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  • 「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションとするfreeeが出版レーベルを立ち上げた理由とは?

    2022年03月25日
    知る・学ぶ
    ほんのひきだし編集部 
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    「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、企業のバックオフィスの業務を効率化し自由に経営できる環境を提供するfreee株式会社。そのミッションの下、2021年には新たに出版レーベル「freee出版」を立ち上げ、書籍を刊行し、雑誌「起業時代」も創刊しました。

    SaaS型クラウドサービスを提供するfreeeはいわばテック企業といえるが、その事業会社がなぜ紙の出版事業に参入したのか。ここでは、freee出版責任者の銭谷侑氏(freee brand studio / brand manager)、雑誌「起業時代」の井口侑紀編集長にその理由を伺いました。




    銭谷 侑(ぜにや・ゆう)氏 電通コピーライターを経て、独立。夫婦でビジネスデザインファーム「the Tandem」を経営しながら、ソーシャルベンチャーLITALICO、リクルートホールディングスで兼業。2020年、freeeにジョイン。ブランドマネージャーとして、ブランドの全体戦略や、コミュニケーションづくりを担当。主なプロジェクトに「確定申告FES」「確定申告モンスター」「スモールビジネス映画祭」「#取引先にもリモートワークを」「freeeリブランディングPJ(2021)」など。「freee出版」責任者。

     

    井口 侑紀(いぐち・ゆうき)氏 1987年生まれ。大学卒業後、エンジニア、マーケターとしての経験を積みながら、編集者としても活動。WEB事業会社にて資格や人材に関するWEBメディアを複数立ち上げ。その後マイナビにて新規事業部門での農業メディア、人材サービス開発を担当。2021年「起業時代」立ち上げのためにfreeeへ。編集長に就任。その他、個人事業主として農業を支援するプロジェクトにも参画中。

     

    freeeはスモールビジネスを応援する企業

    ――まずは、freeeさんとはどのような企業なのか、ご紹介ください。

    銭谷 私たちは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、だれもが自由に経営できる環境をつくることを目指して、スモールビジネスに携わる方々に統合型経営プラットフォームを開発・提供しています。スモールビジネスというのは、1,000人未満の中小企業もしくは個人事業主の方たちのことです。

    スモールビジネスはしがらみなく大胆にアイデアをかたちにできるからこそ、今までにない多様な価値観や生き方、新しいイノベーションを生み出す起爆剤だと考えています。私たちは、彼・彼女らのビジネスを応援することで、世の中をもっと良くしていきたいと考えています。

    ――スモールビジネスの方々が自由に経営できる環境を実現する「統合型経営プラットフォーム」とは何でしょうか。

    銭谷 スモールビジネスをバックオフィス業務の手間から解放し、じぶんらしく自信を持って経営できるようにする仕組みのことです。具体的なサービスとしては大きく2本の柱があります。企業の会計周りを効率化するクラウド会計ソフト「freee会計」と、給与明細や労務管理を自動化する人事労務ソフト「freee人事労務」の提供です。

    いわゆる、お金と人、その2本柱を支えることで自由に経営できる環境を提供しています。今はこれらを起点にサービスをどんどん拡充しているところです。例えばその一つがfreeeカードです。これはスモールビジネスの起業の際に融資などを受けにくいところを支えていくサービスとなっています。

     

    本はスモールビジネスをヒーローにできる

    ――2021年10月5日にfreee出版のレーベルで書籍『ウルトラニッチ』を刊行し、出版事業に参入されました。今年1月19日には雑誌「起業時代」も創刊されています。いわゆるテック企業の御社が、紙媒体の出版事業に取り組む理由を教えてください。

    ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント
    著者:川内イオ
    発売日:2021年10月
    発行所:freee出版
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784910653006

    起業時代 創刊号
    発売日:2022年01月
    発行所:freee出版
    価格:660円(税込)
    ISBNコード:9784910653013

     

    銭谷 社内では、ブランド部門から出版レーベルを持とうという話と同時に、マーケティング部門でも雑誌を出したいということを考えていました。まず、ブランド部門が出版事業に注目した理由は、大きく3つあります。

    ひとつは、だれもが自由に経営できるヒントや考え方を、出版を通して広げていくためです。私たちは、クラウドサービスを提供するだけでなくスモールビジネスのための環境づくりまでしていきたいと考えており、その一つの企業活動として出版レーベルを立ち上げました。

    次に、リアルな「本」としての魅力です。本にはモノとしての愛着・価値がありますし、書店での出合いも生まれます。freeeは、ITサービスを提供している企業だからこそ、本を通して、今までにない出合いや、より深くfreeeの考え方や価値観を届けるきっかけをつくれると思いました。

    最後に、小さな書店もスモールビジネスのひとつだと思います。出版活動を通じて、小さな書店を応援することにつながるとも思いました。書店は、地域の文化の担い手でもあると私たちは感じています。そうした書店と、「スモールビジネスを、世界の主役に。」という新しい価値観を広げていけるのではないか、という可能性を感じているのです。

