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  • 夢眠書店開店日記 第17話:紙の本と電子書籍はどう違う?ハイブリッド型総合書店に聞いた電子書籍の世界④

    2018年06月23日
    知る・学ぶ
    アイドルBOOKS
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    昨年11月に発売された『本の本 夢眠書店、はじめます』の電子版が、6月8日(金)に配信スタートしました!

    ……ということで、「夢眠書店開店日記」第17話のテーマは〈電子書籍〉。第4弾となる今回は、紙の本と電子書籍の両方を扱うことを視野に入れ、夢眠書店をどんな本屋さんにしたいか考えていきます。

    〉これまでのお話を見る

    『本の本 夢眠書店、はじめます』電子版の購入はこちらから

    本の本
    著者:夢眠ねむ
    発売日:2017年11月
    発行所:新潮社
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784103513810

     

    今回の対談相手

    (写真左から)
    星野秀輔(ほしの しゅうすけ)
    株式会社トゥ・ディファクト ハイブリッドサービス企画部
    Web制作会社を経て2012年トゥ・ディファクトに入社。デザイン・技術を活かしたサービス設計を主に担当。hontoブックカバーサービスやオフィシャルマガジン「honto+」(ホントプラス)の一部営業も担う。

    山根健裕(やまね たけひろ)
    株式会社トゥ・ディファクト ハイブリッドサービス企画部
    2011年トゥ・ディファクト入社。ハイブリッドサービス企画部に配属され、hontoのサービスローンチと以降の改善に従事。主にプロモーションなどを担当。

    福田敬(ふくだ たかし)
    株式会社トゥ・ディファクト ハイブリッドサービス企画部
    大手ECサイトの開発プロデューサを経て、2014年トゥ・ディファクトに入社。「リアル書店とネット書店の融合」ハイブリッドサービスを日々模索、特にスマートフォン上のサービス開発に力を注いでいる。

     

    「夢眠書店ならではの本の売り方」を考えよう!

    夢眠:最後に、夢眠書店の開店を目指すにあたって、どんな本屋さんにしたらいいかアドバイスをいただけたら嬉しいです。いわゆる“町の本屋さん”という感じの大きくない規模で、その町になじんだ、いろんな人が訪れるようなお店にしたいと思っています。気軽に行って、読む目的がなくても一冊持って帰れるような本屋さんが理想です。

    山根:小さいお店が次々に閉店している、というのはニュースでもよく見るようになりましたよね。そこで思うのは、やっぱり「本そのものはどこで買っても同じ」ということです。絵本や児童文学だけを扱う専門店とか、ほかにはないようなもの、珍しいもの・ことを提供する特色のある書店がいいのかなと思います。「そこに行く理由」をどう作り上げるかが重要ですね。「ビギナー向けの本もあるし、玄人向けの本もある」というよりは、「ビギナー向けの本だけ」にしてしまうとか。

    福田:何かに特化するとか、あとはご自身の世界観をそこで出すとか。行くと楽しめたり、何かを体感できるというのは必要ですね。

    夢眠:そうですよねえ。「アメあげるから寄っといで」じゃだめですもんね(笑)。本当は「本読んだことないです」っていう人にも来てほしいし、ヘヴィーな読書好きがうなるような売り場にもしたいんですけど、どっちにも喜んでもらえるお店ってどうやったら実現できるんだろう……。

    星野:実は昨日、ちょっと考えていたことがあって。今YouTuberがすごく人気があるじゃないですか。彼らは題材は異なっても“定型”の展開で構成しているんですよ。決まった挨拶をして、定番のコーナーがあって、決まったオチで締める。そしてファンも、それを期待して見に行っていると。逆に“いつものアレ”からズレることが続くと、ファンが離れていってしまうんだそうです。書店に関しても、特色として「あるストーリーがあって、オチがある」というのがいいんじゃないかなと思いました。

    夢眠:「オチのある本屋」……?

