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  • 夢眠書店開店日記 第15話:ねむ店長、修行!1日数万人が訪れる本屋さんの裏側④

    2017年06月03日
    知る・学ぶ
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    「夢眠書店開店日記」第15話の取材先は、紀伊國屋書店新宿本店。

    前回までは開店前の準備として、新刊を並べたり商品を補充したり、売場を整理したりしましたが、今回は場所を移して「紀伊國屋書店新宿本店」というお店についてくわしく教わります。

    1日数万人ものお客さんが訪れる、紀伊國屋書店新宿本店。これだけ多くの人に長く愛される理由は、どこにあるのでしょうか?

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    今回の対談相手

    大矢靖之 紀伊國屋書店新宿本店 仕入課
    2006年紀伊國屋書店入社。高松店へ新規開店スタッフとして配属された後、2007年に梅田本店へ異動、2013年からは福井店に勤務し、2014年に新宿本店仕入課へ。2017年3月からはビジネス・社会・就職・人文のフロアを担当。『大学出版108号』で専門書の装丁論を、『メディアの本分』(彩流社)に書店のメディア性についての試論を寄稿。

     

    「本店」と「支店」は何が違う?

    大矢靖之(以下、大矢)開店準備、お疲れさまでした。

    夢眠ねむ(以下、夢眠)ありがとうございました! 現場を見せていただいて、フロアの多さや本の量はやっぱり新宿本店ならではだなと思いました。ところで、そもそも「本店」と「支店」にはどんな違いがあるんですか?

    大矢:紀伊國屋書店は全国いろいろな地域に店舗がありますが、本店は札幌、梅田、福岡、そして新宿本店と、各エリアに司令塔のような形で置かれています。

    夢眠:なるほど、司令塔か……。朝礼では「梅田本店よりこれくらい売れている」というお話が出ましたが、そういうふうに本店同士でも切磋琢磨してらっしゃるんですね。

    大矢:他社の売上はなかなか見られるものではないですし、売上の目安にするのは社内の数字であることが多いです。梅田本店と新宿本店は常にライバルのような関係にあって、一冊でも多く売ろうと競い合っています。そういうところは張り合いがあっていいですね。

    夢眠:本店と支店の関係はどうですか? 例えば「本店でこれが売れているから、うちも力を入れましょう」とか……。

    大矢:社内の売上は全店舗見られるので、それを見ながら「うちに向いているかもしれない」「やってみようかな」というふうに、担当者が自分の裁量の範囲で仕掛けています。

     

    「大きいけれど画一的ではない」本屋の作り方

    夢眠:私、なんとなく、これくらいの大きな書店になると「全て上の人間が決める」みたいなイメージがあったんですけど、実際は結構柔軟なんですね。

    大矢:そうですね。例を挙げると、『まいにち小鍋』という本をあるスタッフが売りたいと言って、仕掛けたことがあるんです。当初は出版元も書店でも「一押し商品」とは見なしていなかったのですが、結果的に数か月で1000冊売れて、出版社の方からていねいなお礼をいただきました。

    まいにち小鍋
    著者:小田真規子
    発売日:2016年11月
    発行所:ダイヤモンド社
    価格:1,210円(税込)
    ISBNコード:9784478100585

    大矢:「この店だから売れる」と思うものを仕掛けることも大切ですし、出版社が広告・宣伝に力を入れている主力商品に対しては「売らなきゃいけない」という使命感もあります。担当者はそれを分かっていて、売りたい本と売らなくてはいけない本を組み合わせて、棚を作っているんです。

    夢眠:フロアや担当者の方のカラーを大切にされているのが、すごくいいなって思いました。お忙しい中で、売りたい本を仕掛けるにしてもなかなか「これだ」って決めて売場を作るのは難しいかもしれないけど、当たった時はめちゃくちゃ嬉しいですよね。

    大矢:感覚としてはゲームでハイスコアを出すのに近いところがあるので、ゲーム感覚で棚を作っている人などはよく当たっていますね。

    夢眠:「このフェアをやる」っていうのは、どうやって決まるんですか? 「誰々が亡くなったのでコーナーを作ります」というように、ニュースにあわせてフェアを作ることもあると思うんですけど、季節のフェアとか、担当者が「どうしてもやりたい」といってフェアになることもありますよね。

    大矢:そうですね。それもジャンルによってさまざまで、例えば実用書などは、バレンタインの時期なら手作りお菓子の本、年末なら大掃除の本、というふうに季節にあわせてフェアをやることが多いです。

    夢眠:確かに! 本屋さんの売場って、並んでいるものから季節を感じます。

    大矢:何かテーマを立てて独自のフェアをやるのは、2階や3階に多いですね。うちは常設の「フェア棚」があるので、担当者が「次はこれをやりたい」ということもありますし、「もう少ししたらこの棚が空くけど、何かアイディアある?」というふうに聞いてみることもあります。


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