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  • 『いやです、だめです、いきません』コロナ禍で犯罪傾向にも変化、子どもたちの身を守る術を専門家に聞く

    2021年03月31日
    知る・学ぶ
    日販 ほんのひきだし 吉田
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    時には言葉巧みに誘い出し、またある時には強引に迫ってくる犯罪者。コロナ禍の今、子どもたちを狙う犯罪傾向にも変化が表れているようです。

    3月24日(水)に発売された『いやです、だめです、いきません 親が教える 子どもを守る安全教育』は、親子で犯罪被害の対処法を学べる一冊です。著者の清永奈穂さんに今の子どもを狙った犯罪の傾向や本書のねらいを伺いました。

    撮影 HARUKI

    清永奈穂
    NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事。立教大学大学院博士課程前期課程修了後、大学助手などを経て、2000年に株式会社ステップ総合研究所を設立し、自身も所長に就任。子どもを犯罪・いじめ・災害などから守るための研究と、全国各地の自治体・幼稚園・保育園・小学校などで独自の体験型安全教育を実施している。これまでの著書に、ムック「犯罪から園を守る・子どもを守る」(メイト)や『犯罪からの子どもの安全を科学する』(共著/ミネルヴァ書房)など。

     

    衝動的で性急、コロナで変わる犯罪傾向

    ―― 清永さんは、普段どういった活動をしていらっしゃるのでしょうか。

    主な活動は2つあります。まず1つ目に、実際に起こった事件や犯罪の原因や動機について研究をしています。実際に事件現場に行って調査をすることもあれば、犯罪歴のある方や警察官に協力を仰ぎ、子どもたちが狙われやすい環境や状況を調査・分析しています

    2つ目は、先ほどの研究・調査の結果をもとに作った安全教育プログラムを、各地の自治体や幼稚園・保育園、小学校などで教えています。地方では、このプログラムの講師・指導者も養成しています。

    ―― 犯罪歴のある方からはどんな情報を得られるのでしょうか。

    罪を犯す人の多くは、自分の衝動的な感情よりも「捕まらない」「失敗しない」ことを優先しています。場合によっては、半年近くかけて現場周辺を下見するなど用意周到に準備を進めていることもあるくらいです。

    「どのくらいの距離から狙っているのか」「下見では何を見ているのか」などくわしく話を聞き、犯罪者の行動を逆算し対処することで、子どもたちに降りかかる犯罪を未然に防げると考えています。

    ―― しかし昨年から、新型コロナウイルスの影響で「衝動的な犯行」が増えているそうですね。なぜでしょうか。

    コロナ禍では、小学校の休校もあり、外に出る子どもが少なくなりました。そのぶん「犯罪の機会」が減ったことで、外で子どもを見つけたら、少ない接触機会を最大限生かすため、偏執性と攻撃性を増し、暴力的なものとなってきています。

    しつこく子どもに付きまとったり、「コロナの検査をしたい」と持ちかけたりあの手この手の手口による事件もありました。さらに、防犯カメラがあっても気にしない、後先を考えない犯行もあります。

    ―― 防犯カメラがあっても、ですか。

    防犯カメラは「犯行後の追跡」には有効ですが、犯行を止めたり、犯行直後に犯人を追いかけてはくれません。

    未然に犯行を防ぐには「防犯ボランティア」によるパトロールなどの活動が非常に有効なのですが、高齢化によって減少傾向にあったなか、コロナの影響でさらに少なくなっています。

    それから今、屋外ではほとんどの人がマスクをしています。近づいてきた人が、怪しい人なのかどうかも判断がしづらい。この状況には、かなり危機感を覚えています。

    ―― マスクは確かにそうですね……。小学校の休校は安全教育プログラムの実施にも影響を与えていそうですね。

    そうですね。私たちが自主開催している安全教室も、4月から6月は休校の影響で、実施することができませんでした。先生たちも、コロナ関連の対応に追われており、子どもも大人も落ち着かないようでした。

     