    星野:たとえば本を「現実から離れた世界を楽しむもの」というふうにとらえて、フィクションや絵本を中心にラインアップするとします。そこに夢眠さんならではの“オチ”として、「現実を知った本」も用意する。そういうギャップができると、選書に面白みが出るのかなと思ったんです。

    夢眠:なるほど。決まった展開とオチという意味では、朗読のお仕事をするときに、「お耳の恋人、夢眠ねむです」っていう定型の挨拶があって、最後に「それではまた、さようなら」みたいな挨拶で締めると“夢眠ねむの朗読”という一つのパッケージになりますね。

    星野:はい、そのようなイメージです。

    夢眠:あともう一つお聞きしたいことがあって。夢眠書店では、できれば電子書籍も販売したいなと思っているんです。さっきお話ししたみたいに、紙の書籍が出ていない作家さんでも、おもしろい作品があったら皆に知ってほしいから。そういうとき、電子書籍を“自分だけの電子書籍”にするっていうことができたらいいなと思っているんですけど、そういうことはできますか?

    福田:たとえば、どんなことでしょう?

    夢眠:サイン入り電子書籍に“名入れ”ができるようにしたりとか。あと電子書籍は「いつでもどこにいても買える」というのが特長なので、現地に行けなくてもできるサイン会ができるようになったらいいなと思います。「19時からサイン会をします。整理番号は5番です」というふうにお知らせしておいて、自分の番になったら手持ちのデータに私のサインがぶわ~っと浮かび上がるっていう。

    ――「サイン来た!」「そろそろ自分の番かな?」っていう楽しみもありそうですね。

    夢眠:遠隔でやりとりしながら「サイン出てきた?」とかお話しできたらもっといいですね。電子書籍っていう画一的なデータが“唯一無二”のものになると、生の良さが出るのかなと思うんです。

    星野:確かに、それはおもしろいですね。

    山根:土台となる仕組みが開発できたら、実現までは早そうです。

    夢眠:あとは「夢眠書店に来ないとダウンロードできない電子書籍」というのもできたらいいなって。ダウンロードコードを販売するのもいいんですけど、できれば「レジでお会計をした後、隣の機械に自分の端末をつないでダウンロードする」とかがいいです。自販機みたいに「そこから出てきて自分の端末に入ってくる」っていうほうが面白そう。

    福田:電子書籍の自動販売機を、もっとリアルな感覚で体験するっていうことですね。できそうな気がします。

    夢眠:ぜひ開発してください!(笑)

    福田:頑張ります(笑)。

    夢眠:今日は、電子書籍と紙の本の両方を扱っているハイブリッド型総合書店「honto」ならではのいろんなお話が聞けて、すごく勉強になりました。ありがとうございました!

    星野:こちらこそ、夢眠さんとお話したことでいろんなヒントがいただけました。

    福田:hontoは「本好きに愛される書店」を目指しているので、今後もそういったご要望に応えられるようなサービスを展開していければいいなと思います。

     感想 
    本好きの中でもよく論じられる、「電子書籍問題」。紙の質感が好き、装丁を味わうには紙じゃなきゃと思いつつ、私自身、買って積んでいる本より持ち歩いている電子書籍版の方が開く頻度も高かったりして……。
    電子書籍版だって、本当に便利な“本”なのです。
    自分の本棚で家の底が抜けてしまってはどうにもならないし、ちゃんと“買って読む”という行為に悪なんてない!!(作家さんだって、嬉しい人も多いはず)
    hontoさんは本と電子書籍、リアル書店とデジタル本棚をうまくリンクされているのが素晴らしい!
    本屋として、電子書籍とどう付き合っていくのか、一つの答えをもらえた気がします。
    まだ進化していくであろう電子書籍、ますます目が離せません!


    いちユーザーとして利用していても、知っているようで知らなかった電子書籍の世界。「紙と電子、どっちがいいか?」と両極に区別しようとしがちですが、“ハイブリッド型総合書店”という独自の立ち位置にある「honto」を取材したことで、そもそも「本を買う」「本を読む」ということをどう捉えるかを今一度考える機会となりました。

    「本屋として、電子書籍とどう付き合っていくのか、一つの答えをもらえた気がします」と綴ったねむちゃん。「夢眠書店開店日記」は続きます。次回もお楽しみに!




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