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  • 「すべてのページに感動がある」インタビュー傑作選が編集者の情熱で異例のベストセラーに

    2021年02月20日
    知る・学ぶ
    ブックジャーナリスト 内田 剛
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    424ページというボリュームあるインタビュー傑作選『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』が、2020年11月30日の発売から2か月で18万部突破という異例の大ヒットになっています。

    なぜこれほどまでに人の心をつかんだのでしょうか。ベストセラーとなった背景には、一つの雑誌が長い間積み重ねてきた蓄積と、作り手の熱意がありました。編集を手がけた致知出版社の小森俊司さんに、本づくりに対する想いとヒットまでの道のりについて熱く語っていただきました。

    1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
    著者:藤尾秀昭
    発売日:2020年11月
    発行所:致知出版社
    価格:2,585円(税込)
    ISBNコード:9784800912473

     

    今回取材にご協力いただいた方

    致知出版社 書籍編集部 小森俊司さん

     

    どこから読んでも感動できる。この本にすべての情熱を注ぎました

    ―― まず刊行のきっかけからお願いします。

    小森 私が致知出版社に入社して17年ですが、10年間は直販の月刊誌である「致知」で各分野の第一人者の方々に体験談などを伺う取材をしていました。その中でいつも感じていたのは、11万人いらっしゃる愛読者の方たちが、「致知」を特別な存在として大事に保管してくださっているということでした。

    「致知」には創刊以来42年分、取材の本数でいえば1万本以上の蓄積がありまして、そこから特に心に残る話を集めればすごい本になるはず。より多くの読者に届けるためにはどのようなかたちに整えればよいのか、妥協なく考え抜きました。

    ――『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』というタイトルも、本書のポイントが一目で伝わりますね。

    小森 二転三転しつつ決めたタイトルです。文章量がありますので、読みやすくするために365日のカレンダー形式にして、1日1話1ページで完結させました。どこから読んでも、登場してくださった方々の話に触れ、心を熱くしていただきたい。そんな編集者としてのストレートな想いをタイトルに込めました。

    意識したのは、著名人もそうでない方も同じ1ページに収めたことです。ビジネス、思想、スポーツ、科学、芸術などジャンルのバランスも意識しました。幅広い方の体験談に触れることによって、人間学を学ぶことができるのが「致知」の良さでもあります。

    ―― たくさんのストックから365本に絞るというのは、大変な作業だったと思いますが。

    小森 「すべてのページに感動がある」を基準に選定しました。

    しかし、かなり絞ったあとで社長から「もっと練り上げるべき」とアドバイスされるなど、苦労はありました。そこで私一人で考えるのではなく、部員全員の衆智を集めてさらにブラッシュアップしました。

    ―― 致知出版社社長であり監修者でもある藤尾秀昭さんは、どのような方でしょうか?

    小森 「致知」=藤尾です。月刊誌「致知」の創刊号から携わっている、まさに生き字引そのものです。とにかく情熱の人で、繊細さもあり、若い社員の熱意をくみ上げてくれます。

     

    ジャケットにもこだわりが詰まっている!

    ―― シンプルながらメッセージが強いジャケットですね。

    小森 店頭で手にしていただくきっかけとなるように、稲盛和夫さん、王貞治さん、羽生善治さん、山中伸弥さんなどおもだった掲載者を載せています。箔押しで表現した「読めば心が熱くなる」というメッセージや、読みどころがストレートに伝わるカバーになっていると思います。

    ―― カバーを外してもいいですね。収録された方の名前がズラッと並んでいます。

    小森 力を入れたところです。表紙に全員分の氏名を入れたのは、装幀家さんのアイデアによるものです。人名は絶対に間違えられないので、表紙、目次、巻末索引にも入念なチェックが必要でした。また収録にあたっては、故人の方は特に著作権継承者の許諾が必要だったので苦労しました。▲白いカバーを外すと、黒の表紙に365人の登場者の名前がずらっと並んでいる

     

    初版8,000部から驚異のスタートダッシュ!

    ―― 編集に際し、意識した読者ターゲットは?