    まずは「危ない目にあわない」ための防犯を

    ――『いやです、だめです、いきません』は、こうした状況下で執筆されました。岩崎書店からどのような経緯で依頼があったのでしょうか。

    〈岩崎書店編集部〉 清永さんには、NHKのテレビ番組「子ども安全リアルストーリー」の書籍化の際にご協力をいただきました。こちらを制作する過程で、子どもたちの周囲にはさまざまな危険が潜んでいることを再認識し、そういった危険から子どもたちを守るための本を作成したいとお伝えしました。

    NHK子ども安全リアルストーリー
    著者:NHK「子ども安全リアルストーリー」制作班
    発売日:2019年09月
    発行所:岩崎書店
    価格:3,520円(税込)
    ISBNコード:9784265802500

    ―― 清永さんは、このお話を聞いてどういった本にしようと思いましたか。

    今すぐ環境を変えるのは難しいので、まずは子どもたちが自分の身を守る力をつけられるような本にしたいと思いました。昨年、危険な目にあった子どもたち約6,000人に話を聞いてみたところ、走って逃げることができたのはだいたい半数くらい。逃げられなかった子のうち20%が「何もできなかった」と回答し、さらに、防犯ブザーを持っていても、鳴らせた子どもは全体の2%しかいませんでした。

    先ほどお話ししたように、コロナ禍で子どもたちが狙われる可能性は高まっていると感じています。本を作るにあたっては、大人も子どもも「やってみよう!」と実践したくなる内容にしようと意識しました。

    ―― 本書で紹介されている防犯方法には、どういったものがあるのでしょうか。

    まず本書では、危ない目にあわないように「おさんぽマップ」の作成を勧めています。

    「おさんぽマップ」は、お家の周りや通学路をただ地図にしたものではありません。親子で一緒に周辺を散歩しながら、「どんなところが危ないと思う?」「どんなところが安全だと思う?」「困ったときは、どこに行けばいいかな?」と一緒に考えて、それを地図にするのです。それによって子どもたちは、人目に付かない死角や、いざとなったら助けてくれる大人のいる場所を学ぶことができます。

    次に、本書には、危ない目にあってしまったときの対処方法も収録しています。

    千葉県警察本部の調査で、タイトルにある「いやです、だめです、いきません」という拒絶の意思を伝えることは、大きな効果があることが分かっています。拒絶しても付きまとってくる場合は、やはり「走って逃げる」が基本的な対処となります。本では、そういった基本的な危機を乗り越える方法を紹介しています。

    コロナの影響で親子で家にいることも多いと聞いているので、お父さんには怪しい人役になってもらい、おうちで特訓してもらいたいですね(笑)。

     

    拒絶するだけではない、助け合う社会を作るためのガイドに

    ―― 本書は『いやです、だめです、いきません』というインパクトのあるタイトルがまず目を引きます。短くて実践もしやすい、いいタイトルだと思いました。

    実はこの『いやです~』というタイトルに決めるには、少し迷いがありました。拒絶の意思を示すことはたしかに防犯には繋がります。しかし、声をかけてきた人が本当に助けを求めていた場合はどうでしょうか。「拒絶をすることが防犯になる」と教わってきた子どもが大人になったとき、困っている子どもに声をかけることができるでしょうか。

    自分の身に嫌なことが起こった時は、自分できっぱり断ってほしい。一方で、誰かが困っていた時には「大丈夫ですか?」と言えるような人に成長してほしいと思って書きました。

    大人はみんな「危ない人」というわけではありません。子どもたちを見守ってくれる、頼れる人もたくさんいます。実際に、危ない目にあいそうになった子どもが「大丈夫?」と声をかけられたことで助かっている例もあります。

    本書が、「いやです!」と拒絶するだけではなく、お互いに助け合う環境作りの一助になればと思います。

    ―― 本日はありがとうございました!

    いやです、だめです、いきません
    著者:清永奈穂 石塚ワカメ
    発売日:2021年03月
    発行所:岩崎書店
    価格:1,320円(税込)
    ISBNコード:9784265802586

     

    関連書籍

    とにかくさけんでにげるんだ
    著者:ベティー・ボガホールド 安藤由紀 河原まり子
    発売日:1999年02月
    発行所:岩崎書店
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784265006168




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