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「もちろん」と「オフコース(of course)」で【もちコース】、「どうもありがとう」を略して【どーまり】、行き当たりばったりに“主張”的な意味合いの「ism」を加えた【イキアタリバッタリズム】……。
「なにそれ~」と思わずクスッと笑ってしまいそうなこの言葉の数々、実は、大正時代半ばから昭和初期にかけて実際に使われていた“新語・流行語”なんです。
ここ数年も「卍」「ぴえん」「◯◯しか勝たん」「きゅんです」などさまざまな言葉が流行しましたが、今はおじいちゃん・おばあちゃんでも、当然ながらかつて若者だった時代がありました。これらは、そんな頃に流行っていた言葉たち。「なんでそんな言葉が流行ったの?」を紐解いていくと、当時の世相や、生きた言葉の豊かさを感じられることでしょう。
1月末頃に左右社から発売される『戦前尖端語辞典』は、戦前、スペイン風邪が大流行した激動の時代をたくましく生きた人々の、自由奔放な新語・流行語が楽しめる一冊。大正8年から昭和15年にかけて発行された新語、流行語辞典から、発想が新鮮なものや、今は一般的に使われるようになった言葉の知られざる由来などが厳選のうえ収録されています。
生活、学生、外来語、思想、女学生、文化、医療、社会、隠語の9つのジャンルにわかれており、その言葉が生まれた背景、関係する事件や、言葉の使い方も知ることができるのが特徴です。イラスト・漫画は山田参助さん。
収録語の例
【生活】イージー・マーク/インテリ賤民/さよなら五分/あくたもくた/石部金吉/海億山億/今日は帝劇明日は三越/薩摩守/すこやけ/どーまり/にこぽん式/ノー・バット・フィーリング など
【学生】音痴/彼女/ざくばら/第七天国/アルノン・オルンナノ・シルリルハ・バルカニ・オオキインナル/オブラート演説/のす/フリューリングスエルワッヘン/万年床 など
【外来語】スペボー/チョコマン/ア・ラ・パージュ/ガルソンヌ/チェリオ/ムチャーチャー など
【思想】イデオロヒメ/テクテクズム/ナオミズム/イキアタリバッタリズム/エガ/黄金万能主義/半獣主義/友愛結婚 など
【女学生】ありのすさび組/ガッカリアイエン人/見た/もちコース/もののあわれ/アマちゃん/イミシン/おすてーき/カット・カット/タギる/てよだわ語 など
【文化】浅草式/アラシの孤児/オン・パレイド/脚線美/銀ぶら/グロテスク/傾向小説/戦線異状なし/築地型 など
【医療】アブノーマル/トニック/春的気分/職業病/ヒステリー/ホーム・シック など
【社会】仰附葉書/学費稼芸者/まからずや/サイレン・ラブ/何番学校/ハンドバック・ボーイ/ビル子/ロマンスカー など
【隠語】コンビーフ/ありんす国/愚連隊/こます/シャッポ/メリケン など
『戦前尖端語辞典』
・編著:平山亜佐子、絵・漫画:山田参助
・本体価格:1,800円+税
・発行所:左右社
・四六判並製
・ISBN:9784865280111
言語学者・金田一秀穂氏推薦!!
「さよなら5分」「モダンジイ」「カネリプルネリ」「ありのすさび組」「高等内侍」
どんなおじいちゃんやおばあちゃんにも、ヤンキーやギャルだった時代がある。
無知で愚か。生意気で無定形、粗雑。感性を精いっぱい表現する言葉たち。
彼ら彼女たち、かつての群衆は、驚くほど前衛的。自由、放埓で無責任。物事を深く見通してしまう直感。堅実な日々の暮らしを続けながら、ゲームなんかなくたって、テレビなんか見なくたって、十分にふしだらで、危険。あまりにも豊饒。
この豊かさを私たちはいつ失ったのだろうか。
ここに豊かな発想の源泉がある。
忘れてはなるまいぞ。
著者より
大正半ばから昭和初期の人々は、驚くほど激動の日常をおくっていた。一方、映画やレビュー、ファッションを楽しみ、次々に上陸する新思想、新芸術にわれさきに群がった。流行語から見えてくる彼らは、ときに楽観的に、ときに自虐を交え、いじらしくも逞しく生活している。この余裕は一体どこから来るのか? 想像以上のパンデミックに見舞われている一〇〇年後のいま、あらためて過去の人々に向き合い、彼らの生活を「言葉」から見直してみよう。ここに、不透明な時代をほんの少し楽しく生きるヒントがあるかもしれない。