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  • “汗水流して”一点物の「文喫」をつくり続けたい!~新たなステージに挑戦する“日販リノベチーム”|第2弾インタビュー

    2022年04月13日
    知る・学ぶ
    ほんのひきだし編集部 
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    ブックオーベルジュの箱根本箱(神奈川県・箱根)や、入場料のある本屋「文喫 六本木」(東京・六本木)、イオンモール上尾の「Park of Tables」(埼玉県・上尾)に、図書館と地域を繋ぐイベントパッケージ「Library Book Circus」――。

    全国各地でこれら「本のある空間」をプロデュースしているのは、日本出版販売(日販)のプラットフォーム創造事業本部でプレイス創造事業に携わるメンバーです。

    2015年4月にわずか4人のメンバーでリノベーショングループ(当時)としてスタートした彼らはさまざまなプロジェクトを成功させ、事業規模は年々拡大。2022年4月1日から新設された同事業本部の一翼を担う存在にまで成長しました。

    本編では、これまで主軸となって事業を進めてきた同本部プロデュース事業チームの染谷拓郎プロデューサー、同文喫事業チームの武田建悟プロデューサー、同プレイス企画チームの野口亮リーダーの3氏に、どのような想いでこれまでの事業に取り組んできたのかをインタビューしました。

    それぞれの立場からこれまでの事業を振り返ってもらいながら、これからの“本と本屋のあり方”を考えていきたいと思います。第2弾は文喫事業チームの武田建悟さんです。

     

    日販プラットフォーム創造事業本部文喫事業チーム
    武田 建悟プロデューサー

     

    武田 建悟(Takeda Kengo)プロデューサー/プロジェクトマネージャー
    2011年日本出版販売入社。新規事業部の設立時から、様々な企画やサービス開発、空間づくりを担当。2018年、入場料のある本屋「文喫 六本木」をオープン。2021年には百貨店との新業態を企画、同施設内にカルチャースクールと融合した「文喫 福岡天神」を手掛ける。文喫事業全体のプロデュースからブランド戦略までを担う。その他に、企業ライブラリー「READING ROOM」の立ち上げ、体験型企画「月刊koé」の開発も手掛ける。コンセプト開発やビジネスモデル設計といった企画プランニングから、プロジェクト全体の進行管理を行い、様々な外部企業の企画・プロデュースを担当している。




    他業界との経験が「自分の血となり肉となり骨となる」

    ――リノベーショングループができた当時、武田さんはどのような事業に携わっていましたか。

    2015年当時の日販の中期経営計画に「新空間の創造」といったテーマの中で書店をリノベーションする部署が営業推進室にできました。当時のメンバーは私を含めわずか4人。最初の1年は、人が来店してくれる機能を持つ「書店」をどのように持続可能なモデルにするかを検討しました。実際にはあゆみBOOKSを文禄堂へとリブランディングをし、イベントや出張販売を行ったりしました。

    ▲文禄堂高円寺店

    2016年以降はこうしたリモデルを全国の書店にも展開していくという流れになりました。ちょうど、出版業界でブック&カフェのモデルが話題になっていた頃です。事業モデルやオペレーションを検討し、飲食メーカー様と共創モデルを企画して書店様へ提案していきました。

    ――リノベーショングループが今のプロデュース事業などの仕事に変化していく端緒になったプロジェクトは何ですか。

    2016年末~2017年に、企業から業務受託した企業内ライブラリーの運営ですね。日販にとっても初めてのことにチャレンジさせてもらいましたし、その後の新たな本との出合いの場を創出していく流れのきっかけにもなったと思います。

    というのも、ある企業ライブラリーでは、継続してライブラリー内の本を入れ替えるという運用体制をとっています。つまり、最初の選書で終わるのではなく、ライブラリーの棚が生き続けているのが特徴です。

    こうした書店以外の業態に本を卸してその運営を受託するという新しいかたちがつくれたことで、他業種からの仕事がかなり舞い込むようになりました。

    ――これをきっかけにプロデュース事業の足腰ができてきた。

    最初は本を起点に仕事をしていて、カーディーラーや雑貨店、アパレルなどありとあらゆる人に、「本にはこういう効果があります」と本の導入を提案しました。ちょうど、2017~2018年に、日販は「everything around BOOKS」を掲げ、出版取次事業を土台に、人々の好奇心や創造力をかきたてる新たな事業の展開を進めていました。今思うと、本を起点にいろいろな業界とつながることができ、他業界についてもかなり勉強させていただきました。

    それが自分の血となり肉となり骨となりました。それによって、他の業界とも共通言語をもてるようになりましたし、今は本のノウハウだけでなく、他業界のノウハウや情報を元に、トータルでプロデュースすることができるようになってきました。

    自分の中で、つながりができた分だけ、本当に引き出しが増えたと実感しています。これがフェーズ1でした。

     

    本との距離感、新しいあり方を肯定する試み

    ――今はフェーズ2の段階に移行しているのですか。

    私が一から手がけた文喫 六本木(2018年開業)がフェーズ2ですね。文喫という場所ができたおかげで、いろいろな人たちから声をかけてもらえるようになりました。そこからさらに仕事の質も量も加速度的に深まり、広がっていった感じですね。

    ▲武田さんの仕事にとって大きなターニングポイントとなった文喫 六本木

    文喫 六本木については、いろいろありすぎて語り尽くせないですが、既存の商慣習にとらわれない新しいことにチャレンジして、社内の後押しもあって、それを乗り切ることができました。初めは、本屋が入場料を取ることについていろいろな意見もいただきましたが、これをやりとげた瞬間、違った景色がみえてきました。

    ――いろいろな意見の中で、文喫六本木をやり遂げることができたのは?

