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イスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ。彼ほど巨視的に人類史を見通せる人物もそういないのではないでしょうか。
ベストセラーとなった『サピエンス全史』では人類の過去を、『ホモ・デウス』では、その未来を描いてみせました。
ハラリが3冊目に取り上げたのは現在。11月20日(水)に発売される『21 Lessons』では、21の論点から人類の“今”を問い直します。
『21 Lessons』では、5つの大きな枠組みと21個の問題が論じられています。
あらすじ
Ⅰ テクノロジー面の難題(幻滅、雇用、自由、平等)
Ⅱ 政治面の難題(コミュニティ、文明、ナショナリズム、宗教、移民)
Ⅲ 絶望と希望(テロ、戦争、謙虚さ、神、世俗主義)
Ⅳ 真実(無知、正義、ポスト・トゥルース、SF)
Ⅴ レジリエンス(教育、意味、瞑想)
諸問題はあらゆる面で絡まり合い、個人の理解をはるかに超えた複雑な問題を形成しています。こうした難問を解くための鍵はどこにあるのでしょうか。
ハラリは、現代人に課せられた最も重要な道徳的義務は“知ること”だと言います。
「私たちはグローバル社会を生きている」とは言うものの、その実感をもつことは容易ではありません。たとえば、地球の裏側の貧困問題や地球温暖化について、ニュースで流れる情報以外何も知らない人がほとんどではないでしょうか。
自分とは関係のない問題と思っていても、どこかで繋がり、自分自身の問題へと返ってきます。世界で起こっていることを“知らない”という立場にいてもよいことはありません。
歴史学者の立場からハラリは、さまざまな問題に対する「明確さ」を本書を通して提供します。明確な情報を得ることで、難しい問題にも公平に取り組めるからです。ハラリの投げかける21個の問題を読む中で、他人事だと思う箇所があったならば、その問題に関する無知を自覚するよいきっかけになるでしょう。
一方で、自分の無知を認める謙虚さが必要であることもハラリは認めています。
知識への信頼は、時に傲慢さに繋がります。本書には、そのような傲慢な態度が異端審問や強制収容所を生み出したという人類史の悲惨さに精通した、歴史学者ならではの警告も含まれています。
繰り返しになりますが、困難な時代に大切なことはまず“知ること”です。一人ひとりが考え、協力し、公平に意見を交わすことが重要です。その先に彼は『ホモ・デウス』につながる、サピエンスの幸福な未来を見据えています。
本書に書かれた問題すべてに、ハラリが答えを与えてくれるわけではありません。ただ、今を考えるためのヒントが散りばめられ、読者を待ち構えています。今を知る、自分を知る、そして世界を知ることに少しでも興味があるならば、本書は最も優れたガイドとなってくれるでしょう。