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小学校の算数において、つまづく子どもの多い「分数」。
「2を3つに分ける」はわかっても、「2を3分の1ずつに分ける」という表現には実感がともなわない……。「なぜ分子と分母を逆にしてかけるとわり算になるの?」と聞かれて、あなたは子どもにうまく説明できますか?
そんななか、小学5年生のある男の子が夏休みの自由研究で考案した「分数ものさし」という文房具が、「直感的に分数を理解できる」として話題になっています。
算数の“大きな山”である「分数」。その男の子はどうやって、分数の概念を「ものさし」で説明したのでしょうか?
プレジデント社 マーケティング本部の椎野さんに教えていただきました。
小学校の先生がたも算数の大きなヤマ場だという「分数」。分数の計算がわからないと、高学年になって文章題や割合・比などにも苦手意識をもってしまいがちです。
「分数ものさし」を考案した静岡県浜松市の山本賢一朗くんも、まわりの友達が「分数がわかりにくい」と困っていたことがきっかけで、これを考案しました。
「分数ができない大学生」という本が以前話題になりましたが、大人でも分数の計算はパッとはできない人も多いもの。ではなぜ、分数は難しいのでしょうか?
整数の世界では「1、2、3……」と数字が大きくなれば、あらわす大きさも大きくなります。ところが分数の世界では、「1分の1、2分の1、3分の1……」と、分母の数字が大きくなるにしたがって、あらわす大きさは小さくなります。
整数をあつかうときとは違う考え方に慣れる必要があるのですが、抽象的な思考がまだ十分に発達していない段階の子どもにとっては実感がないので難しく感じるのです。
計算の仕方も、これまでの整数の計算とはまったく違うやり方を覚えなくてはなりません。「どうして通分するの?」「なんでわり算ではひっくりかえすの?」といった疑問が解消されないまま、なんとなく苦手になってしまう子が多いようです。
「分数ものさし」は、12cmを「1」として、2、3、4、6、12を分母とした分数が示されたものさしです。
ポイントは、分数の大きさを「長さ」で表している点。たとえば「2分の1+3分の1」を計算するときは、まず「2分の1」の長さの線(12cmの半分なので6cm)をものさしで引き、そこから続けて「3分の1」の長さ(4cm)だけ線をつぎ足します。
できあがった線の長さは、12cmのうちの6cmと4cmを足した10cm。そして線を引く時に「2分の1+3分の1」は「12分の6+12分の4」であり、「6分の3+6分の2」でもあることに気が付きます。すなわち足し算の答えは「6分の5」となるのです。
分数の足し算とは何をしているのか、数字を操作するだけでは子どもには実感がわきませんが、分数ものさしを使えば直感的・視覚的に理解できます。実際にまだ分数を習っていない小学校低学年のお子さんに「分数ものさし」を使ってもらってみたところ、計算をどんどん解いてしまいました。
よく「算数のセンスがある」とか「数字に強い」とかいいますが、数の性質を理解する“クセ”は、小さい頃から数に多く触れることで身につきます。
算数の得意なお子さんに小さい頃のことを聞くと、車のナンバープレートの4ケタを計算したり、カレンダーの数字の法則を見つけたりといった遊びを日常的にしていたという子が多いようです。
「分数ものさし」には足し算、引き算、かけ算、わり算を楽しく学べる計算ドリルが付いており、ドリルは単品でも販売しています。「線を引くのが面白くて、どんどんやってしまう」という声も届いていますが、そういった場合はぜひ、ドリルをもう一冊買って「2周目」に挑戦してみてください。
親子一緒に楽しむと、親にも発見があって楽しいと思います。
「分数ものさし」を商品化してから、多くの親御さんから「うちの子と同じ小学生が発明したの?」という驚きの言葉をたくさんいただいています。賢一朗くんが小学5年生の自由研究として発表した「分数ものさし」は、関心を寄せてくれた静岡大学の准教授の助言も受け、小学6年生のときに「たす・ひく・かける・わる」すべてができる教材として完成しました。
賢一朗くんの発想のもとは、分数の計算に悩んでいた友だちに「どうすればわかりやすく説明できるだろう?」と考えたところにあります。分数を視覚的にどう表すかということについても、最初は「長さ」ではなく、ピザやケーキのような丸い形を等分したほうがいいのではないかなど、いろいろと試行錯誤したうえでたどり着いた結論です。本当にずいぶん悩んで、試作品もたくさん作ったと聞いています。
結果として「ものさし」という形になったのには、「日常的に持ち歩いてたくさん触れてほしい」「そのためには小学生の筆箱に入るものにしたい」という思いも込められています。
分数の大きさが見える「分数ものさし」を、ぜひたくさんいじってみてください。楽しみながら分数に接しているうちに、数の楽しさに気がついて“算数が好きな子ども”になるかもしれません。