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4月7日の新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で、出版社の多くが業務体制の変更を余儀なくされている中、出版アナリストの湯浅創氏は4月2日から、これら出版社の営業状況をウェブサービス「note」で公開し始め、現在も情報を更新し続けている。
17日現在では出版社68社の営業概況をまとめており、それによると、確認できなかった6社を除く62社で、全従業員もしくは一部従業員を対象に在宅勤務を導入していることが分かった。
原則的に全従業員を在宅勤務としている社は半数近い32社に及んだ。一部従業員のケースでは、希望者や編集部のみを在宅勤務とする社や、輪番制・交代制で出社人数を制限している社などが28社。そのほか、在宅勤務を推奨するという社も2社あった。
在宅勤務の導入が進む中、多くの出版社では営業時間の短縮や時差出勤に取り組んでいるほか、全従業員の在宅勤務を強力に進めている出版社のうち14社が、社の固定電話を休止し、メールやファクス、携帯電話などでの対応に移行している。
ポプラ社では4月1日から5月1日まで、原則的に全従業員は在宅勤務となり、受注センターの電話・ファクスは停止(システム受注および入間物流センターは稼働)している。問い合わせなどはホームページ(HP)上のウェブフォームから受け付けているほか、各従業員の携帯電話やメールでも個別対応している。
ベレ出版では4月17日までの全従業員の在宅勤務を24日にまで再延長。期間中の問い合わせはHP内の「お問い合わせ」フォームから受け付けている。書籍の注文など書店には、【FAX:0120-15-4795】【メール:sales-section@beret.co.jp】で対応。さらに、各担当者への連絡については、メールや携帯電話での使用を呼びかけている。
河出書房新社は5月6日までは全従業員が在宅勤務。営業部の代表電話は終日不通となっているため、「書店様用メールアドレス」をホームページで案内。注文については「書店様専用受注サイトWINB」の利用を呼びかけているほか、【書店様用FAX:03-3404-6386/03-3404-0338】も用意し、対応している。
営業時間の短縮については、西東社は電話受注を午前10時~午後4時、筑摩書房は電話受付を午前11時~午後3時、平凡社は月・水・金曜日の午前11時~午後3時などとしているケースが多くみられる。
湯浅氏は4月2日、出版社のHPやツイッター、フェイスブックといったSNSを利用して、各社の営業体制の変更情報を収集し、公開。同時に、出版社には情報提供を呼びかけている。
湯浅氏は情報収集した出版社の対応について、「勤務状況は各社それぞれ。編集部門のテレワークが進むことは前提とし、コンテンツがデータ中心となっていけば、当然、営業部門、管理部門も1か所に集まる必要性は薄くなる。書店営業においてもデータを自宅で閲覧し、受注の倉庫への伝達も自宅から、ということになる。しかし、伝票のやり取りなどについては、機密性が高い事項が多く、セキュリティの観点から『会社』で処理する必要が残りそうだ」と指摘する。
さらに、今回の在宅勤務による出版社の働き方改革の可能性については、「古い業界であり、一社当たりの規模が小さい会社が多いので遅くなることも考えられるが、早めに切り替えられたところほど今後飛躍する可能性があるのではないか」と見ている。
湯浅創氏プロフィール
1974年東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程後期単位取得退学後、出版社勤務。書籍編集、電子書籍担当、製作担当を経て、2012年から営業に。商圏調査に基づく形で、個々の書店の棚作りを提案する、ネットと「足」を両立させたデータマニア。2018年より文化通信B.B.Bにて「書店再生への道」連載中。