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皆さんは“美人病”をご存じですか?
その正体は、“バセドウ病”という病気。
首元にある内分泌器官の甲状腺が腫れあがり、甲状腺ホルモンが過剰に作られ新陳代謝が盛んになる病気です。
痩せたり、目が大きくなったように見えたりすることから“美人病”とも呼ばれています。芸能人だと歌手の絢香さんが発病を公表したことにより、世の中にその存在が知れわたりました。
今回ご紹介する『あたい、美人病になりました!』は、実際にバセドウ病を発症した漫画家・いさやまもとこさんの闘病生活が描かれた実体験コミックです。
いさやまさんは、登山とクラッシックバレエを趣味としていたため、腕や足にしっかりと筋肉がついた“筋肉デブおばさん”でした。
そんな体形を変えるべく、49歳にして減量を決意。新聞配達のアルバイトを始めるなど人生初の減量作戦を決行し、6か月後には目標であった5キロ減を見事に達成します。
しかし、問題はここから始まりました。アルバイトや食事制限をやめたにも関わらず、どんどん体重が落ちていき、さらに4キロも減る状態に。周囲からの声でようやく体の異変に気づくことになります。
そんななか鏡で首元を見てみると……明らかに甲状腺のあたりが腫れているのを確認。すぐにバセドウ病を疑い、病院で受診をします。
すると、血液検査の数値や手足の震え、まぶたの腫れなどの症状から、予想通り「ほぼ9割、バセドウ病」という診断が下りました。ダイエット後に体重が減少していったのも、実は病気が原因だったのです。
この日から、いさやまさんとバセドウ病との闘いが始まります。
バセドウ病の症状は体重低下や手足の震え、眼球突出のほか、動悸やめまい、さらには集中力の低下や疲労など多岐にわたるため、いさやまさんは次々に新しい症状と格闘しなければなりませんでした。
なかでも、バセドウ病の薬が効きすぎることで逆に甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」(“橋本病”ともいわれる)が発症した際は、精神面への影響が大きく、「疑似うつ」に苦しむことになります。
甲状腺機能低下症や橋本病は症状が重くなると
うつ病や認知症と間違えられる病気でもあります肉体と精神活動の低下によって消失する感情
不安も恐怖も感じなくなり喜びも悲しみも感じなくなり
唯ぼんやりと霧の中にいるようでした(本書p.106より引用)
「なぜ生きているか」もわからなくなり、自殺した文豪・芥川龍之介に連れて行かれそうになる場面も……。
そんな深刻な状況だったにもかかわらず、バセドウ病になったことを「ネタ」として捉え漫画として表現するいさやまさん。バセドウ病がどんな病気なのかを、アグレッシブな言葉や表情豊かなキャラクターを通して教えてくれます。
よい意味でも 悪い意味でも 人は慣れて 順応します
ショックを受けて 大騒ぎして 言いふらしながら 仲間をつくって
辛い治療をしていくなかで だんだんと病気が
心とからだに馴染んでいきます
馴染むまでには 不安・恐怖・苛立ち・落ち込み・諦め・負の感情が
せわしなく わき起こります
感情を噴出させるのに飽きるのか?疲れるのか?
いつのまにか慣れて落ちつきます
不治の病と知って ショックは一瞬(約1年間)
病気の現実は一生ですもん(本書p.35より引用)
様々な症状に襲われ、一時は「疑似うつ」にまでなったいさやまさんが、どのようにしてバセドウ病と向き合っていくのかが、本書には丁寧に描かれています。
バセドウ病について知見を深めることができるのはもちろん、「人生これすべてネタ」といういさやまさんの姿勢にも勇気づけられる一冊です。
気になった方はぜひ書店で手に取ってみてくださいね!