    井口 「起業時代」も「なぜ紙か」という問いに対しては、考えは一緒です。紙ならではの届けられる体験、その中でも雑誌の場合は起業アイデアを記入するワークシートや、やることのチェックリストのような、誌面に書き込める要素も取り入れています。こうした、WEBではできない体験ができ、WEBでは接触できない人に届けられるなど、そういう点が紙の良さだと思っています。

    ――出版事業に参入するにあたって、その手法は色々あったと思いますが、日販IPSに販売等を委託することを選択した理由を教えてください。

    銭谷 私たちは出版の素人なので、特にどのように本を流通させるかについて、かなり悩んだ末、大きく3つの選択肢にたどり着きました。1つが出版社と組む方法です。2つ目がトランスビューさんとの直取引、最後に流通・営業をすべて代行してくれる企業・日販IPSさんと組む、この3つですね。

    その中で、日販IPSさんを選択したのは、なるべく多くの人に届けたいという気持ちがあったからです。全国の書店さんへの流通に乗せることができるという意味で言えば、出版社と組むことでも実現できます。出版のプロである出版社と組むメリットはたくさんありますが、その出版社の色が良くも悪くも反映されるとも言えます。

    freee出版は、まだ手探りの状況にあります。freee出版らしいコンテンツや届け方は何か、ということをトライ&エラーしながら、自分たちで企画していくことに責任を負うことが大事だと思いました。それで、コンテンツの独立性が担保される形で全国の書店さんに流通できる、日販IPSさんにお願いしました。

    ――第1弾書籍『ウルトラニッチ』で何を伝えたいと思ったのでしょうか。

    銭谷 まずはスモールビジネスの魅力や面白さを第1弾の書籍で伝えたいと思いました。スモールビジネスの幅は広く、個人事業主から数百人規模の企業もあります。そこでスモールビジネスの何にフォーカスするのかと考えた時に、スモールビジネスは小さいからこそ大企業ではできないことや、今までにない価値を届けられるとか、世の中を面白くすることができる人たちだと思い至りました。

    そこで、新しいイノベーションを生んだり、ものすごいニッチで未知な市場を切り開いている10人を取り上げた本という企画が生まれたのです。この本を通じて、スモールビジネスは面白い、応援したい、自分も始めてみたい、そういう気持ちや思いを届けていきたいです。

    ――雑誌「起業時代」の創刊理念や編集方針について教えてください。

    起業・開業するならこの一冊。
    起業・開業を検討している人が明日から始動するための段取りを、わかりやすく網羅的に解説する雑誌です。先輩起業家33名のインタビューにより等身大の起業を知ることができる他、税理士・経営コンサルタント監修のもと、正確な最新情報をお届けします。
    ふつうの人が、フツーに起業できる時代へ。
    (freee出版公式HPより)

     

    井口 起業・開業を考えている人が、この1冊があれば起業できる、その段取りがわかること。そして、この時代に起業する人を取り上げることによって、起業・開業したいけど、ちょっと迷っている人の背中を押すことができればと思います。

    「ふつうの人がフツーに起業できる時代」という雑誌のキャッチフレーズがありますが、ここはかなりこだわっているポイントです。起業することは、一部の限られた人たち、特別なことというイメージが強いかもしれません。そうではなくて、もっと誰でも経営できるし起業できるということを伝えていきたい。

    起業・開業にもさまざまあって、パン屋や花屋をやりたいという人もいます。それは先ほどの『ウルトラニッチ』に出てくる人とは異なり、事業内容が特別なものではないですよね。

    私たちは起業を選択肢の一つにすることが当たり前になることを目指しています。選択肢が増えることで人生は豊かになりますし、さまざまな目標をもっている人たちの働き方や生き方も豊かになりますので、そういうところまで掘り下げていくことが、この雑誌のコンセプトにもなっています。

    ▲「起業時代」の創刊の説明をする井口編集長

    ――ほかにはあまりないジャンルの雑誌だと思うのですが、編集にあたっての苦労は。

    井口 起業に関する書籍はありますが、雑誌として体系的にまとまっているものは世に多くはないですね。ですので、誌面構成など何を伝えていくかは、プロの経営コンサルタントや税理士の方たちと一緒になって1ページ1ページ新しく創り出しました。

    編集に精通している人もいれば、起業への知見のある人もいますし、複数のチームで編集にあたっています。私は昨年に個人事業主として開業しましたので、かなり読者目線の内容になっていると思います。

    目標としては、結婚するなら「ゼクシィ」を買うというように、起業するなら、「起業時代」を買うとなるくらいにまで頑張りたいです。

    ーー創刊号は一時在庫切れとなり、重版もされました。

    井口 プロモーションにも魂を込めて、多くの方に「起業時代」を知っていただくことができたかなと思います。そしてそれ以上に、「これを待ってた!」というお声をたくさんいただきまして、世の中的にも起業・開業に対する熱が高まってきていることを実感できました。

