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  • ちょっとのお金と知恵で老後破産を回避する!人生100年時代の『定年破産絶対回避マニュアル』

    2019年08月18日
    知る・学ぶ
    ほんのひきだし編集部
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    定年破産絶対回避マニュアル
    著者:加谷珪一
    発売日:2019年03月
    発行所:講談社
    価格:929円(税込)
    ISBNコード:9784065154090

    「寿命100年時代」の日本のすぐ裏側にひそんでいるのが「定年(老後)破産」というものです。それに足をすくわれないためになにをすべきか、ていねいに解き明かした1冊です。でも書店にあまたある投資のススメ本とはひと味もふた味も違っています。この本はよくある「投資のススメ本」ではなく「自己救済本」とでもいうものになっています。明日から、いえ今日からできる実践法です。
     

    投資は長期を行う「胆力」が勝負

    著者が奨める投資の原則はシンプルです。
    1.リスクを分散
    2.余分な費用を払わない

    なんだ、あたりまえじゃないかと思われる人もいるかもしれません。でもこれをとことん持続的に続けることが破産を避ける王道です。

    たとえば「リスクを分散」という点では、まず「長期投資」を考えることです。

    投資理論におけるリスクという概念は、1年間のうちに株価が上下変動する幅のことを示している。(略)基本的に株価は毎年6%ずつ上昇するものの、毎年25%のブレがあるという意味だ。

    6%上昇というのは著者が過去50年の日本の株価変動から導き出したもので、計算によれば日本株の「平均のリスクは±25%程度」になります。一例として3000万円の資金を30年間貯蓄だけ続けた場合と6%利回りの投資を続けた場合との結果があげられています。

    約3分の1の人が億近い資産を作り、3分の1の人は、そこまではいかないが貯金するよりも資産を増やしている。そして残りの3分の1の人は、残念ながら貯金するよりも金額を減らしてしまっている。

    この長期投資に対する大きな不安はバブルとその崩壊でしょう。ですが、バブル崩壊もある指標に着目すると「かなりの確率でバブル崩壊を察知することが可能」になります。

    多くの場合、金融機関による総融資残高がGDP(国内総生産)に対して一定倍率を超えるとバブルは崩壊することが多い。(略)
    国によって細かい条件は異なるが、総融資残高がGDPの1.6倍から1.8倍になるとバブル崩壊の可能性が高まってくると考えればよい。

    この指標で見るとアメリカも日本もともに「1.4倍」なので差し迫ったリスクはみられません。こういう判断をするためにも公正な統計の数値が極めて重要だということがわかります。

    また株式の購入では「つみたてNISA」を利用することを忘れないようにしましょう。「非課税となる範囲」が広く、「余分な費用を払わない」ためにも心がけましょう。

    国内株だけでなく、「リスク分散」の意味では「外国株(米国株)」への投資することも奨めています。ここで気をつけなければならないのは証券会社が扱っている外国株の種類と手数料です。取り扱っている外国銘柄の種類だけでなく、そのこともじっくり調べることを忘れないように。

    ともあれこういった姿勢で「長期投資」を行うこと、これが老後破産を回避できる大きな手段です。
     

    年金制度をあてにしない

    「100年安心年金は破綻した」という見解を認めない政府ですが、年金のマクロ経済スライド制の導入は「100年安心」の事実上の破綻を示しています。

    マクロ経済スライド制とは人口動態の変化に合わせて、年金の給付を変動させるための制度である。現役世代の比率が下がった分だけ、高齢者の年金を減らすということであり、この制度はズバリ、年金給付の抑制を目的としている。(略)
    厳しく見る専門家からは、3割以上の減額が必要との試算も出ているので、今後は、年金財政の維持を目的として、2~3割程度、段階的に年金給付の減額が進むと考えた方がよいだろう。

    年金は少しも「安心」を与えてくれません。「制度」として年金という名前が残るだけです。支給開始年齢の引き上げも、増額措置をこうじると政府はいいますが「マクロ経済スライド制による年金減額が発動された場合には、結果として増額分は相殺されてしまう」ことにもなります。

    日本の公的年金は、その仕組み上、破綻することはないが、高齢化が進んだり、経済成長が鈍化すれば、実質的に制度が機能しなくなるリスクを抱えている、というのが正しい認識である。

    やってはいけないのは年金を中心とした生活設計です。ですから将来もらえるであろう年金額を調べ(ねんきんネットを使う)、受けとる額を知っておくことから始めましょう。受け取り可能な額を知ることから生活設計をしなければなりません。
     

    不動産のリスクを考える

    人口動態の影響があるのはマクロスライド制の年金だけではありません。不動産も(近年は”負動産”と呼んだほうがいいものも増えていますが)同様です。地価上昇がニュースになっていますが、それも人口動態を考える必要があります。

    日本全体としては人口減少が進んでおり、それを反映して不動産価格は下落の一途だが、東京だけは別格で、人口が増え続けている。(略)おそらく地方中核都市でも同じ現象が発生しているはずだ。利便性を重視して、郊外から中心部に移り住む人が増え、全体として不動産価格は下落しているものの、中心部の物件だけは値上がりしている可能性が高い。

