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1.遠い未来の完全予測はありえない。有効なのは、今後5~10年後の見通しを立てることだ。
2.国家の盛衰を見抜く10の評価基準とは、人口構成、政治、格差、政府介入、地政学、産業政策、インフレ、通貨、過剰債務、メディアである。
3.著者の予測では、将来展望ランクの格付けが優秀な国として米国・アルゼンチン・メキシコ・フィリピン・ドイツが、平均に位置付けられる国として台湾・韓国・日本・英国が、劣等な国としてタイ・中国・ロシア・オーストラリアなどが挙げられている。
グローバル化が進むことで、ヒト、モノ、カネの交流が富を生み出す――。そんな期待は2008年の金融危機で砕かれた。サブプライムローン問題などの米国発の危機が世界各国に波及した。各国のつながりが強くなったことで、変化の速度は増す一方だ。こうした変化を先読みする方法はないか。モルガン・スタンレーの市場戦略担当である著者は、長年の経験で独自に選んだ10の評価基準をもとに豊富なエピソードとデータで、これからの5~10年で成長する国、後退する国を考察している。
生産年齢人口の増加や、住宅価格の上昇率、債務の伸び率が経済成長率より高いか、低いかなど、評価基準は実に明快だ。経常収支赤字の対GDP比、改革者だったリーダーの変質が引き起こす政治サイクルへの指摘も考えさせられる。
原著は2016年に執筆されたため、トランプ氏がアメリカの大統領となる直前の本である。だが、本の中では脱グローバル化ともいうべき内向き志向が強まる世界を予想しており、著者の先見の明を感じさせる。
10の評価基準をもとに、11章では、いくつかの国の未来が予測されている。現地の視察を長年行ってきた著者の考察が詰まった本書は、移りゆく世界の変化を展望するための指南書として最適だろう。また、日本への見方は中立である。安倍政権の少子化対策を前向きに評価している。裏を返せば、政策の停滞によっては、評価も悪化する、との意味も含んでいるのかもしれない。世界の未来を見通すレンズを手にしていただきたい。