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1.生きがい感とは「腹の底から湧き出る喜び」だ。理由などない、ただ「やりたいからやる」活動から感じられるものである。
2.生きがいの欲求とは「個性的な自我の欲求」であり、これが満たされた時に人は高揚を感じる。たとえ他人から見たら「成功」であっても、本人が高揚を感じなければ成功ではない。
3.人の生きがいは病や死などによって簡単に奪われてしまう。これは時代を経ても変わることはない。
4.生きがいを失った人は疎外感を感じ、孤独になり、自殺を考える。そうした人は、自分の存在が何かのために必要だと、強く感じさせてくれる新しい生きがいを求めてもがいている。
パンデミックに翻弄されているあいだ、楽しみにしていた行事やイベント、やりがいのある大きな仕事が頓挫して、突然ストンと暗い穴に落ちてしまったような感覚だったのではないだろうか。ひとりで過ごす時間が急に増え、自分の生きがいとは、生きる意味は何なのかと、考え込むこともあったかもしれない。
『生きがいについて』を読むと、今も昔も人間の本質が何も変わっていないことを、改めて思い知らされる。本書が初めて刊行されたのは1966年、今から約半世紀も前のことだ。ハンセン病療養所での体験をもとに、「生きがい」についての思索を書き記した一冊であるが、今読んでも何ひとつ色褪せていないことに驚きを隠せない。生きがいというものが人間にとっていかに大事で、生死をも左右する重大な問題であるかが浮き彫りにされている。
新型コロナ対策において「命と経済活動、どちらを優先させるか」という論争は絶えず出続けているが、経済活動=生きがい、という見方もできるだろう。特に芸術や音楽など「活動を行うこと自体に喜びがある」という分野や、「店に立つことが生きがい」というような店主なども、そういった意味での死活問題を併せ持つ。旧約聖書には「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉があるが、衣食住が足りることと生きがいの欲求が満たされることは、必ずしもイコールではないことは誰もが感じうるところだろう。
本書が長く読み継がれる理由は、本質を突いた普遍性にある。先が見えない今だからこそ、じっくりと向き合いたい名著である。