    心しなければならないのは「土地神話」はもう崩れているということです。地価高騰を続けている東京ですら著者は次のような予測もあり得るとしています。

    日本全体の人口が減っている以上、やがては地方から移動する人もいなくなってしまうので、東京も2025年を境に人口減少に転じることになる。2025年以降の状況を市場が織り込み始めた場合、東京の不動産価格も頭打ちになるか、場合によっては下落に転じることになるだろう。

    そのような状況の中では、なにより不動産は「収益性」を中心として考えるべきです。収益性を考えるとは、徹底的に投資という視点で不動産を見るということです。

    不動産の値上がり益や賃貸に出して得られる収益が取得コストを大きく上回れば成功、下回れば失敗である。(略)自分で住んだ場合、家賃を払わなくてもよいので、浮いた家賃分は仮想的な収入と見なすことができる。この金額と取得金額を比較することで、最終的な投資損益を判断する。

    一般的に不動産はインフレ基調ならば買いといわれています。もし政府(日銀)目標の2%のインフレ率が達成された場合どうなるのか……、

    20年経過すると物価は1.5倍になるので、現金をそのまま保有していると、同じ金額で買えるモノの量は3分の2に減ってしまう。このためインフレが進んでいる時は、不動産など価値が維持できるものに資金をシフトするという動きが活発になる。

    だからといって不動産投資をしてインフレ歓迎する、というような早計な判断をしてはなりません。「余分な費用」といっては語弊がありますが、インフレには「金利上昇」が伴うからです。

    物価が上昇する時には金利も上がっており、住宅ローンの総支払額も増えてしまう。というよりもむしろ、金利の上昇が物価上昇を引き起こす可能性があり、不動産価格が上昇する前にすでに金利が上がってしまう可能性があるのだ。

    インフレ期待の日本では、不動産物件の優良さはこの「金利」を含めて考えなければなりません。ではどのようなローンを組むべきか。固定金利か変動金利かあるいは一定期間が固定の固定期間選択型か……。著者によれば最後の固定期間選択型が最もリスクが高くなるそうです。このあたりのローン選択については95ページ以下に詳述されています。
     

    「貧困・病気・孤独」の3大不安に備えて

    年金制度の不備だけでなく、税と社会保障の一体改革も反故同然、消費税がアップされても老後の3大不安、「貧困・病気・孤独」がなくなるとは思えません。そして誰もが直面するようになった介護はというと……。

    たいていの場合、介護は突然にやってくるので、予備知識をもたないまま介護生活に突入し、場合によっては過剰出費と老後貧乏を招いてしまう。

    介護制度があるとはいえやはり不完全な制度である以上、年金制度と同様に、できるだけ正確な知識が必須です。介護破産にならないためには現状の支出がどのくらいなのかをつかんでおきましょう。

    介護費用の平均月額は7.9万円。(要介護1:5万6000円。要介護2:6万4000円。要介護3:11万2000円)

    特養など施設に入った場合には、金額はさらに上がり、要介護5では14万円程度の支出が必要となる。(これに諸経費が加わることが多い)

    不動産に2025年問題があるように介護でも2025年問題があります。この時期に団塊の世代が後期高齢者となり、要介護者が急増します。ところが介護要員はこのままでは「約38万人不足」するという数字がでています。

    さらに現在、「年間10万人程度」が介護離職をしているという数字があります。ですが介護の支出等を考えた場合、著者は介護に直面してもできる限り「介護離職を避ける」ようにと提案しています。もちろん、それが可能になる制度・社会設計がなにより必要です。

    病気に大きく関係するものが保険です。保険を考える原則は1つ、「できるだけシンプルなものを選ぶ」ということです。

    保険がさまざまな顔を持っているということは、それだけ評価が難しいということを意味している。これは保険に限った話ではないが、投資や金融の世界において、複雑で多機能なことは、基本的に良くないことだと思ってよい。

    公的医療制度が実は年金制度以上に厳しい状況になっています。ですから「患者負担の大幅な増加」となる可能性があります。医療保険は必要でしょう。ですが複雑な保障内容が必ずしも必要とはいえません。そこが保険を考える上で肝心なことなのです。
     

    準備は早い時期から

    公的年金の支給開始年齢の引き上げが予想されるなど、日本の将来は決して安心できるものではありません。制度はできているとはいえ足りないところが多々みられます。ですから制度があるということに安心せず正しい知識を持つことを心がけましょう。

    定年破産を回避し、寿命100年時代を上手に乗り切る最良の方法は、「一定の経済力を確保すること」と「制度をよく知ること」の2つだと思っている。

    大事なのは老後にいくら必要なのかではなく、現役時代にどの程度の支出になっているかである。

    「一億総活躍社会」、「生涯労働社会」とはいっても、必ずしも「生涯年収」が増えるわけではありません。この本は、迫りくる厳しい未来のもとで自分が「3大不安」に陥らないための絶好の教科書です。新しい価値観を模索する時代になっています。ぜひ、じっくり読んでください。

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    (レビュアー:野中幸宏)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2019年4月13日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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