'); }else{ document.write(''); } //-->
1.「絶対に押すなよ!」のように、日常的に使われる言葉には「意味」と「意図」にずれが見られる場合がある。こうしたやり取りを成立させるには、文化や文脈などの広い「取り決め」の共有が必要となるため、AIには判断が難しい。
2.言語学者の仕事は「正しい日本語」を守ることではない。「正しい日本語」はスーツやパーティードレスのように、状況に応じて使い分けられるべきだ。フォーマルな場で使えない日本語はパジャマや部屋着のようなもので、これらを「服ではない」と言えないのと同様に、そういった日本語を「日本語ではない」と断じることはできない。
「バーリ・トゥード」とは「何でもあり」という意味の格闘技のジャンルだが、本書はまさに「バーリ・トゥード」な言語学の読み物である。要約者も言語学を学んだ者のはしくれで、本書の言葉を借りれば「言語学という魔境に迷い込んで指導教員という名の魔王から首の後ろあたりに『げんご』という焼き印を押されてしまった者」の一員である。分厚い教科書で見たような堅苦しい理論が、プロレスラーがリング上を飛び回るがごとく、自由に軽快に展開されるのには脱帽した。「コピュラ文」「生成文法」「相互知識のパラドックス」など、一見とっつきにくそうな専門用語が登場するものの、それが身近な例やエピソードとともに平易な言葉で説明されるので、言語学初心者にもわかりやすい。何なら用語は読み飛ばしても理解できる(!)ほどだ。普段何気なく使っている言葉を改めて考え直す機会となるだろう。
「抱腹絶倒必至」との触れ込みだが、広告に偽りなし。大笑いしながら読める一冊である。気軽な言語学の入門書としてももちろんだが、何かと暗い気持ちになりがちな今、本書のようなユーモアに触れて大笑いすることができる機会は貴重だ。なお、タイトルからもわかるように著者は熱烈なプロレスファンで、文章のいたるところにプロレスネタが散りばめられているので、プロレスファンはさらに楽しめること受け合いだ。