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2020年、世界中で大きな脅威となった新型コロナウイルス。多くの地域で収束の気配が見えない中、台湾はその影響を最小限に抑え込むことに成功した数少ない国の一つとなりました。
今なお、一部施設を利用する場合にはマスクの着用が義務付けられるなど、感染予防対策が徹底されており、1日の感染者数は平均1桁台。2020年12月5日(土)時点の累計感染者数は700人弱と、他国と比較しても非常に低い人数で推移しています。
この封じ込めの中心にいたのがデジタル担当相のオードリー・タン(唐鳳)さんです。
ウイルスの封じ込めに成功したのは、国民一人ひとりに適切な数のマスクが行き届いたからです。
それを可能にしたのが、2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の経験です。台湾では、パンデミックを想定した訓練など官民一体で感染症対策に取り組んできました。それによって、官民どちらも「当事者」として公共の利益を目指すという意識が醸成され、政府と国民の間の信頼関係が構築されていったのです。
そうした中、タンさんはシビックプログラマー(行政が公開するデータを用いてシステム開発を行なう市井のプログラマー)に対して、薬局のマスク在庫情報など必要なデータを公開。結果、各薬局のマスク在庫が一目でわかる地図アプリを開発することに成功しましました。
さらに、国民全員が所持する健康保険カードを用いたマスク買い占めの防止策を打ち出しました。
キャッシュレス決済の場合、扱いに不慣れな高齢者にとってはマスクへのハードルが高くなってしまう危険性があります。そうした彼らの状況を慮り、全国民が持つ健康保険カードを使ったシステムが運用されました。
社会的な弱者や少数者なども置き去りにしないことを、タンさんは「インクルージョン(包含)」と言い、先に挙げた意識とともにこれから来るとされる「デジタル民主主義」に必要な考え方だとタンさんは考えています。
12月1日(火)に発売されたオードリー・タンさん初の自著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』では、新型コロナウイルス対策の詳細や、デジタル技術発達後の未来「デジタル民主主義」の可能性、そして隣国・日本へのメッセージなどが紹介されています。
AIを筆頭とした「デジタル技術」によって、誰かの願望を実現する能力は飛躍的に高くなりました。
著書の中でタンさんは、AIを“Assistive Intelligence(アシストする知能)”と定義し、未来の方向性や設計など人間しかできない価値の創造を提案しています。
序章 信頼をデジタルでつないだ台湾のコロナ対策
第1章 AIが開く新しい社会――デジタルを活用してより良い人間社会を作る
第2章 公益の実現を目指して――私を作ってきたもの
第3章 デジタル民主主義――国と国民が双方向で議論できる環境を整える
第4章 ソーシャル・イノベーション――一人も置き去りにしない社会改革を実現する
第5章 プログラミング思考――デジタル時代に役立つ「素養」を身につける
終章 日本へのメッセージ――日本と台湾の未来のために