'); }else{ document.write(''); } //-->
「お宅は歩けない人に靴を売りつけるんですか! そうまでしてお金を儲けたいんですか!」
香川県のとあるシューズメーカーにかかってきた一本の電話。
電話の主は関東にある老人ホームの職員で、入所している90歳のおばあさんが、3年も前からずっと歩けないのにその会社が製造・販売する靴を買ったのだということでした。
「売ったのだからきちんと対応してほしい」と言われ現地へ向かうと、そこには車椅子に乗ったそのおばあさんが。足はまったく動かせず、自力で歩くどころか立つことすらできない状態だったといいます。
このおばあさんはなぜ、そんな状態にもかかわらず靴を買ったのでしょうか。
1月26日(土)、あさ出版より『神様がくれたピンクの靴』という本が発売されました。
同書は、第2回「日本でいちばん大切にしたい会社」で審査委員会特別賞を受賞した徳武産業株式会社(香川県さぬき市)の奮闘と、同社が製造・販売するケアシューズ「あゆみ」にまつわるエピソードについて書かれた一冊。
さきほどの“とあるシューズメーカー”とは徳武産業のことで、90歳のおばあさんはこの「あゆみ」を購入したのでした。
徳武産業は1957(昭和32)年に綿手袋の縫製工場として創業し、家庭用・旅行用スリッパ、そしてルームシューズの製造へと事業を拡大してきた会社。
あるとき地元の老人ホームから「入所者が相次いで転倒し困っている。お年寄りが転ばないですむような靴を作ることはできないか」と相談を受け、実際に現場でそのようすを目の当たりにしたことで、1995(平成7)年にケアシューズ「あゆみ」を生み出しました。
「あゆみ」は、一人でも着脱しやすく、軽くて適度にヒールがあるため歩きやすいだけでなく、色・サイズ展開も豊富な、デザインにもこだわって作られたケアシューズ。靴業界では“非常識”とさえいわれた「片足だけの販売」や「左右サイズ違いでの販売」も行なわれています。
高齢者には、むくみによって朝夕で大きく足のサイズが変わってしまう人や、リウマチや外反母趾で足が変形してしまった人、片足を引きずるように歩くことで片方の靴ばかりがすり減ってしまう人なども多く、この靴は、そんな悩みに応えるべく試行錯誤のうえ作られたのだそうです。
また病気や怪我でなくても、冷えを防ぐために靴下を何枚も重ね履きするなどして、夏と冬で同じ靴を履けない人も多くいます。
そんな人たちからの支持を得て、高齢者・障害者を中心に「あゆみ」愛用者は増えていきました。
冒頭で紹介したおばあさんは、同じホームの人が「あゆみ」を履いているのを見て購入しようと思ったのだそう。
「同じホームでピンクの靴を履いている人を見かけたの。その靴が可愛らしくてね。いつも見てたら、そのうち靴が私に語りかけてくる気がしたの。『私を履いて。一緒に歩こう』って。それで私もピンクの靴を買ったのよ。もしかしたら、歩けるようになるかもしれないと思って」
靴は歩くための道具ですが、おばあさんにとっては“歩けるようになることへの希望”でもあったのです。
さらに“履いて歩くのが楽しみになる靴”に出合うことによって、先ほどのおばあさんは半年後、なんと実際に歩けるようになったのだといいます。
これが、タイトル『神様がくれたピンクの靴』のもとになったエピソード。「歩けること」「靴が履けること」「毎日履きたくなる素敵な靴に出合うこと」がいかに人生を豊かにするか、はっとさせられるような話が本書にはたくさん収録されています。
また、ここまで真摯にケアシューズに向き合った徳武産業と、同社 十河会長の思いも忘れてはいけません。
徳武産業が「日本でいちばん大切にしたい会社(第2回:審査委員会特別賞)」「四国でいちばん大切にしたい会社大賞(第1回:四国経済産業局長賞)」に選ばれた理由も、ぜひ『神様がくれたピンクの靴』を読んでお確かめください。
(商品写真提供:徳武産業株式会社)