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  • お互いがラクになる「気持ちよく伝えるスキル」とは?“アサーティブ”コミュニケーショの実践例を紹介!

    2022年11月25日
    知る・学ぶ
    ライター 谷山宏典
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    2020年3月の発売から9刷と着実に版を重ねている『アンガーマネジメント』や、『怒りの扱い方大全』など、これまでアンガーマネジメントに関する本を数多く手がけてきた戸田久実さんが、「次のステップとして、ぜひ多くの人に知ってほしい」と書き上げたのが、今年7月に刊行された『アサーティブ・コミュニケーション』です。

    コロナ禍におけるオンラインミーティングの普及や、パワハラ防止法の施行によって、組織内でのコミュニケーションや人間関係のあり方が変わりつつある昨今。自分の意見や思いをなかなか伝えられない人、社内や取引先での人間関係に悩んでいる人など、対人関係を見直したいすべての人に役立つアサーティブ・コミュニケーションについて、本書に込めた思いとともに、著者の戸田さんにお話を伺いました。

    アサーティブ・コミュニケーション
    著者:戸田久実
    発売日:2022年07月
    発行所:日経BP
    価格:990円(税込)
    ISBNコード:9784296114511

    『日経文庫 アンガーマネジメント』の著者が、怒りをうまくコントロールした先にあるコミュニケーションとして、アサーティブ・コミュニケーションの考え方と実践法を語る。
    【目次】
    第1章 アサーティブ・コミュニケーションとは
    第2章 アサーティブになるための準備
    第3章 アンコンシャスバイアスの影響に気づく
    第4章 アサーティブな表現のポイント
    第5章 ケース別対応例

    〈日経BOOKプラス『アサーティブ・コミュニケーション』より〉

    戸田久実(とだ・くみ)
    立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。研修講師として銀行・製薬会社・総合商社・通信会社などの大手民間企業や官公庁の研修・講演の仕事を歴任。
    講師歴30年、登壇数は4,000回を超え、指導人数は22万人に及ぶ。豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、受講者は新入社員から管理職までと幅広い。

     

    お互いを大切にした自己表現「アサーティブ・コミュニケーション」とは

    ――そもそもアサーティブ・コミュニケーションとは、どんなコミュニケーション法なのですか?

    戸田 ひと言で言えば、自分も相手も大切にした自己表現・自己主張の方法です。自分を大切にするとは、自分が伝えたい思いや意見を率直に、相手に受けとめてもらえるように表現できる、ということです。

    一方、相手を大切にするとは、たとえ意見の相違があったとしても、しっかりと耳を傾けて理解を示し、建設的な対話を進めていくことです。そうしたことがアサーティブ・コミュニケーションの基本的な考え方になります。

    〈『アサーティブ・コミュニケーション』p.44より〉

    ――アンガーマネジメントの「次のステップ」とのことですが、両者はどのような関係なのでしょうか?

    戸田 アンガーマネジメントは、1970年代のアメリカで開発された怒りと上手に付き合うための心理トレーニング方法です。アンガーマネジメントでは、怒りの感情をうまくコントロールして、怒る必要があることとないことの線引きができるようになることを重視します。

    では、「怒ったほうがいい」と判断したら、相手にどのように伝えればいいのか。そのときに必要になるのが、アサーティブ・コミュニケーションのスキルや考え方なのです。私が企業などで研修をするときも両者を組み合わせて行っています。

    ――戸田さんは20年以上前からご自身の研修にアサーティブ・コミュニケーションを採り入れているそうですね。

    戸田 私が研修の仕事をはじめたのは30年ほど前ですが、当時すでに日本でも、第一人者である平木典子先生によってアサーティブ・コミュニケーションのトレーニングが行われていました。アサーティブ・コミュニケーションのことを知ったとき、私はすぐに「これは日本人に必須のスキルだ」と思ったのです。

    というのも、研修先でよく、「上司に対して意見を言えない」「取引先から無理な依頼をされたとき、『No』と言えない」など、無意識の思い込みや「相手に嫌われるんじゃないか」「自分の評価が下がるんじゃないか」という不安感や恐れから、「言いたいことを言えない」という悩みを持つ人からの相談を受けていたからです。

    その後、自分の研修にアサーティブ・コミュニケーションを組み込むようになり、多くの方がコミュニケーションに関する不安や課題を解決していくのを間近で見てきました。そのため、実を言えばずっと前からこのテーマで本を出したいという思いはありましたし、これまで出させていただいた本の中にもアサーティブ・コミュニケーションのスキルや考え方について部分的には書いてきました。

    ――では、なぜ今、このテーマで本を出すことにしたのですか?

    戸田 今このタイミングでアサーティブ・コミュニケーションの本を執筆したのには、いくつか理由があります。

    ひとつには2020年3月に『アンガーマネジメント』を出し、多くの読者に手に取っていただけた中で、先ほどもお話ししたように「怒りを相手に伝えるとき、どう表現すればいいのかをもっと詳しく知りたい」という声を数多くいただきました。そこで、「次のステップ」として出すことになった、という経緯があります。

    また、近年の社会状況の変化を受けた面もあります。たとえば、人々の仕事や働き方への価値観が多様化し、以前のような「阿吽の呼吸」や「1を聞いて10を知る」というコミュニケーション方法が組織内で通用しなくなってきていますよね。

    今は転職や中途採用も当たり前になり、さまざまなキャリアや価値観を持った人たちとチームを組み、結果を出すことが求められる場面が増えています。そのためには互いに尊重し合いながら建設的な対話を重ねていくという、まさにアサーティブ・コミュニケーションが不可欠なのです。

    加えて、2020年には大企業向けに、2022年には中小企業向けにパワハラ防止法が施行され、多くの企業が組織内でのパワハラ防止や社員の心理的安全性の確保に取り組むようになりました。そのような中でアサーティブ・コミュニケーションへのニーズが高まっていることも、本書執筆への後押しになりました。

     

    攻撃的な人への対応など豊富なビジネス事例を紹介

    ――長年研修で取り組んできたことを一冊の本としてまとめるにあたり、特にこだわった点は?