    本を扱う本屋の概念を変えられるところにモチベーションがありました。頭からお尻まで読書することだけが本の楽しみ方ではありません。本のある素敵な空間に囲まれて、心地よい時間を過ごすことでもいいと思います。そういう本との距離感というか、新しいあり方を肯定するという意味では、いいきっかけだったと思います。

    逆に言うと、本が身近ではない人でも行きたい場所、というのを私は常に意識しています。それは文喫に限らず、本好きでも本屋好きでもない自分が行きたくなる場所ができるかどうか、というのをずっと思い、考えています。どんな自分でも肯定される場所をつくる、そこに私自身のモチベーションがあります。

    ▲文喫 六本木の店内

    ――2021年3月に岩田屋本店内にオープンした文喫 福岡天神(福岡)についてですが、文喫六本木とは何が異なりますか。

    まったくの別物で、新規事業第2弾という位置づけです。似て非なるものとも言えます。これは百貨店の岩田屋三越様とともに、本と出会うための本屋「文喫」とカルチャースクール「学 IWATAYA」を併設した事業モデルです。そのため、ビジネスモデルの設計から改めて作り直しました。

    ▲岩田屋三越様のカルチャースクールと融合したビジネスモデルの文喫 福岡天神

    それこそ、グループ書店のリブロプラスや岩田屋三越様、スマイルズ様、設計施工会社様であったり、ここに関わった人は文喫 六本木の比ではないくらい多いです。私はそこの指揮を執る立場であり、プロジェクトマネージャーなので実務もこなさなければなりません。それこそ、何百人という人と一緒につくりあげることができたのが、本当にかけがえのない経験でした。

     

    「汗水流して、厳しい環境に自分を追い込んでいきたい」

    ――プロデューサーとプロジェクトマネージャーというポジションについて教えてください。

    旗振り役のプロデューサーはグランドデザインをつくって、各担当のスペシャリストを編成してプロジェクトの局面で方向性を判断するという役割です。プロジェクトマネージャーは実務面を担当します。事業の進捗や予算の管理、クライアントとの折衝、空間設計、本周りのプロジェクトなどを管理していくという立ち位置です。

    もっと言うと、プロデューサーは、具現化したいアイデアやこうしたいという思い・イメージを伝えるのが重要な仕事です。それを形にするのはデザイナーだったり、その道のスペシャリストがいますので、そこはプロにお任せします。

    プロジェクトマネージャーは何でもやります。例えば、大家さんとの家賃交渉もします。書店開業の準備においても、建築やデザイン関係の人との橋渡し役というのも仕事です。

    両方の仕事を同時にこなすのは簡単なことではないですが、どちらの仕事も経験していないと説得力がないと思います。先頭に立って仕事をしたことのない人にこの方向性でいこうと言われても、周りも躊躇するでしょう。

    ですので、私の中では、どちらの仕事もやり続けたい、そこは譲れません。苦労して汗水流したほうがいいんです。それで自分の血となり肉となり骨となる。いろんな人とのつながりが、プロデュース業に生きてくる。私自身は限りなく動いていたいし、厳しい環境に自分を追い込んでいきたい。

    ▲「文喫 福岡天神」と「学 IWATAYA」の共通入口

    ――これまでの文喫事業ではプロデューサーおよびプロジェクトマネージャーと両方の役割を担ってきましたが、これからの関わり方は。

    そうですね、文喫は店長やスタッフの皆が自分色を出してきているので、私は大きな方向性を示す旗振り役でいいと思っています。両方の役割で汗を流し続けたいと思っているのは、クライアント様への課題解決です。具体的な事例はまだ言えませんが、商業施設のコンセプトづくりや空間デザインの方向性を決めたり、事業のビジネスモデルを考えたりする、いわゆる業態開発の仕事に意欲的に取り組んでいきたいと思います。

     

    新しい文喫をつくり続けるためにも、人材育成が急務

    ――文喫事業の今後の方向性は。

    旗振り役として、新しい「文喫」をつくり続けたい。ですので、六本木、福岡天神に続く新たな文喫をつくっていこうと考えています。金太郎飴ではなく、一点物の“モノづくり”をしていきます。その地域ごとに共創するパートナーであったり、提供するサービス・価値を変えていきたい。ビジネスモデルも入場料をいただくのがすべてではありません。

    そのためには、人の育成が急務です。文喫という店舗は人材がいないと成り立ちません。逆にいうと、まったく血が通わない箱だけをつくっても文喫にはなりえません。その意味では、六本木では多くのスタッフが急成長してくれました。店頭にいれば、アイデアをアウトプットする場がありますので人が育ちやすい。六本木で働きながら面白いと思ったことを形にして、失敗も成功も経験して成長していきます。日販グループ内のリソースにとらわれず、外部からの人の採用も含め、人材の育成は今期の大きな課題でもあります。

    店頭では半年も現場にいると、一気に成長できます。文喫自体が、汗を流して人が育つ場になっていければいい。そういうスタッフが多ければ多いほど、世の中、他の業界とも渡り合っていけますし、いろいろな価値を変えられる人材を輩出できると思っています。

     

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    ◆文喫福岡天神:「文喫 福岡天神」2021年春、福岡県の老舗百貨店・岩田屋本店にオープン 本屋と百貨店の融合で、独自の「学び」を提供

     

    【第1弾インタビューはこちら】

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