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1.渋沢栄一は日本の近代資本主義の父とされる人物で、六百社近くの創業に関与している。彼の思想は日本企業の原点といえる。
2.渋沢は明治政府の大蔵官僚だったが、豊かな国を築くため、官職を辞し、実業の世界へ飛び出した。彼が拠りどころとしたのが、論語だった。
3.論語は金銭に批判的な思想だと考えられていた。しかし、渋沢はこうした旧来の論語の解釈を疑い、道徳と経済の両方が均衡することこそ重要だと説いた。
本書は渋沢栄一の名著『論語と算盤』に気軽に親しんでもらうために編まれたものである。第一部では『論語と算盤』が書かれた背景、渋沢の人生や思想が解説されている。第二部では『論語と算盤』の現代語での抄訳を収め、第三部では同書のエッセンスを「渋沢栄一のビジネスマインド」として提示する。
『論語と算盤』は、大正五(1916)年に刊行された。著者の渋沢は、日本の近代資本主義の父として知られる人物だ。六百社近くの起業に関与し、実業の側から近代日本を作ってきた一人である。論語は、孔子が語った道徳観を弟子たちがまとめたものだ。渋沢は論語を、実業を行う上での規範とした。出世や金儲け一辺倒になりがちな資本主義の世の中を、論語に裏打ちされた商業道徳で律する。そして公や他者を優先することで、豊かな社会を築く。これが、渋沢が積み上げてきた思想だ。
論語と算盤というと、異質なものの取り合わせのように見える。だが、渋沢によれば、論語は朱子学として伝承されるうちに解釈を歪められ、富や地位と道徳は両立しないとする思想だと考えられるようになったという。しかし、こうした旧来の論語の解釈に疑問を抱いた渋沢は、道徳と経済の合一説を説いた。『論語と算盤』は論語の解釈の更新でもあったのだ。
渋沢は明治という激動の時代に未来志向で生き、大きな仕事を成した。彼の物事の捉え方に触れれば、日々の仕事においても、これまでとは違った景色が見えてくるかも知れない。時代を超えて読み継がれる名著には、読むたびに新しい発見があるはずだ。