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  • 「良い子」ほど危ない。子どものSOSをキャッチして自己肯定感を育むには

    2020年08月06日
    くらす
    田中香織:講談社BOOK倶楽部
    Pocket

    空気を読みすぎる子どもたち
    著者:古荘純一
    発売日:2020年06月
    発行所:講談社
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784065201268

    ふだん当たり前のように「空気を読む」というけれど、考えてみれば不思議な言葉だ。たとえば「人間」という生物にとって、「空気」はあくまで「吸う」ものである。読める要素など何もない。でも、ここ日本では、いつしか「空気」といえば「読む」ものとなってきた。

    その行為を表してみると、「他人の表情や言動からその望むところを推測して理解し、自らのそれへと反映させる」といったところだろうか。大人であれば、組織や集団の中で当たり前に必要とされる「技」ともいえよう。そんな大人たちの背中を見て育っていく子どもたちにとっても、「空気を読む」ということが当たり前に求められ、その過剰さに翻弄されることがあるとしたら──。

    本書の主眼は、「空気を読みすぎている」子どもにある。彼/彼女らが、どういう状況下にあるのか。なぜ「空気を読もう」とするのか。1章ではいくつかの具体例にはじまり、学校や家庭など、子どもが暮らす場所ごとに、考えうるケースが挙げられていく。またその原因と理由についての解説は、続く2章で多角的に探られていく。ここで真っ先に取り上げられていたのが、「自己肯定感の低さ」である。

    この解説で、「自己肯定感は乳幼児のうちから育ち、5歳ごろには認識」できることを、初めて知った。過去の自分を思い返してみれば、4~5歳くらいでほめられて嬉しかった記憶や、友達と比較されて悲しかった思い出が何となく残っている。だが自己肯定感自体、そういった記憶が残る以前から育つものだったとは。そして、さらに驚いたのが次の一節。

    自己肯定感についての調査があります。その結果をみると、年齢によって下がっていく傾向と、日本の子どもたちの自己肯定感の低さがわかります。

    てっきり、成長すればそれなりに上がっていくものかと思っていた。まさか、下がっていくなんて……! ボタンの掛け違いのように、一度どこかでずれたまま進んでしまうと、その方向性を自分の力だけで変えることは難しいということだろうか。ならば、周囲の理解や支えが重要となるのも頷ける。

    次の3章では子どもが発する「つらい気持ち」の表れ方について、また4章ではその先にある病気の可能性についても触れられている。すべての感情を言葉にすることは、大人でも難しい。ましてや、語彙力が発展途上の子どもであれば、なおのこと。言葉にならない言葉を読み解き、受け止めるために、大人があらかじめ知っておくべきサインや、大人自身の自尊感情をチェックする方法なども示されている。

    そして5章では、「大人が心がけたい八つのこと」というタイトルで、子どもの「自己肯定感」を高めるための大人の言動が、より具体的に提示されている。上手な見守り方や叱り方には、ちょっとしたコツがある。その技術を知識として知るだけでも、変化は起こっていくだろう。なにより、それらは「今日から始められること」ばかり。知っておいて損はない。

    また、子どもだけではなく大人にとっての「自己肯定感」の大切さも説かれていたことは、新鮮だった。「自分や周囲の誰かをきちんとほめること」は、子どもを肯定し、「ほめる」技術をアップさせるための近道なのだ。

    テーマとしては重い部分を含みつつも、全体に使用されたイラストはかわいらしく、視覚的にもわかりやすい。専門の教育書ほど硬くもないため、肩に力を入れることなく読み始めることができるはず。子どもの言動が気になった時や自身を振り返りたくなった時には、ぜひ本書を開いてみてほしい。

    (レビュアー:田中香織)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2020年7月13日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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