    戸田 数多くの事例を盛り込んでいることでしょうか。研修では、新入社員、管理職、役員など対象者が決まっていることが多く、職種や業種も絞られているので、研修を受けていただく方の役職や職種に合わせた事例をお話ししています。

    しかし、本の場合、どんな職種、立場の方が手に取ってくださるかわかりません。そこで、よく相談を受ける内容や、社会的に問題になっていることなどを考慮して、幅広い層の方が読んで活用できるように、広範な事例を紹介しています。

    ――たしかに、第5章の「ケース別対応例」では14もの事例が紹介されていますね。

    戸田 そうなんです。本書を読んだ方からは「アサーティブ・コミュニケーションの本で、ここまで多くのビジネス事例を取り扱っているものはこれまでになかった」とおっしゃっていただいています。

    ――事例の見出しを見ると、「攻撃的な相手に、どう伝えればいいか」「攻撃している自覚がない相手に応じるとき」「攻撃的な人と対話をするとき」など、攻撃的な人への対応が目立ちます。

    戸田 組織内で働く人たちの間にはどうしても役職の上下や経験・スキルの多寡の差がありますし、社外の取引先との間に力関係が生じることもあります。そうした中で、上から攻撃的な言い方や態度をしてくる相手に対して、自分の意見が言えなかったり、引きさがってしまったりして、あとから「なんで自分は言えなかったのだろう」「なんで引き受けてしまったのだろう」と悶々とストレスを抱えている人は、職種や業種、立場にかかわらず大勢いて、相談を受けることも多いです。ですから、事例の数も多くなっています。

    ――立場的に上の人が下の人に対して、どのような態度で接して、自分の思いや考えを伝えるべきか、ということについても詳しく述べられていますね。

    戸田 パワハラ防止法が施行されたことにより、部下を叱るときにどういう言い方をすればいいのかと悩んでいる管理職の方が増えています。また、役職が上の人ほど、それまでの経験値や成功体験がある分、「こういうときはこうすべきだ」「これが常識だ」という自分なりの考え方や方法論を強く持っています。

    成功体験に基づく考え方やノウハウは、仕事の確実性やスピードを上げていくうえでとても重要なのですが、一方でその人の無意識の思い込み、専門的な言葉で言えば「アンコンシャスバイアス」がコミュニケーションにネガティブな影響を与えることもあります。実際、下の人からすると、上の人の常識や「~すべき」を強く押し付けられることは、攻撃的なコミュニケーションだと感じてしまうことが多々あります。

    アサーティブなコミュニケーションを成立させるには、自分の思い込みに気づくことも大切なので、アンコンシャスバイアスの影響についてもひとつの章を使い、さまざまなケースを例に挙げて書いています。

    〈『アサーティブ・コミュニケーション』p.61より〉

     

    コミュニケーション力は才能ではなくスキル! 一歩を踏み出すきっかけに

    ――それぞれの事例で、「こういうときはこう言えばいい」と具体的な表現の仕方、相手への伝え方が書かれているのはわかりやすいなと思いました。

    戸田 本を読んだ方が知識を得て満足するだけではなく、読んだあとに「自分の職場で活用してみよう」「苦手な上司に伝えてみよう」と実践していただくことが大事なので、具体的な言い方、表現方法もできるだけ多く掲載しました。

    実際、第5章のある事例とまったく同じ状況で悩んでいた方がいらして、ここに書かれている通りの言い方で自分の思いを相手に伝えたそうです。そうしたら、今まで話が通じなかった相手とうまくやり取りができるようになったとその方からすごく感謝されたのですが、むしろ私のほうが「書いた内容を実践してくれて、ありがとうございます」という気持ちでしたね。

    ――コミュニケーションは何度も練習すれば必ず上達する、とも書かれています。コミュニケーションに苦手意識を持っている人は、この言葉に勇気づけられるのではないでしょうか。

    戸田 コミュニケーションスキルは持って生まれた才能ではなく、たとえば自転車の運転と同じように繰り返し練習して場数を踏んでいけば、徐々にコツをつかんで、誰にでも習得できることなのです。だからこそ、研修でもロールプレイング実習に力を入れていますし、「失敗してもいいから繰り返しやってみましょう」と伝えています。

    ――この本の中には「こういうときは、こう伝えればいい」という事例がたくさん載っているので、もし「相手にどう伝えればいいか、わからない」と悩んでいるならば、まずはここに書かれている言い方を真似することから始めてみればいいわけですね。

    戸田 そうですね。本に書かれていることを最初の一歩にしていただければと。自分が一歩を踏み出せば、それがきっと自信につながりますし、まわりの人との関係性も必ず変わっていくと思います。

     

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