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  • 職場の人間関係の悩みを物語で解き明かす『天才を殺す凡人』

    2019年05月09日
    知る・学ぶ
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    天才・秀才・凡人の3人の人物が登場する物語によって、“才能の正体”とその活かし方を解き明かす『天才を殺す凡人』。著者は、デビュー作『転職の思考法』が10万部を超えるベストセラーとなった北野唯我さんです。

    一見、刺激的なタイトルでありながら、実はどんな人にも当てはまる「普遍的な理論」について書かれている本書。その読みどころはどこにあるのか、本書の編集を担当した日本経済新聞出版社の桜井さん、酒井さんと販売担当の玉井さんに、くわしくお話を伺いました。

    天才を殺す凡人
    著者:北野唯我
    発売日:2019年01月
    発行所:日経BPM(日本経済新聞出版本部)
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784532322533

     

    今回取材にご協力いただいた方

    (左から)
    日本経済新聞出版社
    編集部 エディター 酒井圭子さん
    編集部 日経ビジネス人文庫編集長 桜井保幸さん
    営業部 マネジャー 玉井淳さん

     

    “才能の正体”を天才・秀才・凡人の3者の関係から解き明かす

    ――30万PVを記録した北野唯我さんのブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」が基となっている本書ですが、桜井さんは、Facebook経由でそのブログに出会ったそうですね。

    桜井 ブログは2018年2月に書かれたもので、まだ『転職の思考法』も発売されていませんでした。著者のことは知らなかったのですが、一読してまず、「日本人でこういうことを言う人はあまりいないな」と思ったんです。

    ビジネスの世界で必要な才能を、天才・秀才・凡人の3タイプに分類し、それぞれの関係性や才能の活かし方が書いてある。社会でも個人のレベルでも成り立つオリジナリティのある理論だったので、本にしたらおもしろいものになるだろうなと思い、著者に書籍化を提案しました。

    ――本書ではその理論が、天才女性起業家に惚れ込む“凡人”の主人公が、謎の秋田犬・ケンとの出会いをきっかけに、「才能の正体」について学んでいくという物語として展開されています。

    桜井 第1稿が出てきたときには、ブログの延長線上にあるスタイルで書かれていたんです。それもおもしろかったんですけれど、「同じタッチなので、もしかしたら途中で飽きちゃう人もいるかもしれませんね」というお話をしたところ、北野さんが「もっと考えてみます」とおっしゃって。

    あとは何もリクエストはしなかったのですが、ひと月ぐらいでほぼ完成形に近い物語が出てきました。

    著者はもともと脚本の勉強をしていたことがあって、シナリオライターの元で何度もシナリオを書いたことがあるそうです。ストーリーにちゃんと起承転結があって、その中に彼独自の構図がある。すでにそこまで出来上がっていたので、編集サイドとしてはそれを整える作業だけでしたね。

    ▼ビジネスに必要な3つの才能を、「創造性=天才」「再現性=秀才」「共感性=凡人」の関係性として図式化。

     

    天才・秀才・凡人は自分自身の中にいる

    ――タイトルや「なぜ、才能はつぶされてしまうのか?」というコピーから、天才と凡人が敵対する話かと思いきや、そうではないんですね。

    桜井 もちろん、組織の中で天才的・秀才的・凡人的な要素がぶつかって、足を引っ張り合う“あるある感”はありますし、実際に起業家の方が読むと、ベンチャー企業での葛藤がリアルに描かれているので、かなりグッとくるみたいです。

    しかしこの本の一番のポイントは、血液型みたいに人間をタイプ別に分類するのではなく、一人一人の中に、天才的・秀才的・凡人的な要素があることに気づかせてくれるところ。そこが一番おもしろいんです。

    酒井 私は「自分の中の天才を殺すのは自分」というところが一番響きました。

    ――知らず知らずのうちに、秀才や凡人の自分が天才の自分を殺してしまう。その”リミッターを外す”ことが、才能を活かすためには必要と書かれていますね。

    桜井 そこがすごくポジティブなところで、過去の自分にとらわれず、未来を向こうというメッセージを感じますよね。「自分の可能性を信じてリミッターを外せば、何にでもなれる」というところは、『嫌われる勇気』の読後感にも通じると思いました。

     

    読者の感想が入った「参加できる書籍」

    ――巻末には付録として、北野さんのブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」と、それを読んだ読者の感想文が収められています。

    桜井 それがこの本の特徴で、「読者参加型の本を作りたい」という著者の意向によるものです。

    酒井 本書に収録している感想は、北野さんがブログで広く募集し、読者から寄せられたものです。本当はもっとたくさんあったんですけれど、紙幅の関係でその中からいくつかをピックアップして収録させていただきました。