    小森 普段からビジネス書に関心が高いビジネスパーソンです。しかし発売後は、もちろんビジネス街での売行きも良かったのですが、都心だけでなく、郊外のショッピングモール内の書店さんなど、女性の多い店舗でも反響がありました。

    「心が熱くなる」というタイトルから、感動を求めて手にされたのではないかと分析しています。本書には女性の話も多く収録されていて、教育や子育てにも参考にしていただけると思います。

    単なる「仕事の教科書」としてだけでなく、人生の根幹にある「人間力」を高めるためのテキストとしても活用していただけたらうれしいですね。長年にわたって雑誌「致知」で培われてきたことが、この本に結実したのではないかと思っています。

    ―― 女性からの支持が大きいのですね。やはり口コミや書店での展開が拡販につながったのでしょうか?

    小森 何より書店さんでの目立つ展開が好反応につながりました。白地に黒の表紙ですから単品では目立たなくて、1冊2冊では読者の目に留まりにくいこともあるかと思います。ビジネス書だけでなく、「新刊話題書」コーナーなどで多面展開していただくと、効果があるようです。▲三省堂書店有楽町店での展開のようす。カバーを外しておくことで登場者がわかる工夫も

    ―― 発売当初の動きは具体的にどうだったのでしょうか?

    小森 初版8,000部からのスタートでした。書店様向けの注文書には、「先行きの見えないコロナ禍で、この本を心の糧、指針にしていただきたい」という、この本に賭ける想いを手書きの文字で添えました。注文のFAXや感想のお手紙など数多くの反応をいただき、うれしかったです。

    発売1週間で重版が決まって累計4万部。その後も順調に推移して、発売1か月で累計10万部という勢いです。いまは12刷で累計18万部にまで伸びました(2月5日現在)。

    ―― 定価2,585円という高単価ですが、異例の売行きですね。

     値段は高めですが、それ以上の価値があると思っています。テレワークの推奨で在宅勤務の方も多いので、重量感のある本でも抵抗なく手にしていただいているようですね。

     

    「致知」ブランドファンへのPRとSNSでの販売促進が成功

    ―― 書店店頭以外の販売戦略についてお伺いします。

    小森 弊社はSNSに強みがあります。毎日配信しているメルマガの登録者数は13万人。Facebookにも約10万人のフォロワーがいらっしゃいますので、まずはこの「致知」を支持してくださる方たちに向けた情報発信に力を入れています。

    ―― 新聞広告を拝見しましたが、書店でも軒並みランキング1位ですね。

    小森 書店の担当者の方も、自らPOPを作って盛り上げてくださっています。「読者カード」の反応もよくて、感想コメントを販促材料として活用させていただいています。現在、弊社ホームページの特設ページ上で365日ごとの登場者のお名前を載せているのですが、そこで読者の声も公開しています。

    ―― 今後の宣伝戦略についてお聞かせください。

    小森 これからはより幅の広い読者に向けて、新聞などでの告知を行なっていきます。毎週開催しているオンラインイベントでは、期間限定で、この本に出てくる3人の方を特別ゲストとしてお招きしています。そのイベントも、毎回視聴回数は8,000回近くとなるなど、本書の魅力を知っていただく試みになっていると思います。

    ―― 最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

    小森 本書はきっと、「仕事」だけでなく「人生」の手引きにもなるはずです。コロナ禍で他者との直接の触れ合いが少なくなってしまいましたが、この本には365人の先達たちがいます。読んでいただくことで、実体験にもとづいた貴重なメッセージを受け取ることができます。本書を通して人間の持っている秘められた力や可能性に気づき、それに心が救われるという「読書体験」をしていただけるとうれしいです。

    ―― 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

    取材を終えて
    『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の素晴らしさは本物だ。読めば誰もの「座右の書」となり大切な誰かに贈りたくなるだろう。「人間力」を追求し続けて42年という致知出版社の叡智に編集者の情熱、そしてこの本に惚れ込んだ書店員たちの「売りたい」という気持ちが新たな読者を呼び、ベストセラーとなった。しかし10万部突破は単なる通過点に過ぎない。沸騰するように熱く本書について語ってくれた小森さんはインタビューの最後にこう語った。「本気でミリオンセラーにしたいのです。躊躇わずとことん攻め続けていきます」。令和の「人生の教科書」は次代に刻まれるべき財産。これからも多くの読者の心を熱くさせ続けるだろう。

    ▼元書店員であり、「POP王」としても知られる本記事のライター・内田剛が作成したPOPがこちら




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