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芸能活動10周年の節目に、引退を決めた夢眠ねむ。
「引退後はいよいよ夢眠書店を開店したい」と語るねむちゃんの最後の対談相手は、“書店員が選ぶ賞”「本屋大賞」の実行委員で、経歴22年の書店員でもある高頭佐和子さんです。
「夢眠書店開店日記」は、今回お届けする〈その⑤〉でついに完結となります。ぜひ最後までご覧ください。
高頭佐和子(たかとう さわこ)
NPO 本屋大賞実行委員会 理事
書店員歴22年。大学卒業後、書店に就職。2004年の立ち上げより本屋大賞実行委員として活動している。
※今回は、同じく本屋大賞を立ち上げたメンバーの一人で、「夢眠書店開店日記」第1話に登場した日本出版販売 古幡瑞穂も参加しています。
高頭: ねむさんはアイドルとして毎日お忙しいと思うんですけど、どんなときに本を読むんですか?
夢眠: 移動中ですね。電車とか、新幹線とか、飛行機とか……。適度な雑踏のなかにいたほうが集中できるので、とにかく移動してるときが一番はかどります。
高頭: わかります! 私もそうで、そのためにいつも青春18きっぷを買ってるんですよ。
夢眠: えー! そうなんですか!!
高頭: 本屋大賞の二次投票の時期には18きっぷがないので、そこが困るんですけど……(笑)。今年は片道は18きっぷで2日がかりで岩手へ行って、帰りは新幹線にしちゃったけど、結構読めました。あと、普通電車のグリーン車がおすすめです。空いている方向の電車に乗れば、静かな空間でゆったり座って、ビールも飲めて……。いつも5冊くらい持っていきます。
夢眠: 私も常に“読んでいい本”を10冊くらいは持っておきたい派です。でも、空港で買っちゃいませんか?
高頭: 現地でもうっかり買っちゃったりしますね。
夢眠: ですよね! 謎のタイミングで料理の本とか買っちゃう(笑)。
高頭: 旅行に行くときは、カバンが重くなることを恐れちゃいけないですよ。あっ、でも、以前北海道に友人と旅行に行ったとき、うっかりシリーズものをカバンに入れちゃって、そのあと先々で書店に行って、続刊を探すはめになったことがあります。私が移動中に本を読むのを好きなことは友人も承知していたんですけど、あのときはさすがに「やめてもらっていいかな?」って言われちゃいましたね(笑)。読んでいたのが飴村行さんの『粘膜蜥蜴』(『粘膜人間』から連なる、『粘膜◯◯』というタイトルのホラー小説シリーズ)だったのですが、ずっと私が「粘膜、粘膜」とつぶやいているのが不気味だったみたいで。
夢眠: あはは!! 私も『蜜蜂と遠雷』を全国ツアー中に読んでいたとき、すごくいろんなことに敏感になってました。いい本を読んでると、涙もろくなっちゃうんですよね……。本題がほかにあるときは、サクッと読めるものを読むべき(笑)。
高頭: 「今日はこれを読むまで帰らないぞ」って決めて、喫茶店を3軒くらいハシゴして読むこともありますね。
夢眠: ありますね~。そのお店が閉まったら24時間営業のファミレスに移動したりとか。
古幡: 私は『模倣犯』を読んだときにやられちゃって、その日会社休んだなあ。
夢眠: 「本の世界から戻ってくるのに時間がかかるから、お休みの前に買うべき」みたいなすすめ方も面白そうです。高頭さん、“移動時間の棚”を作るときはぜひ手伝ってください!(笑)
高頭: 本って、どこででも読めますもんね。私、本のいいところは、何か災害があっても日の光さえあれば読めるということと、世の中いろんなエンターテイメントがあって、それぞれたくさんの人が携わっていますけど、小説はもともとは一人のひとがこれだけの世界を作っているんだなというところに凄味を感じるんです。実は、本屋大賞で最後に披露したいエピソードがあって。
夢眠: え! 何ですか?
