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1.それぞれの生物に立ち現れる固有の世界を環世界という。人間は自然言語という環世界を得て、飛躍的な変容を遂げた。
2.西洋哲学の弁証法「正反合」は、内容よりも構造の正しさが優先される。一方、武道などで発展してきた「守破離」は、主観的かつ身体的な体験を基かのう幹とする。
3.他者の表現に接する時、そこに現れる環世界が自分の世界認識に染み込んでくる。
コロナの感染が拡大するとともに、私たちの生活は一変した。どこにも行けず、誰にも会えない。国境は閉ざされ、人々は同じ場所での待機を強いられた。抗えない閉塞感の中、ともすれば心も閉ざされてしまいそうな鬱々とした気配に満ちている。
「わたしたちは互いに完全にわかりあうことなどできない」。本書の最終章で、著者はこういう。しかし、だからこそ「わかりあえなさを互いに受け止め、それでも共に在ることを受け入れる」。そのための技法が「コミュニケーション」であるというのだ。
ほんの2年ほどの間に世界は様変わりした。もちろん、著者がこれを予期していたはずはない。だが、本書の副題にある「わかりあえなさをつなぐ」ことが今こそ必要だと感じるのは、要約者だけではないはずだ。
世界は分断の危機に直面している。しかし、著者はいう。「『言語』の持つ力によって、世界を覆う多種多様さをつなぎとめ、それらの間を行き来することができる」と。そうだ、私たちは言葉という乗り物に乗って、自由に行き来できるのだ。そして私たちは、言葉によって自身の認識を変え、未来をつくることもできる。
そんな可能性さえも提示してくれる本書は、気鋭の情報学者、ドミニク・チェンによるアンソロジーである。「言葉」「関係性」を軸に、話は哲学、武道、アート、テクノロジーにまで及ぶ。コミュニケーションとは、かくも多様で自由なものだと気付かされるだろう。
※本要約は、過去に作成した要約を最新版に合わせて一部再編集したものです。