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1.少年院に収容されている子どもの中には、見る力や聞く力といった認知機能が弱く、入ってくる情報が正確に理解できないために不適切な行動に至った子がいる。周囲が子どもの抱える困難に気づき、適切な支援を行うことが重要だ。
2.困難を抱えた子どもの特徴は、認知機能の弱さ、感情統制の弱さ、融通の利かなさ、不適切な自己評価、対人スキルの乏しさ、および身体的不器用さが挙げられる。著者が開発したコグトレは、こうした人々の認知機能を社会面、学習面、身体面から強化するトレーニングとして、広く活用されている。
『ケーキの切れない非行少年たち』は、凶悪犯罪を起こす非行少年たちの中には、知的なハンディキャップを抱える子が少なくないという事実を描き、衝撃を与えた。同書の著者である宮口幸治氏が今回テーマにしたのは、認知機能に弱さを抱えた、「立方体の描けない」少年たちの学力を伸ばす方法だ。
立方体の模写は、標準的な子どもであれば、7から9歳の間にクリアできる課題だ。だが、著者が少年院で出会った中高生のなかには、「立方体が描けない子」が多くいた。原因は、見たり聞いたりする力の弱さである。立方体が模写できないほど認知機能の弱い子は、勉強でも対人関係でも困難を抱えやすい。こうした子は本来支援を必要としているが、周囲からそのことに気づかれないまま大人になるケースも少なくない。また、仮に支援の必要性に気づく大人が現れたとしても、具体的な支援の方法がほとんどないという現実があった。こうした状況を打破しようと著者が開発したのが、学習・社会・身体の認知機能の強化を目指す「コグトレ」だ。
本書では、コグトレの開発の経緯や、トレーニングを受けた子どもたちの変化が描かれる。すでに一定の効果が見られているコグトレは、少年院以外の施設でも利用が開始されているという。「困っている子ども」の特徴もまとめられていて、身近な子どもの支援の必要性に気づくきっかけになりそうだ。子どもを見守る立場にある方には、特に一読いただきたい内容である。