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  • 夢眠書店開店日記 第8話:「ブック・コーディネーター」という仕事③

    2016年01月23日
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    アイドルBOOKS
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    ミーハーに本を楽しんでもいいじゃない

    ―夢眠書店は、どんな本屋さんにしていったらいいでしょうか?

    夢眠:私としては、昔みたいに「本を読むことってかっこいい」と思われたいんです。今もかっこいいのかもしれないですけど……、「偉いね」って褒められるのとは違う風にしたいというか、もっと自然で日常でありつつ、「ちゃんと本を読める人っていいなあ」という感じを増やしたいです。

    内沼:それなら「本を読む人ってかっこいい」と夢眠さんが言い続けるのがいいんじゃないですか?

    夢眠:そっか! でも私が言い続ける以外にも、男の子向けの雑誌を見ていても本のコーナーは根強くあるし、たとえば「BRUTUS」で本の特集をやれば皆買う気がするんですよ。

    夢眠:あとは、ミーハーでもいいからもっと本を読んでほしい。私は文豪がかっこよくて好きなので、「文豪かっこいいイベント」みたいなものをやりたいです。それで文豪にキャーキャー言うイベント(笑)。「文豪が食べていたどら焼きを本と一緒に出して、文豪感を味わう」というのもいいかなと思っています。「アイドルが食べているケーキをファンが買いに行く」というのと同じような感覚を文豪に対してすごく持っているので、そういう憧れを突いていきたいです。文豪フォロワーは、絶対いっぱいいると思います。

    内沼:いるんですかね(笑)?

    夢眠:いますよー! 私は森鴎外が泊まった旅館に泊まりたいです(笑)。

    内沼:そういう人が増えればいいですよね。

    夢眠:芸能人にキャーって言うような感じで「作家ってかっこいいんだぞ!」と発信したいですね。スター性も見てほしいです。

    内沼:作家シリーズのブロマイドを作って売るのはどうですか?

    03_ねむ・ほんのひきだし-5th_431sc

    夢眠:絶対買う! めっちゃかっこいい! せっかくだからマルベル堂さんとコラボして……最初は芥川龍之介がバカ売れ、みたいな(笑)。

    内沼:現代の作家のブロマイドもちゃんと作って「皆かっこいいんだぞ」ってアピールしたらいいんじゃないですかね。

    夢眠:川上未映子さんのブロマイドとか超買いたい……。やっぱりブロマイドを作って売りたいです(笑)。アイドルらしい感じもするし。

    夢眠:そういうちょっとミーハーな角度からの仕掛けをやってみたいです。「本が好き」って言うと「分かってないのに語るなよ」って言われちゃうような風潮もあると思うんですけど、どっちの人も楽しめて、お互いのテリトリーを邪魔したり馬鹿にしたりしないで本を楽しめる空間にしたいです。

    内沼:本について語れる人が行く場所はいっぱいありますよね。だからミーハーな人向けにブロマイドを売ったり、グッズを作ったりしてもいいじゃないですか(笑)。

    夢眠:昔、新潮文庫の「Yonda?」に応募券を集めると文豪の時計がもらえるという企画があって、私はそれがすごくかっこいいと思ったんです。太宰治の盤の時計って、なかなかつけないし……。

    内沼:確かそれ、新潮社さんではもうやっていないはずです。ぜひ夢眠書店でやったらいいですよ。

    夢眠:文豪に恋してる人って本当にいっぱいいると思うんで、……いないかな(笑)? でも今はイケメン化された文豪が戦う漫画もありますし(『文豪ストレイドッグス』)、文豪とか本自体がもともとは超メインカルチャーなのにメインすぎてあんまり見られなくなっていたのを、今一度、もっと押し上げたいです。

    内沼:そういうファンの人たちを巻き込みながらやるのがいいですね。

    夢眠:「(本は)怖くないよ」っていう発信からやりたいです。

     

    「読んだ」=「読了」ではない

    ―「全部読まないといけない」と思っている人が多いのもありますよね。

    夢眠:そうそう、奥泉先生が「タイトルしか読んでいなくても、読んだと言っていい」っておっしゃっていたんです。だから極端ですけど、棚をバーッて見て「千冊読んだ」と言ってもいいなと(笑)。

    内沼:僕もそう思います。「ブックピックオーケストラ」の初期から売っている商品の一つに「文庫本葉書」というのがあって、これは作品のほんの一部だけを見比べて買うものなんです。古本の文庫をクラフト紙で包んであるので中身は見られないんですが、包み紙にその本から引用した1~5行くらいの文章が書いてあるんですよね。

    夢眠:おもしろーい!

    内沼:食わず嫌いというか、その作家の名前を知らなかったり、今まで素通りしたりしていた人が「文章だけを見て買ってみたら、今まで自分が毛嫌いしていた作家だった」「全然気にしたこともない作家だった」ということが実際に起こっているようです。作品の中身を切り出すとか、この人がおすすめしているとか、何でもいいのでいろんな切り口で本を切って見せてあげられると、きっかけになっていいですよね。

    夢眠:それ面白そう。教科書に載っているレベルの作家なら代表作のタイトルや冒頭の数行で表せたりしますけど、それが逆に食わず嫌いを生むこともあるんですよね。

    夢眠:私は谷崎潤一郎がそうで、「ネチネチしてそう」「湿り気がある」というイメージがあってなんとなく嫌だったんです。太宰治の『人間失格』も、タイトルだけで「暗くなりそうだな」と思って避けていたり。でも逆にそういう本の紹介文ばっかりを集めた本を置いて、だいたいどんな本か分かるようにして、そこに「実は知らなかった谷崎!」みたいなテーマタイトルで引用やスクラップを貼っておいたら、「あ、好きかも……」と思って買う人がいるかもしれないですね。

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    内沼:勝手にタイトルを付け直せばいいんじゃないですか。「私はこのタイトルだと思う」っていうタイトルのカバーを上からかけちゃって。「全然知らない本がいっぱい売ってる!」と思ったら、全部代表作だったという。

    夢眠:それ、大喜利になりませんか(笑)?

    内沼:受けを狙わなくても、たとえば現代の言葉にするとか、こう言い換えたら興味を持ってもらえるかなという風にすればいいんですよ。海外作品のタイトルって、翻訳者によって結構変わるじゃないですか。

    夢眠:私が全部やらなくても、適した人をスタッフとして雇って、そういうコーナーを作るのも面白そうですね。

    内沼:遊びとしてやるぶんには意外と怒られないと思いますよ。

    夢眠:本を売ろうと思っているわけだし、「かぶせるPOP」みたいな感覚ですよね。

    内沼:そうそう。実はB&Bでも一度、星海社新書さんとコラボレーションして「リ・タイトル」という企画をやったことがあるんです。最近は帯なんかもどんどん大きくなってきてるじゃないですか。その延長で、勝手にタイトルをつけて売りました。売れるんだったらそんなに文句も言われないと思いますよ。

    夢眠:それが(本の価値を)下げちゃう言葉だったら微妙かもしれませんけどね。

    内沼:売ろうと思って褒めているわけだから、いいんじゃないですか。

    夢眠:じゃあカバーを作ってガンガン書いて、かぶせて、そのまんま売っちゃおう! 面白そうだなあ。


    これまでにも夢眠書店開店日記でねむちゃんが書いたPOPを見て「この本読んでみたい!」と買ってくださった方がたくさんいらっしゃるのですが、今回の対談で出てきたグッズやPOP、イベントのアイディアはいかがでしたか? 次回はさらなるヒントを吸収すべく、第8話の舞台である「HMV&BOOKS TOKYO」の売り場を見学します。お楽しみに!

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