高頭: 2012年の本屋大賞で、大島真寿美さんの『ピエタ』という小説が3位になったんです。大島さんはそれまでもすごく好きな作家でしたが、この作品は中でも素晴らしくて評判もよく、ぜひノミネート作品になってほしいという気持ちがありました。しかし、発売されたのが2011年2月、つまり東日本大震災の直前だったんです。本屋大賞は、毎年11月末日までに刊行された作品を対象に一次投票をするのですが、震災でいろいろなことがあったので「『ピエタ』が対象期間内に発売されたことを思い出せない書店員が多いんじゃないか」と、勝手に心配していました。
ほんとうに、ほんとうに、わたしたちは、幸せな捨て子だった。
18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。
『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児を養育するピエタ慈善院で音楽的な才能に秀でた女性だけで構成される〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。
ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。
一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる――(ポプラ社公式サイト『ピエタ』より)
高頭: しかし、出版社さんが「長く売れるように」とすごく努力をされていたこともあって、ちゃんと覚えていた書店員も多く、なんとかノミネートに入ったんです。「やった!」と喜んでいたら、二次投票ですごく伸びて3位に!
夢眠: ノミネートされれば、二次投票で投票者全員が読むから。
高頭: それまで『ピエタ』を読んでいなかった人も、読んで「面白い」「売りたい」と思ってくれたんですね。
そのことを、ずっと応援していた書店員も、出版社の人たちも、著者の方も同じように喜んでいて、順位とか関係なくそのことが嬉しかったです。私たち投票した側も思ったし、出版社の方も、編集さんも営業さんも作家の方も喜んでくれて。そういうふうにして、ロングセラーの作品になったんです。
夢眠: 素敵……! 自分の好きなものが売れることが嬉しいっていうのは、やっぱりすごく健全でいいなって思います。今後は、自信をもって参加できるような本屋になれるように頑張ります。
高頭: ねむさんのような女性がいるということが、本当に嬉しいです。
夢眠: 夢眠書店はサロンみたいなスペースにもできたらいいなと思ってるので、開店したら、ぜひ本屋大賞委員会の会議してくださいね。お茶しながら。あ、あとたぬきゅんの絵本を書きたいので、そのときはぜひ売ってください。
高頭: 喜んで!
夢眠: 本日はありがとうございました!
感想
今回は私が感銘を受けた本屋大賞についてお話を伺いました。
文化を盛り上げ続ける先輩方のお話は愛と熱量たっぷり。本についてもっと対話しようという始まりが印象的でした。実際本屋大賞に選ばれて読んだ本は多いので納得の連続。
今年の本屋大賞も楽しみです!
そしてついに、夢眠書店開店日記も最終回!
本が好きな読者さんに支えられ、この連載をきっかけに本を読んでみようと思ってくれた方がいてくれたことに救われ。
出版業界の方からの反響も大きかったらしく光栄でした。書籍化もさせていただき、学校の図書館に入ったり……全てが有り難かったです。
そして、私は本当に本屋になります。
棚も少ない小さなお店からのスタートですがここで学んだことを糧に頑張ります。本当に長い間読んでくださり、ありがとうございました!! お互い、良き読書を楽しみましょうね。
第1話「本ってそもそも何なんだろう?」から約3年半。「夢眠書店開店日記」では、まだ原稿もない状態から、本が作られて流通網に乗り、書店に並び、皆さんの手に届くまでを(さらに一度絶版になった本の復刊も!)、大勢の方のご協力のもとお届けしてきました。
本が好きな方も、ちょっと苦手だった方も、“本”がそれまでより身近な存在になっていたら嬉しいです。
「夢眠書店開店日記」はこれでおしまいですが、夢眠書店はこれから始まります。
「本は売れない」「出版業界は苦しい」という“お決まりのフレーズ”にねむちゃんが「だから私がやる」と答えたとき、編集部も夢眠書店の開業がますます楽しみになりました。
ねむちゃん、長い間連載お疲れさまでした! これからもよろしくお願いします。