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  • 2022年年間ベストセラー第1位『80歳の壁』和田秀樹さんインタビュー

    2022年12月01日
    くらす
    ほんのひきだし編集部 猪越
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    『80歳の壁』(幻冬舎新書)が2022年年間ベストセラー総合第1位(日販調べ)に輝いた和田秀樹さん。昨年6月に発売された『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)も同第8位にランクインしています。

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    どちらも高齢者専門の精神科医として長きにわたり、6,000人以上の診療に携わってきた和田さんの知識と経験がふんだんに盛り込まれており、多くの読者の支持を集めています。そんなベストセラー2作に込めた思いについて、和田さんにお話を伺いました。

    和田秀樹
    わだ・ひでき。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『老いの品格』(PHP新書)、『マスクを外す日のために』『70歳の正解』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。

     

    生活の質を維持することが老化を遅らせるカギ!

    ――和田さんはこれまでもご専門の老年医学の見識を活かした本を数多く執筆されていますが、タイトルに80歳と謳われているのは『80歳の壁』が初めてですね。

    和田 私の中には「団塊の世代」(昭和22~24年生まれ)の人たちは、非常に読書家であるという実感があります。

    大学を卒業した後に私が勤めたのがいわゆる赤レンガ病棟(東大病院精神神経科病棟)という曰くつきの病棟で、すでに学生運動はほぼ沈静化していたものの、新左翼の闘争家が多く関わっていました。私は新左翼ではなかったのでどうにも合わなかったのですが、そのときの実感として、全共闘世代は膨大な量の本を読んで議論をする人たちだということは感じていたのです。

    だからこそ、現在75歳前後の団塊の世代を本を書くときのターゲットとして意識してきたのですが、出版社の人たちにはそういった本は売れないとずっと言われ続けてきました。しかし、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)という本を出したら7万部のヒットとなった。

    そこで老化予防の本を出そうという話になったときに、『70歳が老化の分かれ道』という「70歳」を入れたタイトルにしたのです。同書が70代の方たちに受け入れていただいたことで、幻冬舎の担当編集者に「じゃあ次は80歳の方に向けて出しましょう」と提案されて書いたのが『80歳の壁』になります。

    80歳の壁
    著者:和田秀樹(心理・教育評論家)
    発売日:2022年03月
    発行所:幻冬舎
    価格:990円(税込)
    ISBNコード:9784344986527

    人生100年時代だが、健康寿命の平均は男性72歳、女性75歳。80歳を目前に寝たきりや要介護になる人は多い。「80歳の壁」は高く厚いが、壁を超える最強の方法がある。それは、嫌なことを我慢せず、好きなことだけすること。「食べたいものを食べる」「血圧・血糖値は下げなくていい」「ガンは切らない」「おむつを味方にする」「ボケることは怖くない」等々、思わず膝を打つヒントが満載。70代とはまるで違って、一つ一つの選択が命に直結する80歳からの人生。ラクして壁を超えて寿命を伸ばす「正解」を教えます!

    〈幻冬舎 公式サイト『80歳の壁』より〉


    ――『70歳が老化の分かれ道』は、この世代ならではの生活や心身の整え方が書かれた実用的な内容です。一方『80歳の壁』は、その壁を超える具体的な方法を示しながら、幸せな晩年を迎えるためにどういう選択をするかという、より生き方に重きを置いた一冊になっています。

    和田 80歳からの人生には、70代とはまた違う「生老病死」の壁が押し寄せます。できなくなってきたことは素直に受け入れながら、できることを大事にする。耳が遠くなれば補聴器を、排泄機能に不安を感じたらおむつを、歩行が困難になってきたら杖を持つなど、使えるものはどんどん活用して生活の質を維持することが大切なのです。

    ――どちらの本でも日々の過ごし方がその後の老いを決めること、また老いを遅らせる生活のヒントについても書かれています。特に、昨今のコロナ禍ではフレイル(加齢に伴う心身の衰えた状態)が加速してしまうことへの対応も課題ですね。

    和田 『80歳の壁』や『70歳が老化の分かれ道』が多くの方に支持していただいたポイントとして、どちらも「運転免許は返納してはいけない」と書いたことがあると思います。

    車のほかに移動手段のない土地に暮らしている人は、運転をやめることで、行動範囲が極端に狭まってしまう。そうすると、家に閉じこもりがちになり、心身ともにいい影響を与えません。高齢者が免許を返すと、その6年後の要介護率が2倍にもなってしまうというデータもあります。

    コロナ禍の外出自粛にしても、人との接触を控え、出歩かなくなると当然のように老化が進むということはみなさんが実感されています。

    どちらも行動が制限されるという感覚的に似ているところがあって、家に閉じこもることで体が弱ってしまう。それがいかに怖いことかということが、高齢者の人たちにご理解いただけたのだと思います。

    70歳が老化の分かれ道
    著者:和田秀樹(心理・教育評論家)
    発売日:2021年06月
    発行所:詩想社
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784908170317

    老いを遅らせる70代の生き方とはいかなるものか。
    日々の生活習慣から、医療とのかかわり方、健康管理についてなど、自立した晩年をもたらす70代の健康術を老年医学の専門家が説く。