     

    紙も電子も、オーディオブックも

    ――『ウルトラニッチ』も「起業時代」も、紙と同時に電子版も発売されていますね。

    銭谷 はい。電子書籍をいくつかの電子書籍ストアで販売しています。オーディオブックを販売する計画もありますが、まだ実現できていません。私たちとしては、障がいの有無を問わず多様な人たちに情報を届けることも大切にしています。

    電子書籍には音声読み上げ機能があります。紙の本のみより、多くの人に手に取ってもらえますので、電子書籍はマストの条件で日販IPSさんとは話しをしていました。

    井口 雑誌も同じですね。同時に電子版を発売しています。読書シーンも多様化していますので、お好きな方を選べるというのは大事だと思います。

    銭谷 日販IPSさんに決めたのは、電子書籍であったり、オーディオブックであったり、こうした私たちの挑戦や思いに応えてくれるからでもあります。freeeが出版をやることに対して、真摯に前向きに取り組んでくださったのも、ご一緒したいと思ったきっかけでした。

    ――第2弾の書籍についてはいかがでしょうか。

    銭谷 第2弾は『倒産した時の話をしようか』が4月20日に発売となります。著者がfreee社員の関根諒介というもので、個人活動として、武蔵野美術大学大学院で「倒産」について研究しています。それを書籍化します。

    関根自身の前職は大手銀行員で、担当していた中小企業が倒産してしまい、銀行マンとして何もできなかったのが、本人は悔しかったようです。そこで中小企業の方を応援するために、freeeに転職してきました。

    彼が研究を通じて訴えたかったのは、倒産の意味をネガティブから、もう少しポジティブなものに変換していくことです。倒産の意味を変えることができれば、だれもが安心して挑戦でき、成長し続けられる社会になるのではないかと考えたようです

    この書籍には倒産した企業の社長8人のインタビューを掲載しています。倒産社長たちが赤裸々に語るエピソードからは、「失敗の原因」のみならず、失敗を唯一無二の資産にして、「再び立ち上がるためのヒント」を知ることができます。

    今悩みを抱えている起業家・経営者をはじめとして、全ての「挑戦する人」の背中を押す一冊になっています。今から事業を始める人であったり、ビジネスパーソン含めてビジネスに挑戦したいと考えている人たちに手に取っていただきたいです。

    ――今後の書籍の出版予定は。

    銭谷 1年に2~4点を刊行したいですね。第3弾以降は明確には決まっていません。ただ、いくつかアイデアはあります。例えば、スモールビジネスと子育てをテーマにしたもの。アメリカでは、小学生にレモネードを販売させるなど、教育としてビジネスを若いうちに経験させています。

    つまり、スモールビジネスをテーマに親子が考えたり、アクションしたりすることで、自分たちが何のために生きているのかを考えるきっかけになる本を作りたいと話しています。

    また、中小企業やスタートアップ向けに、あらゆる業務改善ハックの考え方やノウハウを体系化した本を出したい、という話もしています。

    特にfreeeのユーザーさんから「こういう本を出したい」という問合せや要望がたくさんあります。上記の業務効率化もユーザーさんから提案いただいたものです。スモールビジネスを経営しているユーザーさんから生まれる新しい価値観、ノウハウを本を通じて広げていけると、自由に経営する人がどんどん広がっていく、そういう好循環をつくっていきたい。

     

    書店を中心にスモールビジネスを盛り上げたい

    ――昨年には、東京・下北沢の書店B&Bで「事業会社が出版レーベルを立ち上げる可能性とは?」と題して、サイボウズやNewspicksの担当者と一緒にイベントに出演されましたね。

    銭谷 ITサービス企業はこぞって、リアルの本や本屋には価値があるという話をしました。また出版レーベルが、ブランド活動、PR活動にもつながるという点が共通していたのも面白かったですね。

    東京・下北沢の書店B&Bでのイベントの様子(左下が銭谷さん)

    freeeのようなBtoBサービスは、利便性を追求するだけだと、中長期的にはコモディティ化し、差別化しづらい世になると思っています。だからこそ考え方や価値感、世界観にまで愛着を持ってもらい、中長期で深い関係性を築いていくことが企業活動として大事になってきます。

    企業の考え方や価値観を広げていくリッチな手段になりえるポテンシャルが出版にはあります。そこを再認識しました。

    ――イベントの折には、B&Bと書店を応援する企画についても話をされたと伺いました。

    銭谷 小さな書店を応援する活動については具体化するところまではいっていません。私は、その地域のスモールビジネスの魅力を伝える役割、新しい存在価値が書店にはあると思っています。その地域のスモールビジネスを、書店を中心にどんどん盛り上げていく活動ができるのではないかと思っています。

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