    ――みなさん、自分の体験に照らし合わせて、前向きな意見を寄せられていますね。

    桜井 ブログや本書には、組織や世の中に対してどういう役割を果たすと自分も幸せになれるし、役に立てるか、ということが書いてあります。私もブログを読んだときに、「自分に何ができるのか」「何をすべきなのか」と考えさせられました。

    著者と私はだいぶ年が離れているのですが、年齢関係なしに、本書に書かれていることを“自分事”としてとらえることができるのも魅力ですね。

    玉井 誰もが漠然と感じている悩みが理路整然と言葉にされているので、共感する人が多いのではないでしょうか。

    私も最初にゲラを読み終わったときに、「よくぞ言葉にしてくれた」というスッキリ感があって、本書について誰かと語り合いたくなりました。みなさんの感想にもそんな思いが感じられますよね。

     

    “コミュニティ”で本を作る時代

    ――著者は、就活サイトを運営するベンチャー企業の執行役員ですが、まさにこれから社会で活躍しようという、若い人にぴったりの内容ですね。

    玉井 そうした面からも、この本はネット展開が重要になってくるだろうと考えました。企画がスタートした段階からFacebook上でクローズドなグループを作り、著者や私たちのほか数十人の方を巻き込んで、本作りや販促に取り組んできました。

    酒井 現在、POPやチラシ、しおりなどでお届けしている「才能診断」チャートもそのグループでアイデアを募集し、形になったものです。本書を手にする取っ掛かりとして楽しめるものになっています。

    桜井 出来上がってしまうと簡単に見えますが、一人で作ろうと思うと難しいんですよ。質問が思い浮かばなくて、なかなかチャートにならない。でもみんなで集まって、アイデアを出し合ったら2時間くらいでできちゃったんです。

    ▼YES・NOテストで、自分のタイプがわかる「才能診断チャート」。意外な自分の才能を発見するかも!?

    酒井 そもそもこれが北野さんのすごいところだなと思ったのは、Facebookのクローズドなグループを立ち上げる際に、北野さんからみなさんにお題が出たんです。

    自己紹介と、「いま組織にいて悩んでいること、かつて悩んでいたことを教えてください」と。結果、相当数の方がFacebookのグループ内でコメントを寄せて、北野さんがそれにすごく丁寧に答えてくださって。

    そこで北野さんとグループのメンバーとの信頼関係ができましたし、自己開示した上でグループに入っているので、「みんな悩んでいるんだな」という空気ができて、より仲間意識が強くなりました。それがなかったら、ここまでの一体感はなかった気がするんですよね。

    桜井 そういうコミュニティで本を作るという時代になってきたのかもしれないですね。

     

    “言語化”と“構造化”で自分の強みを知る

    ――そういったみなさんの協力が、組織の中で働いている、悩んでいる人たちがより共感できる本作りにつながっているのですね。

    玉井 すでに働いている人はもちろん、これから組織に属して働き始める人にもおすすめですし、読者対象はかなり広いと考えています。

    この本はタイトルの語感が強いこともあってか、最初は読者の男女比が8対2くらいだったんです。それが、経沢香保子さんや山口絵理子さんなど、女性実業家の方が本書を評価してくださって、女性読者も増えてきました。女性経営者が登場する話でもあるので、ぜひ男女を問わず手にしていただきたいですね。

    ――子育て中の方も、興味を引かれる部分が多そうです。

    桜井 そういう反応はtwitterで結構ありますね。本書には、天才の味方となる“共感の神”という存在が登場するのですが、親というのは子どもがどんなタイプであろうと共感して、応援し続ける存在ですよね。

    『天才を殺す凡人』というタイトルですが、読んでもらえれば、天才だからいい、凡人だから悪い、という話ではないということもおわかりいただけると思います。特に学校教育では秀才がほめられがちですが、秀才だけがエライわけではないと書かれているので、僕はそこに共感しています(笑)。

    ――それぞれの特徴を知ることで相手を理解し、強みの活かし方がわかる本でもありますよね。

    酒井 桜井は、「北野さんは言語化と構造化の神」だと言っています。

    桜井 まさにこの本は、誰もが感じている普遍的な悩みが言語化・構造化されているので、モヤモヤしているときにこの本を読むと、解決の糸口がつかめるのでは。こんなふうに自分も動いてみようという、前に進むきっかけになる本だと思います。

    玉井 弊社には『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』というロングセラーがあり、そちらは自分の才能と活かし方が、テストで言語化できる本となっています。

    まずは物語として読める『天才を殺す凡人』で自分を知って、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』で自分の強みを“見える化”して、自分の生き方を考える。そんな読み方もおすすめです。

    さあ、才能に目覚めよう新版
    著者:トム・ラス 古屋博子
    発売日:2017年04月
    発行所:日経BPM(日本経済新聞出版本部)
    価格:1,980円(税込)
    ISBNコード:9784532321437
    天才を殺す凡人
    著者:北野唯我
    発売日:2019年01月
    発行所:日経BPM(日本経済新聞出版本部)
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784532322533

     

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