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例えば球技は、ルールに従ってボールをあやつり、「一定の条件を満たすと点が入る」というゴールがあるからこそ、人々が熱狂するのです。これが、ルールもなく、何を目的としているのかもあやふやであったなら、誰もボールのゆくえに一喜一憂しないでしょう。
このように、明確な「ゴールとルール」があるということが「没頭」には重要です。この「ゴールとルール」は、納得さえできれば自分で決めたものでもかまいません。
「フィードバックが早い」というのは、自分の行動に対する結果がすぐにわかるということ。
例えば、サッカーが「シュートをしたけど、それが成功か失敗かは来週わかる」というスポーツであったなら、没頭するのは難しいかもしれません。勉強で問題集を解くときでも、「100問解いてから100問答え合わせする」よりは、「1問解いたらすぐに答え合わせする」ほうが手ごたえを感じやすく、没頭するのによいそうです。
これは、「自分の行動が状況に与える影響」を実感できている状態のこと。テレビゲームなどはその代表で、ボタンの操作が即座に画面内の状況に影響を与えるため、没頭しやすいのだといえます。
簡単すぎることより、少し難しいことのほうが没頭しやすいようです。
エクストリームスポーツの世界では、自分のスキルを4%超えた目標に挑戦するときが、一番ゾーンに入りやすいのだとか。テレビゲームも、だんだん高くなるハードルを徐々に超えていくから、没頭しやすいのだそうです。
そのため、なにか行動しようと思ったら、「それが自分にとって挑戦になっているかどうか」を見極めることが重要だといいます。
一方で、目標が高すぎても、人間はやる気をなくしてしまうもの。もしも目標が無謀すぎると思われたら、それを細かく分解してみるとよいかもしれません。
あなたが戦国武将だとして、「天下を取る」という目標を漠然と考えてもやる気が出ないと思いますが、「まずは〇〇家を攻めよう」「そのためには鉄砲がいるかな」「鉄砲は種子島で調達できるな」と、自分にとってちょうどよい難易度になるまで分解していけば、やる気に結びつけられるのだそうです。
本書では、人間が「没頭」するために踏む、心理的なステップについても解説されています。
①まずはストレスをかける(交感神経を働かせる)
②次に一気にリラックス(副交感神経を働かせる)
③目の前のやるべき行為に集中する(本書p.99より引用)
たとえば将棋のプロ棋士は、対局前には緊張して不安を感じた状態にあります(①)。しかし、いざ対局が始まってしまえば、とにかくやるしかないので、開き直ってリラックスした状態になります(②)。その結果、目の前の対局に没頭していくのです(③)。
この、「不安⇒開き直り⇒没頭」の3ステップが重要で、いま「不安」を感じている対象がある人は、やるべきことに没頭できる条件が整っているということ。「不安」を感じるということは、自分がそれを重要だと感じているためなので、あとは開き直って取り組むだけだということですね。
「没頭できるほど好きなことがない……」「とくに不安を感じる対象もない……」という方には、好きなことを見つけるためのコツが解説されています。
ここでありがちなのが、「仕事で役に立つから」などの「理由づけ」をして、「ゴルフ」などを選んでしまうこと。しかしそれは「役に立つ」という「意味」に引っ張られているだけで、ゴルフそのものに本気であるとはいえないそうです。先述の「レンタルビデオ店で立ちぼうけ」のエピソードも、「映画を観る」ことに「意味」を求めてしまっていたため。
そうではなく、「行為そのものが自分に快楽をもたらすこと」を選ぶべきなのだそうです。
ある統合失調症の女性は、治療の過程で「1日の中でなにが楽しいか」と聞かれ、「自分の爪の手入れをしている時が楽しい」と気づいたそうです。そこでネイリストの職業訓練を受けたところ、これに没頭し、プロのネイリストとして社会復帰を果たしたのだとか。
楽しさを感じる物事は、人によってプラモデル作り、部屋の掃除、料理などさまざまでしょう。客観的に見て「意味がありそうか」どうかは関係ありません。
むしろ、「意味がわからないけどなぜか気になる」物事を、とことんまで突き詰めることが本書では勧められています。結果として、上記の統合失調症の女性のように、その物事に隠された自分だけにとっての「意味」がわかるようになるかもしれませんよ。