、新刊の情報取得や購入が困難だったことのあらわれかもしれません。
それでは最後に、併読本から気になったものをいくつか紹介していきます。
本当は、今年6月30日に答え合わせが行なわれるはずだった2012年の講義。それを待たずして、瀧本さんは帰らぬ人となりました。
8年経った今年は、歴史上の転換点となりそうです。今起きていることを目にしたら、瀧本さんはどんな講義をされたのでしょう。東大で行なわれた講義ですが、大人が読んでも心を揺さぶられるものになっています。
青山学院大学で話題の授業が本になりました。「カジノは合法なのに賭け麻雀が違法なのはなぜ?」という内容情報が目に入りついつい手にとってみましたが、「法律で縛られているはずの常識そのものを疑い考える」という内容は、とても興味深いものでした。
当たり前のことを当たり前にやりすごさないために、今こそ読んでおきたい一冊。
モノ消費からコト消費へ世界が大きく転換しています。現代世界において、資産は有形のモノからデータや知識といった無形のものに移ってきました。このパラダイム・シフトの本質はどこにあるのかを、世界の知性が読み解いた一冊。
データでファクトが示され、それぞれの分野の研究者がインタビューに答えるという形式なので、様々なテーマを俯瞰して見ることができます。データブックとしても活用できそう。
日本の建築様式などについての著書がある著者が、山岳建築について論じたもの。確かに、便利とはいいがたい山に分け入り、拝所を立てる日本人にとって、「柱を立てる」という行為はどんな意味を持っているのでしょうか。
建築と信仰の両面から、その行為を読み解いています。
もとになっているのはNHKの番組「独裁者ヒトラー 演説の魔力」。類いまれな演説力があったといわれるヒトラーの演説を直接聞いた人たちをドイツ各地に訪ね、貴重な証言をとっています。
世界中の指導者の演説やメッセージが話題になる一方で、日本国内では「言葉」を巡る痛ましい事件が後をたちません。「言葉」が注目を集める時代において、ヒトラーを知る人々から学ぶことは多そうです。
言葉や思想を巡る本が多く読まれていたことが非常に印象的でした。激動の時代に『FACTFULNESS』がこれだけ支持され読まれたことにも、大きな意味があるのかもしれません。
ファクトにもとづき、自分の頭で考えること。これを助けてくれる本はまだまだ店頭に溢れています。
※「HONZ」で2020年5月31日に公開された記事に、一部編集を加えています。