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1.ハイ・テック・ハイは理念に公正性を掲げ、子どもたちが集い、その身体的・認知的能力にかかわらず等しく価値ある人間だと感じられることを目指す学校である。ここでは、プロジェクト型学習が学びの中心に据えられている。
2.プロジェクト型学習の上位概念が「探究」である。探究する学びは、生徒が自らの経験と理解をもとに自らの意味合いを構築する価値観に基づく。この学習で身につける実験のプロセスや試行の方法は、テストが終わったら忘れてしまう知識とは異なり、一生の財産となりうるものである。
世界の将来を担う子どもたちが今受けている教育は、果たして将来に本当に必要とされる能力を養うことができているのだろうか。今の学校の形式が広まったのは、実は工場労働を中心とした産業に非常に都合がよかったためであったことは、あまり知られていないように思う。工場労働からより自由な働き方へとライフスタイルが変化しても、教育手法だけはそのまま取り残され、現在は経済格差や教育の格差が課題とされている。
課題を抱えるのは日本だけではない。大学への進学が将来の経済状況に直結しやすいとされるアメリカで設立された学校である「ハイ・テック・ハイ」は、将来社会で必要とされる学びと大学進学の2つを両立させるための取り組みを行ってきた。同校の「プロジェクト型学習」(PBL)と呼ばれるその手法を、いち早く日本に導入したのが本書の著者だ。
この本は、めまぐるしく変化する現代において、ハイ・テック・ハイ校が出した1つの教育のありかたを紹介するものである。家庭環境も多様で、その身体的・認知的能力も多様な子どもたちに対して、徹底して自分の役割への認識と他者への尊重を貫く人々の姿勢は、決して理想論にとどまらない。同校が目指す「公正」な社会を実現する、「探究」を共通項とした学びの奥深さと可能性を感じてほしい。社会を生きる責任ある大人として、子どもたちへ示すありかたを模索したいと考えるならば、本書が有益な手がかりとなるにちがいない。