    【目次】
    第1章 健康長寿のカギは「70代」にある
    第2章 老いを遅らせる70代の生活
    第3章 知らないと寿命を縮める70代の医療とのつき合い方
    第4章 退職、介護、死別、うつ……「70代の危機」を乗り越える

    〈詩想社 公式サイト『70歳が老化の分かれ道』より〉

     

    自身の経験をもとにラクして楽しく生きる知恵を伝授

    ――2冊をはじめ和田さんのご著書では、我慢や無理をせず、新しいこと、好きなことをして楽しく過ごそうという前向きな発信も一貫しています。

    和田 私はこれまでずっと、「高齢者はアクティブに生きたほうが老化は遅らせられるよ」というメッセージを本の中に込めてきました。『80歳の壁』がベスト1になったといってもまだ50万部です。日本の65歳以上の高齢者人口は3,600万人を超えていますから、その1割くらいの人に届かないと変化を促すには至らないと思いますが、少なくとも老いを遠ざけて若々しく生きようとする人たちには共感していただけたという自負を持っています。

    高齢化は負の側面ばかりが言われがちですが、これから中国や韓国、ヨーロッパも高齢化が進んでいきます。そのときに、日本が高齢者向けの商品なりサービスなりで先行していけば、世界の見本になれるのではないでしょうか。

    ITの時代は機器の使い方を覚える必要があるので高齢者が置いてきぼりにされてきましたが、AIの時代になると、高齢者の役割はもっと大きくなるはすです。朝、「鍵が見つからないから探してくれ」といえば、AIが「昨日の何時何分にあなたはここに鍵を置きました」と教えてくれるようになるかもしれません。

    これからの時代はドラえもんのように何でも供給できる人よりも、のび太のようにおもしろいリクエストをする人のほうが主役になるのではないでしょうか。高齢者の要求水準が高ければ、そのニーズに応えることでいろいろなものが生み出されて、日本の競争力が高まっていく。そんなふうに高齢者を強い味方として世の中が変わっていってほしいし、高齢者が生きやすい社会になってほしいと思います。

    ――『80歳の壁』の購買者層を見ると70~80代が70%を占めますが、40~60代も25%を占めています。老いは万人に訪れますから、老親のために手に取るのはもちろん、自分事として読むこともできそうです。

    和田 『70歳が老化の分かれ道』も含め、50~60代の人たちにも自分の将来を考える上での指標にしていただけているようです。

    私もまだ62歳なので偉そうなことは言えないのですが、誰にとっても「老い」は1年先はおろか、1日先のことだって経験したことのない世界なわけです。いつまで今のように生活できるのか、いつ何時、急に衰えてしまうのかもわからない。そういった意味では、これまで6,000人以上の高齢者を診てきた経験から、「年を取るということがどういうことなのか」を準備的な知識としてお伝えできるのが私の強みかもしれません。

    80代くらいの人は子どもの数はいまの子育て世代に比べれば多いけれど、都市部に出て行ってしまって地元には子どもが残っていないというケースも多い。一方で、親も子どもも東京がベースで、親の老いを身近に感じている人も一定数います。だからこそ50~60代の人に向けた、「老いのガイドブック」のような本もあるべきなのだろうなと。そういった意味では、自分で言うのもなんですが、わりと親切な本になっていると思います。

    ――高齢になるとどうしても病院通いが増えますが、医療とのつき合い方についてもページを割いていらっしゃいますね。

    和田 私は40代半ばから高血圧を放っておいたツケで心肥大になり、仕方なしに血圧の薬を飲み始めましたが、血圧を正常値まで下げたら頭がフラフラして仕事にならない。どのくらいだったら頭がシャキッとするのかなと試したら、170くらいがちょうどよかった。

    そうやってその時々で、自分の体をどうコントロールしていこうかと考えるわけです。それをほかの人に押し付ける気はないですが、私は病気のデパートみたいな人間であるがゆえに、自分を使って人体実験をしているところがあります。血圧も血糖値も高めでいいと本にも書いていますが、それも自分自身の経験から見えてきたことです。

    一つ一つ病気を突きつけられたときに自分ならどうするか、自分ならどう生きるかということを、若さと元気さを最優先に考えながら生きてきました。そのことが本の中にも活きていると思いますね。

    ――最後に、ご自身の本が今年もっとも読まれた本となったことについてのご感想と、今後についてお聞かせください。

    和田 『70歳が老化の分かれ道』が売れ始めると、読んで納得いただけたからこそだと思うのですが、「友だちに薦めました」「10冊買ってみんなに配りました」という声を多くいただきました。有益な情報を共有しようという動きが生まれたときに、その中核になるのはやはり本だということが、救いのように感じられました。

    超高齢社会を迎えると言われながら、世の中がまったく変わっていないという状況を感じています。免許の返納や、外出自粛についても世代間で軋轢が起きていますが、本を起点に高齢者が遠慮しなくていい社会に変えていくきっかけづくりができればと思っています。2冊がベストセラーとなったこともあり、今年はかなりの冊数の高齢者向けの本を出すことになりましたが、今後も体力の続く限り書き続けていきたいと思います。

     

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