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  • 夢眠書店開店日記 第11話:作家・装幀家ユニット「クラフト・エヴィング商會」の仕事②

    2016年04月30日
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    夢眠:私は「冒険者」とか「魔法」とか「アイテム」といったファンタジーな要素のものも好きなんですけど、お二人の作品には、本の中に登場する架空のものを、実際に形ある“もの”に落とし込んでいることもありますよね。言葉だけじゃなくて、それを実物にしてみようと思ったのはなぜなんでしょう。

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    篤弘:頭の中にある考えを物語にして、その物語に登場する「もの」を作ることももちろんあるんですが、全く逆の場合もあるんです。まず、「もの」が先にあって、「これがこうしてここに来るまでにはどんないきさつがあったのか」と空想して物語を作っていく。どちらかというと、その方が多いですね。

    夢眠:「この物語にふさわしい木の実を探そう」というのではなく、例えばハートの形の木の実を先に見つけて、そこから発想が広がってお話ができていくんですね。

    浩美:そうです。「この石、まるで心臓みたいだね」って。

    夢眠:純粋な疑問なんですけど、最初から「何か面白いものを拾いに行こう!」と思って探しに行くんですか?

    浩美:いえ、わざわざ「拾いに行こう」というのはないですね。たまたま、そのあたりに落ちていたものを拾いあげる、という感じです。

    篤弘:いかにも意味ありげなものより、そうじゃないものの方が物語はつくりやすいような気がします。一見、ただのガラクタで、何の意味を持っているのか分からないんですけど、なぜか気になるっていうのが一番なんです。

    夢眠:意味ありげすぎると、そこから勝手にストーリーができてしまいますよね。

    篤弘:そうなんです。意味ありげすぎちゃいけないんですよ。

    夢眠:そこから、物語として色を付けていく作業をしていくんですね。

    篤弘:僕らが色付けしてゆくというより、「もの」自体の引き寄せが強いので、僕らはほとんど何もしていないに等しいんですよ。多少のガイドはしているかもしれませんけど。

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    夢眠:ものの方から「書いて書いて!」みたいな感じで来るのかもしれないですね。

    篤弘:たとえば、ごくふつうのピンポン玉が、ある日、急に気になり始める、ということがよくあります。

    夢眠:私、これ、本当に食べたくって!(笑) そういうのも、運や偶然なんですね。

     

    いざ作るときは、とにかく一晩でやりたい

    篤弘:これはよく言っていることなんですが、ものを作るときも、装幀の仕事をするときも、とにかく一晩で仕上げたいんです。

    夢眠:えっ、一晩!?

    篤弘:実際、本当に一晩で作ることは多いんです。ただ、助走期間はけっこう長いんです。例えば装幀であれば、依頼をいただいてから2週間くらい助走の期間があって、その間に二人で──それこそ、ご飯を食べているときでも話し合ったりしています。電車の中吊り広告を見ながら、「ああいう色がいいよね」って話したり。で、「そろそろ締め切り」となったところで、一晩で作ります。

    夢眠:ためて、ためて、よっこいしょ、で一晩?

    篤弘:一晩で作ると、自分たちが作ったのではないかのようなものができるんですよ。例えば、1か月くらいじっくり集中して、作品に思いがこもってしまうと、それはもう「自分たちのもの」になってしまいます。でも、「クラフト・エヴィング商會」はあくまでセレクト・ショップであって、僕らがどこかで見つけてきたものを「これ、なかなかいいですよ」と皆さんにご紹介するというコンセプトです。だから、そこに「自分たち」の思いをこめてしまっては駄目なんです(笑)。

    夢眠:「工房」とはちょっと違って、「選ぶセンスが統一されている」というだけなんですね。

    篤弘:いつの間にかそこにあった、というのが理想です。そうすれば、「これ、いいでしょう」と他人事のように書けます。思いがこもってしまうと、簡潔な売り文句や解説が書けなくなってしまうんですよ。

    夢眠:「これ、ここが大変でねえ……」「取っ手をつけるのに1週間かかってねえ」みたいになると、おかしくなっちゃうんですね(笑)。

    篤弘:そうです。なるべく、サラッといきたいんです。

    夢眠:私はそのサラッとしたところを「かっこいい」って感じるんでしょうね。

    篤弘:いや、単に二人とも江戸っ子で気が短いので、さっさと片付けてしまいたいだけなんですよ(笑)。

    浩美:ほとんど私が作ってるんですけどね(笑)。


    今回は、「ない」と思っていたものを「こちらにありますよ」と紹介してくれるクラフト・エヴィング商會の“商品”の秘密が明らかになりましたね。次回は、装幀を手掛けるときのことを詳しく伺います。お楽しみに!

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